出版社内容情報
『古代文化』2012年12月 第64巻第3号「新刊紹介」より 評者:下倉 渉
(前略)氏が本書において設定した課題は、「秦律・漢律における家族法と制度の内容」を検討することによって、「戦国秦から前漢前期にかけての法制上の家族形態と、そこに反映される家族観の展開」を明らかにしようとすることである。(略)本書で氏が解明しようと試みられたのは、当該時代における家族・親属の実態そのものではない。秦律・漢初律の策定者たちが、その脳裏で想定していた「家族」「親属」を復元しようと目指されたのであろう。律文を解釈するにあたって、政策的な意図といった政治的なバイアスの影響は意識されて然るべきである。こうした点に十分注意を払う氏の姿勢には、見習うべきところが多い。(略)中国の「家」「親属」を理解するにあたって、それを個々人の相互的な関係の集積と見なそうとする氏の視点は、支持されるべきであろう。終章では、本編各章における検討の結果が要領よくまとめられ、その上で更に議論は商鞅変法の再検討・再評価へと進んでいく。この限られた紙幅では、本書の多岐にわたる論点と考究の成果を
全て紹介することはできない。各位自ら本書を手に取り精読されるよう、請う次第である。
『中国出土資料学会会報』2012年12月8日 第51号 「新刊紹介」より
本書の特徴は、従前「商鞅変法による単純家族(父母と未成年子で成り立つ家族)の析出を前提」にして解釈されてきた『睡虎地秦簡』を、法の運用実態を読み取れる『里耶秦簡』と、編纂された副葬品である『張家山漢簡』二年律令・秦讞書とを用いて、再検討している点である。・・・略・・・秦~漢初の法制度上で、家族がどのような単位で刑罰の対象となっていたのか様々な知見を提示し、新たな家族観を描き出している。 (村上陽子)
目次
序章 中国古代家族史研究の現状と課題
第1章 『里耶秦簡』にみる秦の戸口調査―同居・室人再考
第2章 漢初における戸口調査と奴隷
第3章 『睡虎地秦簡』からみた戦国秦の収帑制
第4章 「収帑諸相坐律令」撤廃考―文帝の即位事情と賜爵を中心にして
第5章 『睡虎地秦簡』「公室告」再論―秦律における親子の「関係」と公的秩序
附章 『里耶秦簡』にみる隠官
終章 秦律・漢律にみる家族形態と家族観
著者等紹介
鈴木直美[スズキナオミ]
1968年、千葉県に生まれる。2009年3月、明治大学大学院文学研究科博士後期課程学位取得。現在、明治大学文学部非常勤講師、東京外国語大学アジア・アフリカ言語文化研究所非常勤研究員(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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