出版社内容情報
文学作品としてはよく議論されたドストエフスキーの『罪と罰』を、文明論の立場であらためて論じようとする野心作。ロシアの時代状況にとどまらず、ヨーロッパないし地球文明を意識し新たに書きおこした新版
内容説明
混迷の19世紀ロシア。「本当の自分」を模索した若者は、自らをナポレオンと同じ「非凡人」と信じて、「正義」の「犯罪」を犯した。同時代の名作や推理小説を手がかりに、隠された思想的背景を探り、比較文明論的視点から、アイデンティティの危機と「他者」の問題に迫る。
目次
第1章 アイデンティティの危機―第一の動機
第2章 家族の絆と束縛―第二の動機
第3章 「正義」の犯罪―第三の動機
第4章 自己の鏡としての他者―「立身出世主義」の影
第5章 非凡人の理論―第四の動機
第6章 他者の喪失―近代的な“知”の批判
第7章 隠された「自己」―「変身」への願望
第8章 他者の発見―新しい知の模索
第9章 「鬼」としての他者―人類滅亡の悪夢
第10章 他者としての自然―生命の輝き