出版社内容情報
女として「魅力ある孤立」を生きる
二人の女性が彩なすそれぞれの過去と現在、そして明日への意思。朝な夕な日々の枷のように歩む二つの坂道の果てにあるものは何か?
孤独ではない「孤立」を生きる女性の愛と自立を鮮明に描く。
二つの坂道
内容説明
上司の退官をきっかけに、大学付属研究所の教授秘書から既存の枠組みを拒否し、異端の事務職としての位置を独り黙々と築き守りつづける志津。10年を経たある日、後輩の雨樹子が相談を持ちかけてくる。根なし草の意識から抜け出せないまま自分の居場所を探しつづける雨樹子は、まもなく所長選を機に一挙に埋み火が燃えあがったような上司の対立劇に巻き込まれる。雨樹子に10年前の苦闘する自分の姿を重ね、思い気遣う志津に、雨樹子はある決意を打ち明ける…。森に囲まれた湖底の湧水のように静謐な情熱と、淀みを抜けて陽光にきらめく渓流のように清冽な熱情と、二人の女性の交錯する思いが紡ぎ出した糸で織り出される、生きること愛することの綾模様。二人の女性が彩なすそれぞれの過去と現在、そして明日への意志。朝な夕な日々の枷のように歩む二つの坂道の果てに存るものは何か?―孤独ではない「孤立」を生きる女性の愛と自立を鮮麗に描く。