内容説明
満州事変の立役者である石原莞爾は関東軍の行動をアジアの独立を求める昭和維新ととらえ、それゆえに中国と戦うことの愚を主張しつづけた。だがその気宇壮大・機略縦横は軍隊内で孤立し、天皇にも理解されることがなかった。本書は石原の生い立ちから敗戦時までの足跡を淡々と、かつ克明に追っている。
目次
プロローグ 「毅然たる孤独」を噛みしめる
第1章 父啓介は反面教師だった
第2章 俺はそれだから軍人に
第3章 世界最終戦論の形成
第4章 昭和維新としての満州事変
第5章 日中は戦ってはなりません
第6章 持久戦論と昭和維新方略
第7章 君側に争臣なくば、国亡ぶ
エピローグ 満州事変はアジアの独立を求める昭和維新だった
著者等紹介
野村乙二朗[ノムラオトジロウ]
1930年山口県山口市に生まれる。国学院大学卒業。都立高校教諭を経て国学院大学講師、東京農業大学講師を歴任(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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筑紫の國造
9
おそらく、日本で最も伝記の多い人物の一人、石原莞爾の評伝。文体は「ですます」調で読みやすいが詳細な脚注が付されており、伝記としての信頼度は高い。個人的に一番興味深かったのは石原と今村均の対決。満州事変では拡大しようとする石原対抑えつけようとする今村の構図が、やがて立場を変えて再び合間見える場面は「歴史の皮肉」としてとても面白かった。両者とも評判の良い軍人だけに、その対立は悲劇的でもある。当然石原寄りの評伝ではあるが、過剰な神格化も拒絶しており、なかなか好感が持てる。2017/02/27