内容説明
幕末から明治中期までの近代美術の流れは暗黒期で謎に満ち、事件に富んでいる。洋画の開祖川上冬崖はなぜ自殺したか、洋画家がなぜ一斉に輩出したか、美術官僚群がなぜ発生し、どう動いたか、東京美術学校創設がなぜ事件なのか。フェノロサ、天心らはどんな役割を演じたか―。この美術事件史は、多くの研究成果や、当時の雑誌、新聞等の資料に基づきながら書かれた物語史だが、そういう数々の謎に迫ろうとした試みでもある。
目次
第1話 川上冬崖の死
第2話 迫真ショック
第3話 十一字会
第4話 美術真説
第5話 東京美術学校創設(天心岡倉覚三;美術行政の主役の交替;竜池会の日本画奨励事業;鑑画会の創始;文部省異変;具体化していく文部省美術行政;第2期の鑑画会;日本画振興の対立の構造;宮内省、文部省連携の古社寺調査;鑑画会批判とその反論;天心、フェノロサの欧米出張と帰国演説;東京美術学校基本方針をめぐる波乱;東京美術学校開校と後代への影響)