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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
buchipanda3
89
「ぜったい、ぜったい、ぜったい、誰にも言っちゃだめよ」。子供の頃、大切にしている自分だけの世界があったなあと。大人からすれば何でもない物に物語が宿ったりする。ビリーとの馬への愛情の思い出から新たに想像を膨らませるノニー。それを手助けするセドリックとの関係がいい感じ。ロンシャン、アスコット、子供の知識の広がりに笑みがこぼれる。短い話なのに子供の世界と大人の世界、古き時代と新しい時代という二面のコントラストが印象的に描写され、物語としての巧みさと面白さを味わえた。酒井駒子さんの挿絵が物語の雰囲気を醸成する。2025/10/12
キムチ
63
ジャケ借り☆凄い逸品。良い時間にかいま漂った。筆者の名前、何処かで見た記憶~あ!「バベットの晩餐会」これは彼女の生誕140年を記念しての秀作・・彼女がたどりついた類まれな煌めきが結晶している。舞台は1930年頃の英国∼病の床にあって久しい美少女ノニー・・彼女に魔法の杖を使って夢の世界へ飛翔の時をくれた少年ビリー。そして扉を開けたのはノニーの母の弟 画家のセドリック。挿絵にあるパステル調の画 少女の柔らかな栗色の髪、つぶらな瞳・・見つめている戴冠式の行列の馬の装具。馬の装具から古代ローマの世界・・児童心理2025/09/29
はる
49
酒井駒子さんの挿絵に惹かれて。大屋敷に暮らす6歳の少女ノニーは、謎の病でベッドに臥せたまま。美しい母親は弟の画家セドリックにノニーの世話を頼むが…。短い物語のなか、様々な人生のドラマが交差する。ノニーの真摯で荘厳な思いが美しい。その一方、ノニーをただの母親が恋しい幼い子供としか見ていない医師や母親が醜く滑稽だ。「バペットの晩餐会」のイサク・ディネセンの好短編。2025/10/17
ちえ
41
40ページ程の掌編、すごく良かった。築200年の屋敷の一室で病床に臥している6歳の女の子。その子のもとを訪れる画家のおじ。そこまでに幾つものお話が内包されている。子どもの世界、遊び、隠されたもの。ディネセンの抑えた文章、描かれない結末が読み手を引き込む。酒井駒子さんの絵が密やかさを更に際立たせる。これは手元に置きたい。2025/09/14
marumo
15
あとがきにもあるけれど、古びた厩舎でダイヤモンドやサファイア、ルビー、エメラルドの豪奢なアクセサリーを馬や兵隊さんに見立てて繰り広げられる「女王さまの戴冠式のパレード」ごっこの圧巻の麗しさにやられました。謎めく少女に招待されて、大人なのにこのパレードに参列できたセドリックおじさんが羨ましいわ。物語の中ですでに亡くなっている賢くて美しい「馬の世界の正当な相続人」であったビリーを悼む幼いノニーの喪失感の深さよ。ハン・ガン「涙の箱」と合わせて、どなたかにプレゼントしたいわ。2025/11/02




