はじめて出逢う世界のおはなし
古森の秘密

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  • サイズ B6判/ページ数 229p/高さ 18cm
  • 商品コード 9784885880902
  • NDC分類 973
  • Cコード C0097

出版社内容情報

何十年も英米のファンタジーを読み続け、訳し続けてきて、ちょっとやそっとのファンタジーには驚かないぞという自負があった……のに、『古森の秘密』には、ころっとやられてしまった。久しぶりに、心に深く響くファンタジーに出会った。
(金原瑞人 推薦文より)

【あらすじ】
精霊が息づき、生命があふれる神秘の〈古森〉。森の新しい所有者になり、木々の伐採を企てる退役軍人プローコロ大佐は、人間の姿を借りて森を守ってきた精霊ベルナルディの妨害を排除すべく、洞窟に閉じ込められていた暴風マッテーオを解き放つ。やがてプローコロは、遺産を独り占めするために甥のべンヴェヌート少年を亡き者にしようとするが……。聖なる森を舞台に、生と魂の変容のドラマを詩情とユーモアを湛えた文体でシンボリックに描いたブッツァーティの傑作ファンタジー(1935年作品)。

ディーノ・ブッツァーティ[ディーノ ブッツァーティ]
1906年、北イタリアの小都市ベッルーノに生まれる。ミラノ大学卒業後、大手新聞社「コッリエーレ・デッラ・セーラ」に勤め、記者・編集者として活躍するかたわら小説や戯曲を書き、生の不条理な状況や現実世界の背後に潜む神秘や謎を幻想的・寓意的な手法で表現した。現代イタリア文学を代表する作家の一人であると同時に、画才にも恵まれ、絵画作品も数多く残している。長編『タタール人の砂漠』、『ある愛』、短編集『七人の使者』、『六十物語』などの小説作品のほか、絵とテクストから成る作品として、『シチリアを征服したクマ王国の物語』、『劇画詩』、『モレル谷の奇蹟』がある。1972年、ミラノで亡くなる。

長野徹[ナガノ トオル]
1962年、山口県生まれ。東京大学文学部卒業。同大学院修了。イタリア政府給費留学生としてパドヴァ大学に留学。イタリア文学研究者・翻訳家。児童文学、幻想文学、民話などに関心を寄せる。訳書に、ストラパローラ『愉しき夜』、ブッツァーティ『絵物語』、ピウミーニ『逃げてゆく水平線』、ピッツォルノ『ポリッセーナの冒険』、ソリナス・ドンギ『ジュリエッタ荘の幽霊』など。

内容説明

精霊が息づき、生命があふれる神秘の“古森”。森の新しい所有者になり、木々の伐採を企てる退役軍人プローコロ大佐は、人間の姿を借りて森を守ってきた精霊ベルナルディの妨害を排除すべく、洞窟に閉じ込められていた暴風マッテーオを解き放つ。やがてプローコロは、遺産を独り占めするために甥のベンヴェヌート少年を亡き者にしようとするが…。聖なる森を舞台に、生と魂の変容のドラマを詩情とユーモアを湛えた文体でシンボリックに描いたブッツァーティの傑作ファンタジー(1935年作品)。

著者等紹介

ブッツァーティ,ディーノ[ブッツァーティ,ディーノ] [Buzzati,Dino]
1906年、北イタリアの小都市ベッルーノに生まれる。ミラノ大学卒業後、大手新聞社「コッリエーレ・デッラ・セーラ」に勤め、記者・編集者として活躍するかたわら小説や戯曲を書き、生の不条理な状況や現実世界の背後に潜む神秘や謎を幻想的・寓意的な手法で表現した。現代イタリア文学を代表する作家の一人であると同時に、画才にも恵まれ、絵画作品も数多く残している。1972年、ミラノで亡くなる

長野徹[ナガノトオル]
1962年、山口県生まれ。東京大学文学部卒業。同大学院修了。イタリア政府給費留学生としてパドヴァ大学に留学。イタリア文学研究者・翻訳家。児童文学、幻想文学、民話などに関心を寄せる(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

mocha

92
北イタリアの森を相続したプローコロ大佐。なかなかの冷血漢で、相続分を横取りしようと甥の殺害を目論む。木の精霊や鳥達の言葉にも耳を貸さない。たくさんの寓意が込められているが、教訓めいたいやらしさがなくてとても面白かった。動物達は人間のひどい仕打ちに嘆きはしても報復はしない。都合よく事が運ぶということもなくて、そこが普通のおとぎ話と一線を画しているところだと思う。頑迷な大佐が嫌いになれない。2018/06/26

(C17H26O4)

81
風や鳥やネズミ、精霊たち、森の小屋までもが生き生きとしている。まるで人間のように。純粋で優しくて天邪鬼で嘘つきで意地悪な人間みたいに生き生きとしている。古森は全てを知っている。人間の子供が一晩のうちに大人になってしまうことを。大人になってしまえばもう子供には戻れないことを。人間の大人が抱える矛盾の残念さと難しさを。かつて甥を亡き者にしようとし、自分の影を失い再び取り戻した大佐は、雪に埋もれながら死ぬ間際に風たちの美しい歌を聞いただろうか。古森はただ傍観し且つ、全てを見守っているようでもある。2020/11/04

らぱん

57
ブッツァーティは読むには難解ではないけれど不思議な読後感に考え込んでしまう。観念的だが同時にとても現実的でそれが幻想の中にある。 森は生きているのだが、そこは燦燦と明るいわけではなく、どこか陰鬱で、蠢くさまざまなものの気配がある。個体は発生しやがて消滅するが命は循環するという生命の循環、あるいは自然の摂理が描かれており、人間の欲得や正邪も全て飲み込まれていくような壮大な生命観にくらくらする。 あぁそうか。これがブッツァーティのマジックリアリズムということか。「タタール人の砂漠」の読みが変わった。 2020/02/12

マリリン

42
表紙の絵は岩波少年文庫の方が好きだが、別版再読のためか、いや訳者との相性か。こちらの方が心に沁みる。森の妖精ベルナルディが護る古森は容赦ない自然の棲み家。カササギが人の来訪を知らせる家、子供たちが訪れると生き生きとする森。気難しいブローコロ大佐と甥のベンヴェヌート、 風のマッティーオ、それぞれの心の推移が絶妙に描かれている。生きているものは老いて朽ち、やがては土に帰る。物語に惹かれたのは、森が生と死を繰り返す人間や生き物、自然界の全てを包括しつつ歴史を刻んでゆく様の神秘を描いたかの作品に思えたから。2020/12/31

miyu

37
岩波から出ているものとほぼ同時期に続けて読んだ。この物語はすっかり成長しきってあの頃の声や匂いや音を感じとれなくなったどころか忘れ去ってしまった年代の者が読んでこそ身に沁みるというもの。幼気な少年ベンヴェヌート(イタリア語で"ようこそ")くんよりもずっと、偏屈でどうかしてるプローコロ大佐の方が魅力的なんだから。様々な象徴の存在が目を引くが一番は大佐と甥の関係が一人の人間の「過去と未来」に思えることか。つまり大佐も昔は汚れなき甥の立場であり、甥もやがては大佐のようになる。シンプルで奥が深い。とてもよかった。2017/06/04

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