内容説明
地球温暖化をめぐり国益をかけて国際舞台で闘ってきた元交渉官の著者がCO2削減をすべてに優先する思想の罪を問う警世の書。
目次
第1章 地球温暖化問題とは何か
第2章 パリ協定への長い道のり
第3章 「脱炭素教の巫女」グレタ・トウーンベリと環境原理主義
第4章 「地球温暖化防止のリーダー」欧州の実像
第5章 コロナウイルスと地球温暖化
第6章 環境原理主義に傾く米国バイデン政権
第7章 「カーボンニュートラル祭り」とその不都合な真実
第8章 漁夫の利を得る中国
第9章 日本を滅ぼす3つの原理主義
第10章 脱炭素化にどのように取り組むべきか
著者等紹介
有馬純[アリマジュン]
東京大学公共政策大学院特任教授。1982年、東京大学経済学部卒業、同年、通商産業省(現経済産業省)入省。OECD(経済協力開発機構)日本政府代表部参事官、IEA(国際エネルギー機関)国別審査課長、資源エネルギー庁国際課長、同参事官などを経て、2008~2011年、大臣官房審議官地球環境問題担当。2011~2015年、JETRO(日本貿易振興機構)ロンドン事務所長兼地球環境問題特別調査員。2015年8月より東京大学公共政策大学院教授、2021年4月より同大大学院特任教授、現職(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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南北
45
著者は経済産業省の元官僚でパリ協定などの交渉を担当してきた人物である。本書では環境原理主義は反原発主義であり、再生可能エネルギー原理主義であると主張しているが、その通りだと思った。日本の石炭火力はCO2をかなり削減することができるし、小型原発でも安全性の高いものを開発しているので、CO2削減が目的ならそうしたプラントを売り込めばいいはずだが、「原理主義」の壁はなかなか厚いようだ。日本にとって「原理主義」の行き着く先は経済衰退しかない。「目標」に振り回されず、適度に受け流すぐらいがちょうどいいようだ。2022/06/03
速読おやじ
24
これは面白かった。絶対的な善とされているクリーンエネルギー、EVが実は・・・という話。決して陰謀説などではなく、丁寧にファクトを積み重ねて説明。地球温暖化を防ぐために化石燃料から再生エネへという話は至極まともに聞こえる。でもパネル作ったり、EV作るのにどれだけCO2出しとんねん?と言う話や、安定しない太陽光なんかに頼ってエネルギー大丈夫なん?とか、結局はそれで利益を貪る輩はいるし、国益という意味で中国に持っていかれたりしている。トゥンベリさんは良いことをやっているつもりだが、しわ寄せがきているのだ。2022/10/27
tacacuro
4
地球温暖化防止をすべてに最優先する環境原理主義は結果的に世界を不幸にするのだという。各国が送電線網で結ばれて変動性の再生エネルギーを導入しやすい欧州のしたたかな戦略に乗りすぎると、最大のCO2排出国であり、安い石炭火力で太陽光パネルと風力発電を生産・輸出し、戦略鉱物の集中する中国が漁夫の利を得るだけだと。脱炭素化目標を「努力目標」と割り切り、必要なコストを現実的に見通し、原発をうまく活用するとともに、脱炭素化に貢献する革新的技術開発によりリソースを回す必要があるとのこと。2022/09/12
アムリオ
3
世界中で気が触れたかのように「温暖化対策」の大合唱。反対の意見が知りたくて読んでみた。日本は空気に流されているだけの気もするが…。2021/11/22
れんと
2
NHKの日曜討論で何度か著者を拝見し、今回初めて著作を読んだが、非常に勉強になった。EU、米国、中国が環境問題にどのように対応し、その背景、国家的戦略などが大変わかりやすく書かれており、腹落ちする内容だった。2022/10/02