内容説明
皆、おかしいくらい一生懸命で切ないくらいがむしゃらで何よりも愛に満ち溢れていた。第2回エネルギーフォーラム小説賞受賞。
著者等紹介
中島晶子[ナカジマショウコ]
1950年鹿児島県生まれ。都立商業高校を卒業後、広告会社、スーパーの販売促進担当を経て、2013年退職。父親が炭坑従事者で、小学生時代を筑豊炭田・貝島炭鉱(福岡県宮若市)の炭住で過ごす。現在は地域のボランティアをしながら文筆活動中。『筑豊ララバイ』で第2回「エネルギー・フォーラム小説賞」大賞を受賞。そのほかの受賞歴は、第16回「小諸・島崎藤村文学賞」優秀賞、第22回「日本動物童話大賞」最優秀賞、第3回「はやしたかし童話賞」佳作、第25回「ニッサン童話グランプリ」佳作、第55回「サンケイ児童出版文学賞」フジテレビ賞、第10回「ハート出版わんマン大賞」最優秀賞など多数(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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mike
85
炭鉱と聞くと貧困に苦しむ人の姿を想像する。しかし、そればかりでない。かつて日本のエネルギー産業を支えこの国の発展に大きく貢献した輝く歴史がある。死と隣り合わせ、炭塵で真っ黒になりながら暗く深い地の底へもぐり石炭を掘り続けた炭鉱夫。そして彼等を支えた家族。世界遺産となった軍艦島は力尽きた黒い塊のような廃墟である。でも今放送中のドラマを見ると当時そこには多くの人々がいて町を作り栄えていた事が分かる。高度成長と反比例して斜陽、閉山へ追い込まれた炭鉱地は悲しいが、本書には炭住に溢れるエネルギーと人情が感じられる。2024/11/14
むぎじる
40
主要な熱資源だった石炭が、比較的簡単に採掘ができ使い勝手もいい石油にとって代わる寸前の時代を描いた作品。舞台になっている貝山炭鉱は、身元確認をして入社試験に合格した人々を雇い入れ、学校をつくり、「炭住」住民の福利厚生に力を入れている恵まれた炭鉱であった。毎日、命を失うことと隣り合わせの仕事に向かう男たちの気持ちは、並大抵なものではない。恐怖を払しょくするために酒や暴力に逃げる人もいたかもしれない。家族という存在は、そこに落ちないための心の支えになったことだろう。人のつながりの濃さと強さを感じる物語。2016/04/28
あいくん
13
☆☆☆この本は福岡県学校図書館協議会の推薦図書です。中島晶子さんの講演を聴くことができました。中島さんは1950年にいまの霧島市で生まれました。福岡県宮若市の炭坑で子どものころを過ごしました。その時の体験がこの本になっています。石炭を掘っていた炭坑では常に事故の危険があります。炭鉱夫はいつ命を落とすかわからないです。 炭鉱夫の妻はいつ未亡人になるか、わからないです。炭坑に生きる人たちは寄り添って生きていたそうです。炭住では大勢で暮らしていました。みんなが一つの家族のようだったと中島さんは回顧しています。2019/06/16
Kaz
5
筑豊と聞いても九州以外の人はイメージが湧きにくいかも知れませんね。福岡県の内陸部にあたりますが、かつて炭鉱で栄えた地域です。社会的には必ずしも恵まれたと言えない炭鉱夫とその家族が、明るく前向きに生きて行く様子に心打たれました。 第2回「エネルギーフォーラム小説賞」の受賞作。2016/06/26
Ramgiga
2
小学校時代を炭坑住宅で過ごした作者。昭和30年代黒いダイヤと言われた石炭がだんだんと石油に切り替わる斜陽の時代の炭坑生活者を子供の目からみたお話。毎日真っ暗な炭坑に潜る命がけの男たちとその家族のせつなくも人情味あふれる共同体。今に残るボタ山だけがその歴史を伝える。そのリアルを生き生きと蘇らせる。2021/05/03