内容説明
デビューから半年後、新聞連載された「暖炉」のほか、「中つ子のヌマ」など未刊6篇をも収録した、野溝七生子の全短篇集。
著者等紹介
野溝七生子[ノミゾナオコ]
明治30年、軍人だった父の任地先、兵庫県に生まれる。大正13年、長篇小説「山梔」が「福岡日日新聞」の一席に当選し、文壇にデビューする。昭和26年以降は、東洋大学において教鞭をとり、「森鴎外とゲーテ」をはじめとする、鴎外に関する論考をも多数発表した。昭和62年没
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感想・レビュー
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mii22.
42
明治、大正、昭和の時代を生きた著者の生い立ちが色濃く出た短篇集だが、詩的表現や流麗な文章で描かれているため現実から遠く離れた世界に連れていかれる。美しい洋館や儚げな美少女の登場、薄幸な物語に残酷さや突き刺すような痛みを伴う物語。甘美ななかにも激しさや憎悪や毒も含んでいる。お気に入りは、常に死の匂いと正気と狂気の不安定なバランスで成り立っている物語「南天屋敷」「紫衣の挽歌」「月影」「暖炉」。また著者が戦争への思いを激しく感情的に訴えかける「など呼びさます春の風」が印象的。2016/05/06
松風
28
書店で特集されてた皆川博子の愛読書リストから。瞬間瞬間が美しい。時折混じる啖呵が美しい。血と家の少女小説。2017/03/22
em
12
「まあまあ、小鳥が雪を置き忘れて行つちやつた。いつ、とりに来るんでせう。」ある匂いがする。内なる少女を標本箱に留め置いて、永遠にそれを眺めながら老女となる人たち。彼女たちは惜しげもなく見せてくれる。どう、綺麗な結晶になったでしょうと。私は泣きたいような、目をそらしたいような気持ちでそれを覗き込む。2017/05/08
月音
5
表題作他、単行本未収録作も含む29篇を収める。自らと家族をモデルに、繰り返される同じモチーフ。家父長制のもとに君臨する父、兄嫁との確執に暗澹とした気持ちになり、きょうだいへの愛情、幼い無垢な心の姪への慈しみ、友へのシンパシー、清純な恋人たちに慰められた。どこまで創作なのか知らないが、兄嫁のえげつなさは迫真の描写。それを執拗に淡々と描いているのは、「恨み骨髄に徹する」なのか、文学に昇華させようとする作家の気迫なのか。どちらにしろコワイ。書くことは作者の闘いなのだろう。⇒続2025/04/26
ミミミ
3
好き。麗しい。 南天屋敷とか文庫にして欲しい。2018/07/01
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- 和書
- 蝶日 - 句集