内容説明
短篇小説の黄金時代。サリンジャー、ナボコフ、オコナー、ボールドウィンなど、重要作家が次々と登場する、1950年代前後の名作10篇を収録。“名作中の名作”でアメリカ文学史をたどる、シリーズ第3弾。
著者等紹介
柴田元幸[シバタモトユキ]
1954年生まれ。米文学者、東京大学名誉教授、翻訳家。ポール・オースター、スティーヴン・ミルハウザー、レベッカ・ブラウン、ブライアン・エヴンソンなどアメリカ現代作家を中心に翻訳多数。2017年、翻訳の業績により早稲田大学坪内逍遥大賞を受賞。現在、文芸誌『MONKEY』の編集長を務めている(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
キムチ
62
1950年前後、アメリカの作家の活躍ぶりが噴出していく時期・・を感じさせるに余りある短編揃い。と同時に、個人的に、苦手な感覚を掘り起こす様な隠喩暗喩がどんどん駆使されて行くのも感じた。一番、分かり易く面白いのが柴田さんの巻末解説。柴田さんの述べる内容を明確に掴めない自分が恥ずかしい。読んでいて楽しい、感激、耽溺という類にはとても思えず、マラマッド作品をラストに配置したことが納得できるような【当時の人々の不安・願望・焦燥・絶望そして怒り・・しまいには放心を伝えたい筆者の感情が立ち込めているものばかり。2025/05/21
くさてる
27
そりゃまあ傑作ばかりなのはあたりまえのアンソロジーで、初めて読む人がうらやましくなるほど。純粋に好みでいくなら、ジャクスンの「くじ」とオコナー「善人はなかなかいない」の二つが抜きんでてるのですが、フィニイ「愛の手紙」のまさに純粋なロマンスも素晴らしいし、サリンジャー「バナナフィッシュ日和」のなんと表現していいか分からないとしかいいようがない凄みも捨てがたいし、オルセン「あたしはここに立ってアイロンをかけていて」もただもうたまらない。他の作品もそれぞれに良くて、まさにお薦めのアンソロジーです。2025/04/29
M H
23
準古典篇に続いて有名作家が目白押し。「くじ」「バナナフィッシュ日和」のような超有名短篇もあって目次が眼福(笑)もちろん読み心地も素晴らしい。特に好きなのは秀逸なシーン多数の「サニーのブルース」、億面のないラブストーリー「愛の手紙」、あらすじを知っていても、初読でなくても打ちのめされるのが「善人はなかなかいない」。叢書は続きが出そうでセレクト含めてとても楽しみ。2025/03/12
アヴォカド
21
マスターピースというだけあって、半分以上は既訳で読んでいるけれど、柴田訳で改めて読めるとはありがたい。新鮮な気持ちで読めた。中でも「サニーのブルース」「愛の手紙」は何度も読んできたけれど、やはり良い。サニーのブルースは解説で言及されている箇所ももちろんいいが、演奏シーンも秀逸。愛の手紙のプロットは後の映画や小説などで何度かモチーフになっているが、いやこれやっぱりうまいな。短篇でこの展開、このラストのキレ、この哀切。ラストは福島正実訳や大森望訳ともまた違い、スッキリしているが故にかえって切なさを呼ぶようだ。2025/01/19
tokko
20
今回も「ハズレ」なしのチョイスで楽しめました。「MONKEY」で読んだものもありましたが、短編集として読むとまた格別です。「くじ」や「バナナフィッシュ日和」「善人はなかなかいない」など崖から突き落とされるようなものもあれば、「プリザビング・マシン」のような「バカバカしい」けど色々考えさせられるものもあります。ちょっとみてみたい気もしますけどね、「モーツァルト鳥」や「ベートーヴェン甲虫」。2025/01/28