内容説明
忘れものがたり。沖縄戦で亡くなったひめゆりの生徒二百十一名に捧ぐ。
著者等紹介
池澤夏樹[イケザワナツキ]
1945年北海道帯広市生まれ。詩人、小説家、翻訳家。1988年『スティル・ライフ』で芥川賞、1992年『母なる自然のおっぱい』で読売文学賞、2021年フランス芸術文化勲章「オフィシエ」など受賞
黒田征太郎[クロダセイタロウ]
1939年大阪府大阪市生まれ。画家、イラストレーター。1945年の神戸市空襲でB‐29の爆弾で自宅が被災する。1961年に早川良雄デザイン事務所勤務を経て、1966年に渡米。帰国後の1969年に長友啓典とケイツー(K2)を設立。野坂昭如の『戦争童話集』を出版。「忘れてはイケナイ物語り」プロジェクトや核兵器廃絶を訴える「ピカドンプロジェクト」など平和に関する活動も積極的に行なっている(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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starbro
167
池澤夏樹が、文章を書いているので読みました。タイトルから想像できない悲惨な沖縄戦を描いた反戦絵本、こんな悲劇は、絶対繰り返してはいけません。最期に「ひめゆり学徒隊」の紙碑が刻まれています。 Love&☮ https://www.switch-pub.co.jp/bo0118_event/2023/06/29
buchipanda3
117
著者二人による絵本の中の「せんそう」の二作目。戦争の疵跡を語る場所は沖縄のアブチラガマという洞窟。そこで多くの人が難死した。終戦から三年後にヤギと少年が迷い込み、ある思いを託される。洞窟の中は暗闇。黒田さんの絵は不安に包まれるほど黒い。でもそこに願いという明色が短く灯される。そして聞いてくれる?という言葉と共にホタルの余韻が残った。この本を手にして初めてぱらぱらと捲った時、ハッとなった。亡くなったひめゆりの生徒たちの名前が大きく掲載され花の絵が添えられていた。花は一人一人違う。その思いを静かに受け止めた。2023/07/02
とよぽん
55
新着図書の棚から。表紙カバーの暗闇、堅牢な造本、作者と画家の名前に吸い寄せられて。沖縄戦・・・ヤマトの兵隊、アメリカ軍、沖縄の人々は全て誰からも守られずニッポンのために犠牲になった。戦後も・・・。今、また台湾危機の名の下に、あるいは北朝鮮の脅威の名の下に、沖縄で戦争の準備が進められている。池澤夏樹さんの思いが日本中の人に届くことを、私は願う。2023/08/28
ちえ
43
戦後3年、ヤギのビンキに導かれてアブチラガマに入った少年。そこで亡くなった人達の願いを託され束の間、人の姿になる亡くなった女生徒。この本はいくつもの沖縄戦であったことを基に作者のフィクションであるとともに、沖縄戦で亡くなった沖縄師範学校女子部と沖縄県立第一高等女学校の生徒たち211名の為の鎮魂の紙碑。後半は名前、亡くなられた場所が書かれ、一人一人に画家の黒田清太郎氏が花を捧げている。また「用語解説」「さらに書いておくべくこと」「戦争で死んだ少女たち」の文章から作者池澤氏の強い思いが伝わる。2023/08/15
たまきら
42
新刊コーナーより。黒田さんは第五福竜丸についての作品もつくっているけれど、この沖縄のプロジェクトも彼の反戦のメッセージがダイレクトに伝わってきます。黒を基調にした前半と、花が捧げられた後半のお名前の痛切な対比…。忘れてほしい人がいるのはわかっている。けれども、私は忘れない。人を理不尽に踏みにじる権利など誰にもないのに。私は被害者になりたくない。加害者にもなりたくない。今日娘とハウルを見ながら強く思いました。2023/11/04