内容説明
アメリカ文学史がはじまった時点から、19‐20世紀の世紀転換点までに書かれた短篇のなかから、編訳者が長年愛読し、かつほとんどの場合は世に名作の誉れ高い作品ばかりを集めた、ザ・ベスト・オブ・ザ・ベストの選集。
著者等紹介
柴田元幸[シバタモトユキ]
1954年、東京に生まれる。東京大学教授、翻訳家。2013年秋、文芸誌「Monkey」をスタートさせる(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ケイ
110
19~20世紀始めの米文学の担い手8人の短編。柴田氏は文学史の授業の如く作家の生誕順に並べている。唸るような味わいのある短編が並び、その選択の翠眼ぶりには舌を巻くしかない。最後の柴田氏の解説が何よりのこの本のアドバンテージだろう。有名な話ばかりだが、一作を選ぶとしたら「賢者の贈り物」しかない。あの有名な二人のやり取りよりも、最後の1段落がなにより素晴らしいと私は思った。柴田氏は、O・ヘンリーの扱いに困っているようだ。この8名で最も読者が多く、最も文学的評価が低いとされていると紹介している。2015/10/07
buchipanda3
87
訳者の柴田元幸さんが選出したアメリカ文学の短編ベスト集の古典篇。古い作品だが訳が洗練されていて読み易い。どの篇もこれがアメリカ文学の原点かと思いながら面白く読めた。中でも気に入ったのはメルヴィルの「書写人バートルビー」。序盤だけと思って読み始めたら止まらなくなり、その不思議な展開と「そうしない方が好ましいのです」という決め台詞の虜になった。ホーソーンの「ウェイクフィールド」も不条理な味わい。都市社会の人の立場の脆さ。ロンドンの「火を熾す」は自然の中の人の脆さ。都市と自然と人、まさにアメリカらしさを感じた。2019/11/11
ずっきん
77
柴田さん選出のマスターピースとはいえ、好き嫌いがはっきり分かれた。「バートルビー」が圧倒的に面白かった。「モルグ街」は柴田さん訳でもダメだった。文章や比喩が好みじゃないんだろうなあ。先に英愛マスターピースを読んじゃったからか、この辺りの米文学はどうもこじらせ系に感じてしまう。読解力の問題か。ここを過ぎた辺りから好きになる気配がする。「火を熾す」は傑作だという解説には全く同感。圧倒的な自然の中で、抗い生きようとする男の強さと弱さ、絶望と希望が壮絶に流れ込んできて総毛立つ。評価が低いというO・ヘンリーも好き。2019/11/30
ペグ
76
何度目かの読書。名作といわれるものは、やはり何度読んでも新しい発見や驚きが隠されていて感動する。でも実はこの隠されているというのも実は自分が気がつかなかっただけなのであって色々な角度から読み取れて改めてその凄さを実感。収録されている作品はその作者の個性が如実に表れていて、柴田先生の翻訳が!う〜ん やっぱり素晴らしい。後は好みの問題。と言うわけで「ウェイクフィールド」と「バートルビー」がやはり好き。2019/10/27
キムチ
69
愛読する柴田氏の目利きによる合衆国短編文学セレクト。一作目の古典篇。19世紀以降今に至る時間、どれだけの読書家が魅了されてきたか・・山積する作家群に目を利かせた8人の作家と作。当然、唸る秀作、誰しもが耳にしたのではあるまいかという名前揃い。ジェームズの「本物」だけ初読。ロンドンが好きなので「火を熾す」は再読だが、動植物、の細かい描写、その中に居る人間が「死と対峙し、敗者となる」凄まじさがジワッと脳内で映像化される。英国の強い影響のもとにあった米文学が地方の言語、習俗を取り入れ、インテリ層のみならず多々の→2025/01/28