内容説明
あの星を繋ぐために―ボクサー・カシアス内藤、写真家・内藤利朗、そして作家・沢木耕太郎という3人の男が、それぞれのいつかを追い求めた記録『一瞬の夏』から四半世紀、彼らの戦いはその後も続いていた。新たな物語のための序章。
目次
祈り
ふたたびの夢
光のなかへ
リア
戦いのあとで
一日
著者等紹介
内藤利朗[ナイトウトシロウ]
1950年東京生まれ。日本大学芸術学部写真学科を卒業後、秋山庄太郎氏に師事、1977年にフリーとなる
沢木耕太郎[サワキコウタロウ]
1947年東京生まれ。横浜国立大学経済学部卒業。スポーツと旅を中心にしたノンフィクションの作品を数多く上梓し、主な作品に『一瞬の夏』『深夜特急』『無名』、写真集『天涯』全三巻など
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
Y2K☮
28
ソウルの試合で沢木さんがセコンドにいるのが印象深い。この章の最後の一枚は内藤があの一言を呟いた時か。勝っても負けてもリング上の彼はいつも哀しげな目をしている。獣の本能に染まり切っていない様に映る。利朗さんの写真だから捉えられた一瞬の真実。戦う選手よりも育てるトレーナーとしての才能の方が上なのかも。エディさんからの薫陶も活きるし。そう考えると全て繋がっている。「いつか、いつかと思っていると、きっといつかがやって来る」というのは内藤が沢木さんの本を誤読したのだけど、実は正しい。信じる力は偉大。いつかとは今だ。2018/08/25
マリリン
22
とても印象的な写真が4枚あった。一枚目は、笑っているカシアス。こんなにも優しい眼差しから激しい戦いをする姿は想像できないが、肉体は鍛え上げられた美しさがあった。二枚目は、最後の戦いに敗れリンクで仰向けになった姿、虚ろな視線からは全てを出し切って終わったという彼自身の葛藤からの開放感。三枚目は自然の中で家族とくつろぐ姿。その後も波乱の人生であったが、やはり真の強さは優しさの中にあると感じた。四枚目は大和の肩を抱くカシアス。「一瞬の夏」を読み、カシアスにコーチを頼んだ大和との深い信頼関係を感じた。⇒2018/08/25
ポン
7
『一瞬の夏』に続いて拝読しました。カメラマン内藤利朗さんのやさしい人柄がにじみ出ているようでした。これまで何度かふれられている『一瞬の夏の続き』はぜひとも発刊してほしいです。2021/04/12
sasha
4
「クレイになれなかった男」『一瞬の夏』。そして、『ラスト・ファイト』の改題・再編集で出された本書でカシアス内藤三部作は終幕。夢に向かって失踪した男たちのうち、トレーナーのエディ・タウンゼントとカシアス内藤にレンズを向け続けた内藤利朗のふたりは既に鬼籍に入った。でも、夢は続く。F&Jカシアス・ボクシングジムから日本チャンピオンが誕生。カシアス内藤の長男だ。そして、このジムの設立には沢木氏も力を貸している。20代だったふたりも、共に60代なった。ありきたりな言葉だけれど、これが人と人との絆かもしれないね。2014/02/17
Y2K☮
2
今月発売の「Coyote」という雑誌に、沢木さんが書き下ろしたカシアス内藤の息子さん(日本チャンピオン!)を取り上げたノンフィクションが載る。その前におさらいという事で再読。「一瞬の夏」を読み返してもいいけど、もう少し楽しみはとっておきます。ボクサーの孤独な生き様や有無を言わせぬ筋肉の迫力、そしてカシアスの純粋さが静かに伝わってくる。まさに心優しき戦う男の写真集。内藤利朗さん、既に亡くなってるんですね。カシアスの最初の奥さんも亡くなってるんだなあ。沢木さんとカシアスの友情が今も続いているのが何だか嬉しい。2014/06/01