目次
1 私はいかにして社会主義者になったか(1894年)
2 小芸術(1877年)
3 不当な戦争―英国の労働者たちへ(1877年)
4 民衆の芸術(1879年)
5 金が支配する世の芸術(1883年)
6 意味のある労働と無意味な労苦(1884年)
7 芸術の目的(1886年)
8 未来の社会(1887年)
著者等紹介
モリス,ウィリアム[モリス,ウィリアム] [Morris,William]
1834年~1896年。詩人、工芸職人、デザイナー、社会主義者、環境問題活動家、小説家、出版者として、19世紀の英国社会に多大な影響を与えた。デザイナーとしての側面だけでなく、人生の後半に、不平等な社会の変革や環境保護のために献身したことが、とくに最近注目されている
城下真知子[シロシタマチコ]
京都教育大学卒業後、労働組合に勤務。退職後、英国ラフバラ(Loughborough)大学で研究し博士号(PhD)取得(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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壱萬参仟縁
45
A図書館より。私が素朴に思ったことは、ソシオパス、サイコパスが芸術をわかるか、どうか? 小芸術のところでも、知ったかぶりによって、いかに恐ろしい損失がもたらされたか(39頁)との指摘も重くのしかかろう。歴史は民衆を忘却したが、彼らの仕事は忘れられずに残っている(60頁)。色川大吉先生を想起した。日本史探究、世界史探究で民衆史に挑戦する生徒も出てほしい。真の芸術とは、労働における人間の喜びの表現だ(81,110頁)。全体的にモリスの平和観も垣間見れる。2022/02/16
niki
4
1877年~1894年の講演や文章が掲載されている。現代の私たちに向けられているような訴え。特に「意味のある労働と無意味な労苦」は秀逸。全く働かずに大量消費する特権階級の廃止を訴え、資本の共同化を主張している(斎藤幸平も主張していなかったか)。誰も望まない品物を山ほど作ることを批判し(『ノマド』のアマゾン批判を思い出す)、現代を「自らの資源を無駄にする文明」と表現する。 未来は貧富の差がなく、政治もなく、地位や財産とは無縁な人間関係が築かれているだろうと解く。彼が今の世を見てなんと感じるのか。2023/10/26
籠り虚院蝉
4
モリスの講演を厳選して収録した本作。翻訳が優しめなのか少し表現が漠然としてむしろわかりにくかった面もあるが個人的には大満足。彼の考え方や他の社会主義論との違いも明確に示されている。科学的なアプローチが主流だった当時の社会主義においてなにより彼がユニークで惹かれるのは、人間が根源的にもつ力、すなわち「夢」が大事だと語ったこと。また文中では「未来像」という語も頻出。地に足つけて生活する労働者としての彼の社会主義論は、数式や理論を身につけただけでは決して得られないヒューマニズムがあるように思う。2020/08/03
Yoshi
2
ウィリアムモリスの論文の数々をまとめている本。 ウィリアムモリスというとアーツアンドクラフツ運動が有名であるが当時のマルクスの資本論である思弁から導き出された疎外された労働とモリスの芸術家、工芸家として実際の労働から導き出された芸術という名の労働の喜びと言った概念は興味深かった。 古典、自然から学ぶこと、文明への敵対、またこうした芸術家が社会主義に偏る経緯、理由も如実に描いており勉強になった。2021/01/08
ゆうちゃん
1
モリスの考える社会主義の理想と昨今のロシア、北朝鮮に代表されるそれとは全く異なることを念頭に読み進めないと、モリスの伝えたいメッセージは汲み取れない。そのうえで、モリスは自然や労働に根ざした楽しい芸術を庶民に取り戻すことを希求する。少品種多量生産では満たせない日常を彩るときめきについて、現代人は取り戻さなければならないだろう。2022/04/01
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- 和書
- アタラ/ルネ 岩波文庫