感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ヴェネツィア
364
11人の作家(作品数は15)の「怖い」作品を集めたアンソロジー。編纂の彩図社は、あまり馴染みがない。文豪たちとあるが、つまりは版権の切れた作家だろう。いずれも概ね幻想文学として高い水準にある。中でも、やはり群を抜くのは漱石の『夢十夜』(第三夜)である。これまでに何度か読んでいるが、こうしてあらためて並べてみると、他を圧して屹立する作品であると思う。次いでは乱歩の『押絵と旅する男』か。この作品の持つ絵画的な幻想は、これまた他にあまり類を見ないものである。小泉八雲の二篇は、内容はいいのだが、残念ながら訳文⇒ 2023/05/22
🐾Yoko Omoto🐾
150
物語そのものは単純でありながら、単純であるがゆえの怖さを見事に描いた名作揃い。正しい日本語で紡がれた文豪の端正な文章は本当に心地よく、視覚に訴えるような表現に惚れ惚れする。乱歩の押絵は言わずもがな、志賀直哉の「剃刀」、芥川の「妙な話」はやはり傑作。十蘭の「骨仏」「昆虫図」はリアルな恐怖が濃縮された逸品で、綺堂の「蟹」、八雲の「破約」は、オカルトながらも真理を突く物語が後をひく面白さ。昔話にありがちながら、言い伝えの根源と教訓を描いた「赤いろうそくと人魚」も良かった。読んでただ面白いと思える、それこそ名作。2019/07/28
sin
65
文体が今様なのでお若い方に取っ付き易いのでは或まいか、何より選出された其々の作品同士、絶妙なバランスを保ちながら読む方を刺激して来るように感ぜられるのは、同じ時代を背負った作者達ならではの世界観の所以であろうか…。2014/01/14
mii22.
57
不思議な話からゾクリとする怖い話まで、11人の文豪が描く15の短篇。既読の話も多かったが、それぞれ楽しめた。お気に入りは、不気味な卵の正体が知りたくてどんどん引き込まれっていった夢野久作「卵」おぞましいラストへ向かってゾクゾクさせられる久生十蘭「昆虫図」「骨仏」。怖いというより切なさで胸を締め付けられる、江戸川乱歩「押絵と旅する男」小川未明「赤いろうそくと人魚」も好き。その他も名作短篇ばかり。2017/09/10
ざるこ
48
文豪作品を手っ取り早くまとめて読めると思って挑戦。11作家15作品。怖いというより奇妙で胸がざわざわする感じ。古典作は展開やオチが想像がつくのも多いけど、その綺麗な言葉や正しい日本語は本当に美しいなと思う。印象深いのは志賀直哉「剃刀」少しずつ狂気の芽が育ち一線を越えてしまうラストの脱力感が生々しい。火野葦平「紅皿」青河童と赤河童の会話文がなんだか滑稽だけど疑り合って復讐してて哀れ。内田百閒「件」「冥途」阿房列車は愉快だったけどこの2作は孤独で寂しい。江戸川乱歩「押絵と旅する男」は何度読んでも不気味で好き。2021/02/07