感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
たまきら
25
沖縄の歩んできた歴史を、きちんと沖縄のこえで語っている本って意外と少ない気がする。数年前に首里城を訪れ、琉球が中国・日本と柔軟な外交を行っていたことを知って、小さい島ながらの戦略など、もっと知りたいと思っていた。だからこそこの短編集は温かく、つらかった。暴力は素晴らしい知恵も人材も町も、あっという間に破壊してしまう。すべてを破壊された後、「生きているからいいんだよ」と言えるだろうか。憎しみを捨てることの難しさを思った。2020/10/20
Chiyo K.
9
戦後生まれ沖縄県出身の漫画家による、沖縄戦がテーマの初期作品集。素朴な絵柄で、住民と日本軍との関係も描きこまれている。10年近く前の出版、作品の初出は20年以上前ですが、ぜひ多くの人に読んでいただきたいと思います。2019/06/23
ぽこにゃん
5
おそらく、比嘉進氏の漫画で単行本などになっているものはこれで全て読んだと思う。 ともかくも、戦争などという、なんというか、ひたすらに愚かでしかないことを、そうではないように思い押し付けやってしまう人類に、腹もたつし泣けるし。 沖縄戦の日本軍の酷さも、その後のアメリカの占領も日本の姑息で情けないことも、すべてひっくるめて、人間ってもうこれ以上になれないのかな、と哀しくなるのであった。 人間ってバカだよね。2018/07/21
kentaro mori
4
先日『生きろ 島田叡 戦中最後の沖縄県知事』という映画を見た。本当に悲惨な沖縄戦下、県民の側に立った人物。沖縄の人々はアメリカと戦う以前に、日本との戦いがあった。その悲惨さを淡々と語る漫画。全編素晴らしいが特に、防空壕で琉球王国の古文書を見つけた教師・学生たちが爆撃の中、沖縄の歴史を学ぶ『学舎』が胸をうつ。⚫️戦争だから簡単に人が死ぬ。/死なないように生き残るように戦う。/それがおじいの戦いだ。しかし難しいぞ。/敵に突撃して死ぬ勇気より、/もっと大きな勇気が必要だ。2021/05/04
Machida Hiroshi
4
著者は少年ジャンプの手塚治虫賞佳作の後ビッグコミック賞で本格デビューをしたそうです。本書は、その著者による、父母などから聞いた戦争体験を元に描いた初期作品集です。名前からわかるように著者は沖縄生まれで、この作品集には沖縄戦に関して描かれた漫画が納められています。防衛の名の下にやってきた日本軍は、水源地の木を切り倒し、爆薬で海の魚を採るなど島の生活を壊し、しかも軍がいることで攻撃対象とされます。防空壕から墓の中まで逃げ惑いながら子供を守り続けた著者の母の言葉「戦争はきたない」は、シンプルですが重く響きます。2015/09/21