内容説明
晴雨は写真家に撮影を依頼し、自らの絵の世界に通ずるような責め写真を発表した。そこにはたしかに、晴雨の美学を垣間見ることができる。晴雨は、写真撮影の目的を「研究」という言葉で説くことがあった。責め苦により、肢体はいかなる蠢きを繰り広げるのか、表情の豹変ぶりはどうなのか、飽かず求め続けたのだろう。ときに黒髪に妖気をこめて、恐るべき形相を投げ返してくるその姿には、晴雨の得意とした幽霊画の、身も凍るような霊界の女のイメージも重なってこよう。風俗資料館が所蔵する、貴重な資料!
著者等紹介
相馬俊樹[ソウマトシキ]
1965年生まれ。慶応義塾大学文学部哲学科美学美術史学専攻卒。美術評論家(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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HANA
55
SMが市民権を得て久しい現在だが、ここに収められた写真の数々はそのように明るいものではなく、それらが本来持っていた背徳感に満ち満ちたものばかり。古びたモノクロの写真、過剰なまでに縄で縛られた身体、そこに縛られ転がされているだけなのに過剰な物語性を帯びた数々。これらの写真を見ているとそれらが本来持っていて現在では削ぎ落されたエロスの持ついかがわしさのようなものが十全に思い知る事が出来ると思う。あと一時期騒動となったらしい無惨絵の安達ケ原に範を得たと思わしき妊婦の逆さ吊り写真もしっかりと収録されていました。2023/12/19