内容説明
海難に遭遇した“グレン・キャリグ号”。救命ボートが漂着したのは、怪物ひしめく魔境。生きて還るため、海の男たちは闘う―。“ボーダーランド三部作”のひとつとして名のみ知られた海洋怪奇小説、本邦初訳!
著者等紹介
ホジスン,ウィリアム・ホープ[ホジスン,ウィリアムホープ] [Hodgson,William Hope]
1877年、英国エセックス州に生まれる。十代で船員となり、苦労のすえ三等航海士の資格を取得。下船後、体育学校の経営者、写真家を経て、1904年に小説家となる。1914年、第一次世界大戦に従軍し、1918年にベルギーで戦死
野村芳夫[ノムラヨシオ]
1948年、東京都に生まれる。出版社編集部員、小説家・半村良のアシスタントを経て、英米文学翻訳家に。淑徳大学兼任講師(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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HANA
65
海がまだ未知と神秘に満ちていた時代の物語。ポオの「ナンタケット島出身のアーサー・ゴードン・ピムの物語」やラヴクラフトの「ダゴン」同様に、乗っていた船に災難が起こり脱出した先で…というのはお約束だが、その先の出来事で各作家の志向や力量が測られるなあ。その意味では先の二作品と異なり悪夢を彷徨い歩くような内容ではなく、困難を乗り越える冒険的な趣が強くなっている。襲ってくる困難は巨大蟹や大蛸、そして…と嬉しくなるようなのが揃ってるが。あと会話文が一切なく、登場人物も一部以外はその他大勢なのも、いっそ潔いかも。2019/11/06
ニミッツクラス
28
16年(平成28年)の税抜2100円のソフトカバー初版。ナイトランド叢書の一冊。ボーダーランド三部作の初巻(という言い方は後付けだし続き物ではないから変だけど)で1907年刊行。本邦では「幽霊海賊」と「異次元を覗く家」が先に出たので、何か意味があるのかと順番に読んだ結果…カンケイナイヨネ。海洋奇譚は著者の真骨頂でホラー描写には定評ある処なのだが、ドイルやヴェルヌの様な活劇的エンタメ要素を期待するとスカされる。余談だけど、大蛸とか巨大蟹とか出ると茹でて喰ってみたいと思う自分は日本人だなと思う。★★★★☆☆2022/01/24
Kouro-hou
25
ついに「ボーダーランド三部作」が全て邦訳(涙)。三部作で最初に発表(1907)されたコレは、舞台設定が18世紀前半(つまり発表時にすでに古典風として書かれている)、語り手が息子に若い頃の海洋遭難話をするという額縁構造の冒険小説。遭難先の怪しげ海域で血の赤い大ダコ、数で勝負の○○人等ホラーな怪物が多数登場しますがそういう理由で安心して読めますw で、大枠だけでみると宇宙要素の無い、コンパクトで明るい『ナイトランド』なんですね。そして困難を克服すべく生き残り達が団結して力を発揮する人間賛歌な面も強いのです。2016/05/07
かわうそ
24
前半はやや冗長だけど、グッとこらえて名のみ知られた怪奇小説の古典がようやく翻訳された喜びを噛み締めながら読み進めればシンプルながら緊迫感のある怪物たちとの応酬が次第に盛り上がってまいりますよ。2016/04/24
りー
24
ロビンソークルーソーと比較するのはまぁちょっとロビンソークルーソーに失礼な気がしないでもないけれども、漂流冒険モノとしては十分に面白いです。まぁ深みとかね、物語の滋味というかそういう味わいは特にありゃしないんですがナイトランド叢書なんでその辺を煩く言う人はB級ホラーの世界になんて足を踏み入れないが吉です。味わい深さの代わりにモンスターは出てきますからそれで満足してください。2016/04/03