感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
伊野
6
たとえば、何かサブカル的なものについて思いを巡らせているときに、ふと以前読んだ哲学者のことばや現代美術作品のコンセプトが表層的に繋がる瞬間がある。この博物館はまさにその表層的連鎖によって足場が組まれており、また、柱は呪術と美術の交差によって構成されている。そうして造られた「奇妙な部屋」、ヴンダーカンマーはまさに思考の反応装置として機能し、趣味が合えばとても興味深く読める。2014/07/05
川崎
3
「美術とは何か」を論じる机上の空論ではなく、氏は在野の人として作家と交流し、実感として体感した美術を語る。現代美術は意地悪な知恵比べに似ていて、作家の難解な出題に対し、回答を見つけるのが見る側の役目とあった。しかし本書で氏が示す回答は、「問いへの更なる問い」であって、様々なジャンルの知識を総動員し、横飛びしながら、知と美の深層=人間の呪術的根源へと誘う。樋口氏というフィルタを通して提示された回答を、さらにまた読者が自身のフィルタにかけ、問いを再生産できる。まさに博物館という題名を冠するに相応しい本だった。2016/05/27
きりさめ
2
著者の視点が面白い。榎忠が美術、鴨井玲が呪術という見方はなかなかないと思ったし彼らの作品に対する見方が変わった。ドール作家や腐女子文化などサブカルな題材も取り上げていて興味深った。2016/02/26
ちり
2
積ん読してるうちに時勢が変わり、紹介されている戦争(零戦など)をモチーフとした作家に関する章の受け止め方がまったく切実なものになってしまった。真顔で「生きて虜囚の辱めを受けず」などと主張する人は今のこの国にもたくさんいると、分かってしまったばかりなのだから。2015/02/10
青
1
ゴシックのイメージが強かった著者だったけど、古典から現代美術に渡って論じられていて面白い。美術館に行きたくなった。2021/01/07