内容説明
日韓併合時代初期、急激に近代的価値観へと転換を迫られる朝鮮半島の情景や、徐々に高まりを見せる抗日運動の様子が、当時少年期を過ごした著者によって描かれた貴重な手記。著者は日本など列強の手が伸びる李朝末期に生まれ、併合後十年でドイツへと亡命、のちに医学博士となる。このため、朝鮮半島解放直前から激化して戦後長く続いた反日的イデオロギーの影響をほとんど受けておらず、その手記は淡々とした静かな文体ながら当時の激変する情勢における確かな真実を浮き彫りにしている。
目次
スアム
毒
はじめての罰
南門
昴
代願の母
父
学校
時計
夏休み
玉渓川で
悲しみの歳月
松林湾にて
春の日
干ばつ
入学試験
京師
古い学問と新しい学問
別れ
鴨緑江は流れる
待ちわびて
大海原で
浜辺
目的地
著者等紹介
李弥勒[イミルク]
1899年、朝鮮半島、黄海道海州の両班の家に生まれる。1918年に京城医学専門学校入学。1919年の三・一独立運動に参加したあと、上海を経由してドイツへ亡命。1950年、ミュンヘン郊外で没
平井敏晴[ヒライトシハル]
1969年栃木県生まれ。比較文化学者、翻訳家。金沢大学理学部を卒業後、ドイツ文学に転じる。東京都立大学大学院博士課程退学。専門はマニエリスム論、メディア論。博士課程在学中より北東アジアにおける音声文化に興味を抱き、2005年に渡韓。ソウル在住。渡韓後、研究のために韓国全土、中国東北三省、内モンゴル自治区を歩きながら東アジア近代史にも関心を持つ(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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