出版社内容情報
かつて“魔都”と呼ばれた上海に生きる若者たちの物語
著者の森田靖郎さんは、小誌86年9月号の特集『上海オリエント・エクスプレス』で、不良する街という新しい切り口で上海を浮き彫りにしてくれた人。本書では、文革時代から十数回にわたって訪中した森田さんならではの、通常の旅では決して出会うことのできないであろう中国の若者との出会い、そして語り合ったナマの上海が描かれている。上海といえばすぐに連想さあれる30年代のノスタルジックな世界ではなく、赤いバイクに乗って暴走し、不良する若者が生きる今の上海を知るにはうってつけの本だ。
1987.5 流行通信
1 上海に春がきた shanghai spring
黄色音楽カム・バック
生きていた男
2 赤い幸福号 happy red bike
バー明星の明りがついた
下放された兄妹
ポスト文革ゼネレーション
出稼ぎ列車
小さな生産公社
3 上海qジャック&ベティ shaghai jack & betty
黒いサングラスの女
外国人とつき合ってみないか?
ダウンタウンの顔役
Shanghai merry-go-round part1
4 失われた世代 lost ganeration
出口なき青春の日々
上海の金の卵
1945年8月101日
5 上海にキッス! kiss to shaghai
編集長さま、いかがお考えですか
人民法院231号室
30年代と80年代の都会病
Shanghai merry-go-round part2
6 ニューヨークのシヤンハイ dragon in new york
ドラゴンの末裔たち
ウッドサイド・Av.
第五の近代化
“民主”のサインの行方
7 上海センチメンタル・ジャ-ニー sentimental journey
風は夕暮れのバンドを渡る
上海改造計画―あとがきにかえて
62.3.6
日刊ゲンダイ
自著を語る
「上海という都市になぜひかれるのか。考えてみると、東京がつまらなくなってきたことと関係があるように思えますね。古い建物がどんどん壊され、単なる消費だけのオートマチックな無機質な町になってしまった東京という都市には、わずか2、30年前のことであっても、その“記憶”はない。一方、上海は百年前の記憶すら都市の中に包み込んでいます。そんな上海に何度も訪れているうちに出会ったのが“上海の不良たち”です」
夕暮れの上海の街を、250ccの赤いバイク「幸福号」で疾走し、表通りの喫茶店の前にバイクを止め、若い女の子をひっかける共産党幹部の息子たち。
バー「明星」に、赤い口紅とマニキュアをし、ベルボトムのジーンズにサファリジャケットを着てやって来る“上海のジャック&ベティ”たち。
彼らの中では今、ビールをオレンジジュースで割って飲むのがナウい飲み方だそうだ。
「上海は、文革の時代に下放(農村に配属)されたり、勉学の機会を奪われた“失われた世代”にとっての希望の都『明星』を経営しているのも彼らだし、“上海の不良”たちは文革時代に失われた青春を今、取り戻そうとしているように見えます。あ