内容説明
民主主義政治を実際に機能させている「代理」に演劇性が含まれるように、演劇と民主主義はその本質において複雑に交錯している。民主主義への無力感と絶望が高まる世界で、演劇の仮構性・虚構性を活かした政治的発想の転換を11人の演劇学者と政治学者が模索する。
目次
第一章 民主主義と演劇―表裏一体の関係(平田栄一朗)
第二章 政治思想から見た民主主義の演劇的特徴(平田栄一朗)
第三章 アートの政治化/政治のアート化―クリストフ・シュリンゲンジーフの『チャンス二〇〇〇』を例として(北川千香子)
第四章 演劇の声にあらわれる政治と民主主義的倫理の葛藤―ニードカンパニー『鹿の家』における連帯の演技を例に(針貝真理子)
第五章 鏡に映らない「私たち」―ハイナー・ミュラー戯曲『ヴォロコラムスク幹線路』における民主主義的主体(石見舟)
第六章 一〇〇%デモ()ストレーション―共同体における討議とポスト移民の現実を試行する場としての演劇(ヴェロニカ・ダリアン)
第七章 パフォーマンスのシアトロクラシー的効果とそれを「観る」行為について―映画『ザ・スクエア 思いやりの聖域』における民主主義の自省的瞬間(三宅舞)
第八章 舞踊と政治―ウィリアム・フォーサイスとケンダル・トーマスの『ヒューマン・ライツ』(ゲラルト・ジークムント)
第九章 熟議民主主義における演劇的モメント(田村哲樹)
第一〇章 シアトロクラシーの三つの可能性―“政治家=俳優”と“大衆=観客”のあり方を再検討する(玉手慎太郎)
第一一章 代表と演劇―構築主義的代表論における聴衆=観客の位置付け(田畑真一)
第一二章 プレビシット民主主義とは何か―ジェフリー・グリーンの「視覚の民主主義」を中心に(山本圭)
著者等紹介
平田栄一朗[ヒラタエイイチロウ]
慶應義塾大学文学部教授。1997年、慶應義塾大学大学院文学研究科後期博士課程単位取得退学。博士(文学)。慶應義塾大学文学部准教授を経て2012年より現職。専門はドイツ演劇・演劇学。主な著書『ドラマトゥルク―舞台芸術を進化/深化させる者』(三元社、2010年、国際演劇評論家協会・演劇評論賞)
針貝真理子[ハリガイマリコ]
東京大学大学院総合文化研究科准教授。慶應義塾大学でドイツ文学と演劇学を学ぶ。2008年から2011年まで、DAAD奨学生としてベルリン自由大学演劇学研究所に留学し、同大学で博士号(Ph.D.)取得。東京藝術大学音楽学部准教授を経て2021年より現職。専門は演劇学、ドイツ文学・思想。主な論文:「都市の声、餌食の場所―ルネ・ポレシュ『餌食としての都市』における“非場所”の演劇」(『ドイツ文学』一五六号、2018年、第一七回日本独文学会・DAAD賞)
北川千香子[キタガワチカコ]
慶應義塾大学商学部准教授。広島大学、テュービンゲン大学、ウィーン大学でドイツ文学と演劇学を専攻。2009年から2013年まで、ドイツ学術交流会(DAAD)の奨学生としてベルリン自由大学演劇学研究所に留学、同大学で博士号(Ph.D.)取得。留学中には、アムステルダム歌劇場とライプツィヒ歌劇場にてドラマトゥルクおよび演出助手の研鑽を積む。専門は演劇学、演出美学、特にワーグナー以降のオペラ/音楽劇研究(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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