内容説明
子どもたちの戦争体験は後の人生にどのように影響したか。戦後ドイツでは、ナチスの犯罪への罪の意識の中で、第二次大戦下で心的外傷を負った子どもたちについて熟考し、手をさしのべることがタブーとされてきた。数十年の年月を経てようやく戦争の子どもたちがその苦しみの原因をたぐりよせ、そして語りはじめる。
目次
私たちの中の何百万人もの戦争の子どもたち
子どもたちが必要としたであろうもの
「沈黙した、気づかれない世界」
二人の女性が総決算をする
陽気な子ども
すべての国民が移動する
戦争孤児―思い出を求めて
ナチスの教育―ヒトラーにすすんで従う母親たち
「うんとうんと、やさしくしましょう…」
トラウマ、戦争、脳の研究
重度の感情麻痺
「年をとればきっと幸せになる」
絶望的な家族
理性と悲しみに賛意表明
沈黙、語り、そして理解について
著者等紹介
ボーデ,ザビーネ[ボーデ,ザビーネ] [Bode,Sabine]
1947年生まれ。ケルン市在住。『ケルン市報道新聞』編集者を経て、1978年よりフリージャーナリスト、著述家、ラジオ放送作家として活躍。戦争の子どもたち、戦争の孫たちをテーマとする主要著作は、ドイツの雑誌『シュピーゲル』のベストセラーリストに挙げられ、現在でも読み継がれているロングセラーでもある
齋藤尚子[サイトウヒサコ]
桜美林大学名誉教授
茂幾保代[モギヤスヨ]
元大阪大学非常勤講師(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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nranjen
6
図書館本。ドイツの負の遺産をどう捉えるか、現代においてなお、ドイツにおいて盛んに提起されている。しかし、それを考えるにあたって、それを背負う人々もまた戦争のトラウマを負っていたこと、さらに戦争終結時に幼かった子供だった人々には、そのトラウマが自覚されることなく深く根付き、さらにその祖先たちにもその影響が伝播されていることの問題を提示した書物。視点はすばらしいが、注釈は?引用の出典は?それらが原文の段階、もしくは訳出の段階に失われたのかわからないが、そのために重要なものが欠落した印象が免れない。2021/05/08
Masako3
2
★★☆ ドイツのジャーナリストによる著作。戦争時に子供であったドイツ人達が、長くPTSDを患っていること、民族としての政治的な加害者意識から、長くそれらがタブー視されていたことをテーマとして扱っている。日本ではあまり見られない現象であろう。雑誌の掲載をまとめたものであり、個人的な事例紹介が多いので冗長であるという印象は否めないが、そのテーマ性で十分読ませる良書である。2017/10/01