内容説明
伝説の女教皇ヨハンナの鮮烈な生涯は、時代に応じて大きく異なる意味を託され、中世から現代まで語り継がれてきた。フィクションを現実の一部として扱う現代歴史学の手法を用いて「女教皇伝説」をひもとく。
目次
第1章 実在の人物か?虚構の人物か?―実話から驚異譚へ
第2章 女教皇は実在できたか―歴史的舞台としての九世紀
第3章 女教皇伝説の成立―托鉢修道会の説教から中世後期における伝説の影響まで
第4章 女教皇の新しい役割―十四・十五世紀の教会政治上の対立における歴史的・法学的主張
第5章 道徳上の怪物か、あるいは歴史上の怪物か―宗教改革期の宗派間論争から近代文学まで
第6章 あとがきにかえて―われわれに女教皇は必要か?
著者等紹介
ケルナー,マックス[ケルナー,マックス] [Kerner,Max]
アーヘン工科大学中近世史教授
ヘルバース,クラウス[ヘルバース,クラウス] [Herbers,Klaus]
エアランゲン=ニュルンベルク大学中世史・歴史補助学教授
藤崎衛[フジサキマモル] [Schicketanz,Erik]
1975年生まれ。東京大学大学院人文社会系研究科助教。西洋史学専攻、博士(文学)
シッケタンツ,エリック[シッケタンツ,エリック]
1974年生まれ。日本学術振興会外国人特別研究員。歴史学・宗教史学専攻、博士(文学)(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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maqiso
3
女教皇の伝説は、中世の中盤に書かれてから、様々な立場から教訓や批判として使われ史実性を増していった。存在し得ない教皇が存在すると都合が良い状況がたくさんあり、そのせいで存在したとする証拠が増えていったのが面白い。書物に書かれる前の伝説が分からないのはすっきりしないが。2019/08/27
Fumitaka
1
根深く伝説の残る女教皇ヨハンナの、ドナ・クロスの小説のようには実在して「いなかった」ことは確実として、その伝説がどのように形成され、受容されていったかということの検証。ドナ・クロスの小説を自分は読んでいないが、本の最後で女教皇ヨハンナの存在について「ヴァチカンが証拠を隠滅した」などと「陰謀論」(p. 173)じみた「擬似学問」(p. 175)的なことを書いているらしく、これについては自分も、神話に何らかの美徳を見出すのはともかく「実在性を立証する必要などあるだろうか」(p. 176)と思わざるを得ない。2025/04/22
orca_me2
1
口伝の民間伝承がいかにして伝説・神話となっていったか。キリスト教に関する知識がないのでちょっと理解が難しかったけど、知らない世界が見えてくる感覚が面白い。「実態がないとはいえ、人の心に影響を与えたのであれば、それは存在したと言えるのでは」という一言にハッとさせられた。2025/04/17
しじまいずみ
1
とても興味深い内容だった。女教皇のエピソードにバリエーションがあり、何故その伝説が伝えられるようになったかの背景、それはフィクションか否かにも言及している。2023/09/13