内容説明
画家自らが「不確定さ」を強調し、解釈困難として放置されてきたこの素描作品は、近年発見された新史料によりポーの小説を源泉にもつことが判明した。だが、作品は絵画としての自立性を求めて物語を超越し、いずれからも決定されない。本書は、徹底した作品観察にもとづくイコノロジーの視点で画家が幾重にも織り込んだ造形的創意を読みとき、ルドンがついに獲得した高度な「抽象性」への道程を明らかにする。
目次
第1章 一枚の紙―不確定性、形態、物語
第2章 ポーとルドン―両義的な関係
第3章 視覚的な類似―テキストとイメージ
第4章 ポーに由来するイメージ
第5章 『アモンティラードの酒樽』と折り重なる犠牲者
第6章 ポーとしての自画像
第7章 カーニバル、鈴、道化師
第8章 アウトサイダーとしての芸術家
第9章 「夢のまた夢」―ルドンの「狂気」
第10章 想像力、カリカチュア、抽象
著者等紹介
ガンボーニ,ダリオ[ガンボーニ,ダリオ] [Gamboni,Dario]
ジュネーヴ大学美術史学教授。リヨン第二大学、ケース・ウェスタン・リザーヴ大学(アメリカ合衆国、クリーヴランド)、アムステルダム大学など世界各地で教授経験をもち、東京大学でも教鞭をとった。フランス大学学士院会員。メレート・オッペンハイム賞受賞。CASVA(視覚芸術先進研究センター)、ヘンリー・ムーア研究所、クラーク美術研究所にて特別研究員。展覧会の共同企画多数
山上紀子[ヤマジョウノリコ]
名古屋大学大学院博士後期課程満期退学、パリ第1大学DEA修了。現在、大阪大学非常勤講師。専門は、西洋近現代美術史
長屋光枝[ナガヤミツエ]
名古屋大学大学院博士後期課程満期修了。現在、国立新美術館企画室長。専門は、西洋近現代美術史(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。