内容説明
部族の政治的・社会的役割が近代国家の発達や時代の経過や生活様式の変化を経ても厳然と存続していることを、シリアで行った世論調査などを踏まえ明らかにしていく。
目次
はじめに(問題の所在)
1 シリア政治の研究史
2 研究対象の定義と研究方法論
3 ユーフラテス河沿岸地域・ジャジーラ地域の諸部族の起源と現状
4 ユーフラテス河沿岸地域・ジャジーラ地域の諸部族とシリア政治
5 現在のシリアの諸問題と部族
6 結論
著者等紹介
高岡豊[タカオカユタカ]
新潟県出身。早稲田大学教育学部卒。上智大学外国語学研究科地域研究専攻修了。上智大学にて博士号(地域研究)を取得。在シリア日本国大使館専門調査員、財団法人中東調査会客員研究員、上智大学研究補助員を経て現在、中東調査会研究員(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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yagian
1
ソマリアに関する高野秀行の一連の書籍を読むと、ソマリアには「無政府状態」であっても、部族によって一定の秩序があることがわかる。国家は不在とも、社会は存在するのである。おそらく、国家と部族は、抑圧や抵抗、そして協力などの複雑な形態の関係にある。特に、国家の支配、統制が弱まると、部族社会の意味が高まるのだろう。同様のことは、イラクやシリアにも当てはまり、「イスラム国」も部族と複雑な関係を持っているのではないか。この著者には、ぜひ、「イスラム国」と部族の関係の解明に向けて研究を進めてほしい。2015/12/27
Kenji Suzuya
0
著者の博士論文の単行本。シリア東部地域での部族の政治的影響力を実証する。手法として大規模な世論調査を実施して結果を活用している点は注目するべき点。また、イラクへのテロリストの潜入について、俗説とは異なり部族はあまり役割を果たしていないと実証した点も。本研究の意義としては、部族それ自体の政治的な意義を示すのには失敗しているようにも見えるが、それよりも、政権が部族にも一定程度配慮していることから、集権的というよりは分権的な政権の性格の一端を示しているということがいえるだろう。2013/01/07
かわのふゆき
0
思っていたよりも専門的で、読み物としてページをめくるのは大変だった。自分に予備知識が、一切ないせいなんだけど。2012/03/08