内容説明
植民地台湾において、島田謹二は、戦間期のフランス比較文学をいかに受容したのか。本書は比較文学と台湾文学の領域を横断しつつ、『華麗島文学志』に結実した、島田の比較文学思想が、「植民地主義」や「国家主義」との関連で形成された過程を、1930年代台湾の言説空間を明らかにしながら、検証していく。
目次
序章 沈黙と誤解から理解へ
第1章 『華麗島文学志』読解の手がかりとして―「比較文学」とは何か
第2章 『華麗島文学志』の誕生
第3章 『華麗島文学志』とその時代―郷土化・戦争・南進化
第4章 「外地文学論」の形成過程
第5章 四〇年代台湾文壇における『華麗島文学志』
第6章 太平洋戦争前夜の島田謹二―ナショナリズムと郷愁
終章 二つの文学史における『華麗島文学志』の意義
著者等紹介
橋本恭子[ハシモトキョウコ]
埼玉県生まれ。学習院大学文学部フランス文学科卒業。パリ第八大学文学部修士課程修了。台湾国立清華大学中文系修士課程修了。2010年5月、一橋大学言語社会研究科博士後期課程修了。博士(学術)。日本社会事業大学非常勤講師。一橋大学言語社会研究科博士研究員。専門は比較文学・台湾文学(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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小谷野敦
3
ちょっと機縁があったので近所の図書館にはなかったが北区図書館から取り寄せてざっとななめ読みした。著者は生年が書いていないが恐らく私より年上で、これは一橋大学の2010年の博士論文で2012年刊行だから著者は50歳を超えていただろう。実にものすごい量の文献を読破していて、これは十年がかりである。力作である。 島田謹二(1901-93)は文化功労者の比較文学者で、東北帝大の英文科を出たあと台北帝国大学教授となり、敗戦直前に香港へ渡ったが敗戦後日本へ引き上げて東大教養学部の英語教授となり、2023/09/25