内容説明
イエスが隣人愛について語ったこの物語は、キリスト教成立期以来、さまざまな場面に描かれ、時代を経てその描写は変容してゆく。旅人を襲う「強盗」が「悪魔」として、「サマリア人」が時に「イエス・キリスト」として、聖書テクストから逸脱して描かれることもあった。これは、キリスト者がいかに聖書を解釈したのかという信仰の表象でもある。本書は、それらの寓意的描写をうながした教父や神学者たちによる聖書釈義の伝統を踏まえ、図像プログラム全体のコンテクスト、および、儀礼・典礼など宗教的実践との密接な結びつきにも留意しながら、テクストと図像との交錯した関連を考察する。「よきサマリア人」の譬えが描出された主要作品カタログを収録。
目次
第1章 福音書における譬えの位置と図像化された譬え
第2章 「よきサマリア人」の譬えとその釈義テクスト
第3章 西ヨーロッパおよびビザンティンにおける「よきサマリア人」の譬えの図像化
第4章 「よきサマリア人」の譬え図像の意味と解釈
第5章 「よきサマリア人」の譬え図像における送り手と受け手の呼応作用
第6章 譬えの語りおよび譬えの図像によるコミュニケーション
著者等紹介
細田あや子[ホソダアヤコ]
1964年生まれ。東京大学大学院人文社会系研究科博士課程単位取得退学。ハイデルベルク大学大学院博士課程修了(Dr.phil.)。新潟大学人文学部准教授(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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