内容説明
ベケットのなまなましい肉声と同時代人の証言をもとに、冷徹な眼差と辛辣な筆とによって、その芸術と人間をあますところなく描ききった、最初の本格的伝記。ベケットの存命中に書かれながら、ベケットに公認されなかった唯一のベケット伝。
目次
少年時代―一九〇六‐二三年「僕の少年時代は幸福だったと言ってよい…」
我が家の異邦人―一九二三‐二八年「我が家の異邦人にただ目を白黒」
ジョイスのパリへ―一九二八‐二九年「びっくりするほど頭のいかれたアイルランド人」
憧憬と焦燥―一九二九‐三〇年「書きたくてうずうずしているが、言うべきことは何もない若者」
さらばトリニティ―一九三〇‐三一年「最良のものを失って」
宿命のアイルランド―一九三一‐三二年「僕は死ぬまでここにいることになるんだ。異邦人のオートバイにまたがって、お上品ぶった道路を這いずり回りながら」
父死す―一九三三年「親父は僕が子供の頃に死んだ。それでなければ…」
ビオンの許へ 精神分析―一九三四年「途方に暮れ…心は千々に乱れて」
ユングの衝撃 ロンドン決別―一九三五年「今やロンドンとの繋がりを断ち切るとき」
『マーフィー』―「いったい誰なんだ、そのマーフィーという奴は…ひとかどの人間なのか、ひとかどのものを何か持っているのか」〔ほか〕
著者等紹介
ベァ,ディアドリィ[ベァ,ディアドリィ][Bair,Deirdre]
アメリカの女性伝記作家。文学ジャーナリスト、大学の比較文学教授の経歴の傍ら、旺盛な執筆活動を展開。『サミュエル・ベケット―ある伝記』で1981年に「ナショナル・ブック・アウォード」を受賞。以後、1991年にシモーヌ・ド・ボーヴォワール、95年にアナイス・ニン、2003年にカール・グスタフ・ユングの伝記を出版し、ボーヴォワールとニンのそれがともに同賞に最終ノミネートされる。ごく最近では、晩年の離婚等、社会問題も論じている
五十嵐賢一[イガラシケンイチ]
1943年生まれ。早稲田大学大学院文学研究科博士課程修了。フランス文学専攻(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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