内容説明
『パウルス3世とその孫たち』は、ティツィアーノの最も有名な、論じられることの多い絵画の一つである。とはいえ、この絵が提示する一連の問題は、今日まで満足のいく解答を見出していない。この絵は普通、国家肖像画のジャンルに分類されているが、これまで誰も、その絵の政治的意味内容を解読しようとしなかった。この絵において、なぜ教皇の二人の孫アレッサンドロとオッターヴィオだけが描かれ、彼の息子ピエル・ルイージや他の二人の孫オランツイォとラヌッチオは描かれなかったのか?なぜ絵画の制作が中断されたのか、そして、画家は別れを告げたが、ティツィアーノとファルネーゼ家との関係がそこなわれなかったのはなぜか?依頼者の希望で伝えられるはずであった政治的メッセージを人々に理解させるのに、画家はどのような芸術的手段を用いてこれに成功したのか?文献的及び図像的資料の研究によって、著者は、上記の問に対し、説得力のある答えを出すことができた。同時に、本書で示された分析は、美術史研究のかかえているアクチュアルな諸問題を討論の対象にすえる機会をも提供している。
目次
第1章 未完の肖像画『パウルス3世とその孫たち』(ティツィアーノ作『パウルス3世とその孫たち』;表敬 ほか)
第2章 肖像画の政治的機能(閥族主義;国家肖像画 ほか)
第3章 画家の思惑(ファルネーゼ家とティツィアーノ;ローマのティツィアーノ ほか)
第4章 肖像に滑り込まされる野望(ピエル・ルイージの四人の息子たち;アレッサンドロの焦り ほか)
第5章 野望の結末、そして絵が語るもの(制作の中断についての新説;肖像画のその後の運命 ほか)
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