内容説明
オウィディウス『変身物語』第8書「イカロス墜落」。ブリューゲルは、この自明の物語を原典批判的に切り詰め、古い手本にしがみつく不正確な見方のしきたりを覆す人文主義の要求を実現した。時代は、宗教戦争、カトリック国スペインによるネーデルラント支配…、愚かな流血で彩られた己の時代に「鉄の時代」の再来を認めた画家は、人文主義者の悲哀をこめて暗号化せざるをえなかった描写に、いかなる予言を込めたのか。
目次
第1章 はじめに―受容史を追って
第2章 図像学的概観
第3章 世界の喪失か?広大な宇宙での性急な意味の探求
第4章 風景の歴史についての小さな回り道
第5章 神話の地図
第6章 コピー作者にとっての落とし穴
第7章 原典に戻る!人文主義の逐語的解釈
第8章 画面左端の短剣
第9章 世界劇場
第10章 スキュラとカリュプディスの間―宗教改革における人文主義者の立場
第11章 「自己それ自体へ(自省録)」
著者等紹介
ヴィース,ベアット[ヴィース,ベアット][Wyss,Beat]
1947年バーゼル生まれ。チューリッヒ、ベルリン、ローマで美術史、哲学、ドイツ文学を学ぶ。建築史、新美術史、美術理論の領域で研究活動。大学講師、出版監修、編集者として活動。シュトゥットガルト美術史研究所を経て、2004年よりカールスルーエ造形大学の美術史・メディア理論の教授
神原正明[カンバラマサアキ]
1952年、大阪市生まれ。1978年神戸大学大学院文学研究科(芸術学芸術史)修了。倉敷芸術科学大学教授(大学院芸術研究科、芸術学部)。専門は西洋美術史(ネーデルラント美術史)、図像学(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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