目次
第1章 クラーナハの前に準備されていたもの
第2章 クラーナハの最初の構想
第3章 多くの顔を持つルター
第4章 ルターのイメージをつくった人びと
著者等紹介
ヴァルンケ,マルティン[ヴァルンケ,マルティン][Warnke,Von Martin]
1937年、ブラジル生まれ。ミュンヘン、ベルリンで美術史、歴史、ドイツ文学を学ぶ。1964年、博士号、1970年、大学教授資格を得る。1971‐78年、マールブルク大学美術史学教授。1979‐2003年、ハンブルク大学教授。ハンブルクにあるヴァールブルク・ハウスの政治的図像解釈部門を率いる
岡部由紀子[オカベユキコ]
1948年、大阪生まれ。1979年、京都大学大学院博士課程修了(美学美術史学)。京都外国語大学教授。専門はドイツ美術史(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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zirou1984
32
クラーナハというのは語りにくい存在だ。ルネサンスの時代に反するかのようにゴシック的エロティシズムに溢れた絵画を製作しながら、市長や企業主を務める実業家的面も持つ。宮廷画家でありながら革命家ルターの友人でもあり、同時最先端のメディアである印刷術に対応した抜け目のなさも備えている。ルターの肖像画に焦点を当てた本作では、描かれること自体の政治性と宗教性に着目しながら、それが同時どのように機能していたを掘り下げている。ここでも明らかになるのはやはりクラーナハの意図や技法であり、彼の内心は見えてこないままなのだ。2016/12/30
しゅん
10
視覚情報というのはほんとに強烈に人を支配するもので、聴覚や嗅覚はとうてい敵わない。だからこそ、視覚を持たないが故にイメージに囚われることのない盲人は畏怖の対象となるのだろう。クラーナハが描いたルターの肖像の変遷は、イメージの支配力を熟知していた人間が製作の影にいることを示唆しているし、結果ルターは歴史上の人物として現代でも名を残す。クラーナハについて知ろうと思い開いた本だが、むしろ内面に後退し外の世界を無視するルターの在り方に興味を抱いてしまった。2017/01/07
tori
0
終始妄想と決めつめで客観的事実が示されない。推敲されていない学生の卒論を読まされているよう。2017/01/04
paxomnibus
0
おもしろいです。クラーナハの4枚の肖像版画を元にルターの業績を追うように読むこともできるし、彼の活動にその肖像がイメージ作りとしてどのように関わったかを知ることもできる。大切なのは16世紀当時における画家のあり方と、19世紀以降の近現代の芸術家の存在はまるで違うということを理解した上で各作品に接すること。画家をとりまく状況が今とまるで違うんだから、現在と同じ視点で評価してはいけないってことですね。そんな当たり前のことが、実はこの本が上梓されるまで「当たり前」とされていなかった事を知ったのが一番の衝撃でした2018/04/07