内容説明
昔語りのなかに時を越えて死者と生者が入り混じる…著者初の時代物短篇集である表題作、豊かな趣向を凝らした「化蝶記」の2冊を収録。
著者等紹介
皆川博子[ミナガワヒロコ]
1930年、京城生まれ。東京女子大学英文科中退。72年、児童向け長篇『海と十字架』でデビュー。73年6月「アルカディアの夏」により第20回小説現代新人賞を受賞後は、ミステリー、幻想、時代小説など幅広いジャンルで活躍中。『壁―旅芝居殺人事件』で第38回日本推理作家協会協会賞(85年)、「恋紅」で第95回直木賞(86年)、「薔薇忌」で第3回柴田錬三郎賞(90年)、「死の泉」で第32回吉川英治文学賞(98年)、「開かせていただき光栄です」で第12回本格ミステリ大賞(2012年)、第16回日本ミステリー文学大賞を受賞(2013年)
日下三蔵[クサカサンゾウ]
1968年、神奈川県生まれ。出版芸術社勤務を経て、SF・ミステリ評論家、フリー編集者として活動。編著『天城一の密室犯罪学教程』(日本評論社)は第5回本格ミステリ大賞(評論・研究部門)を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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藤月はな(灯れ松明の火)
57
皆川博子作品には、狂気じみた一途さを持つ人物が必ず、登場する。その一途さは修羅道や畜生道に堕ちる覚悟もなく、安全地帯にいながらも興味本位で割り込もうとしてくる輩を徹底的に排除し、圧倒させる。だからこそ、私はそれが如実に表現されている「小平次」、「夜の舟」、そして狂気じみた一途さが現れる予感に満ちた「橋姫」が好き。そして、ネットだけでなく、報道も新聞も胡散臭くて信用できなくなってしまった、今の御時世を考えさせられる「戦争と宣伝」の初出が1997年で人間は悪い意味で変わらんのだなと思い知らされました。2014/12/06
ぐうぐう
30
『秘め絵燈籠』と『化蝶記』、二冊の時代物の短編集を収録した『皆川博子コレクション』第7巻。『秘め絵燈籠』は皆川博子初の時代物短編集であり、図書館向けの大活字本として刊行されたのみで、いわゆる一般書店には流通していないレアものである。表題作は絵金こと芝居絵師・金蔵を描いているが、今巻の後記で皆川が、絵師・月岡芳年と絵金を比較し、芳年を江戸川乱歩、絵金を横溝正史に重ねているのが印象的だ。皆川自身が愛着があるという「鬼灯」がやはりいい。(つづく)2020/05/11
秋良
8
自由に恋をすることができない境遇だからこそ、より激しく一途に相手を想うのかもしれない。その一途さのために死ぬことになっても、それはそれで幸せなことなのかも。2017/06/04
rinakko
7
うとり、読み耽る。こちらは未読の作品が多かったので、とても嬉しく読んだ。2014/10/20
夏子
6
一作一作の世界観が濃く、読み応え有り。「生き過ぎたりや」は長編のプロローグのような感じと思ってたら登場人物の一人、大鳥一兵衛をいずれ長編で活躍させたいとの事。いつか読める日が来ることを願っています。大正、昭和を舞台にした作品が個人的に好き。2014/12/31