内容説明
20世紀初頭には、西欧の知的上流階級の病とされていたアレルギー疾患は、1世紀余りの内に全世界のすべての階層に広まり、有病率と死亡率を増加させた。公衆衛生上の懸案事項となり、経済的コストを増大させる一方、製薬産業をはじめ産業界に市場を作り出し、現代のライフスタイルや環境との関連が指摘される現代病になった。本書では疫学的、文化的現象を追いながら現代にグローバルに蔓延するまでを辿る。
目次
第1章 学説史
第2章 奇妙な反応
第3章 診察室でのアレルギー
第4章 グローバル経済とアレルギー
第5章 文明と疾病
第6章 近代性への抵抗
第7章 未来
著者等紹介
大塚宜一[オオツカヨシカズ]
1963年生まれ。順天堂大学医学部、同大学院医学研究科卒業。順天堂大学医学部小児科先任准教授を経て、同客員准教授、免疫アレルギーグループ長
稲毛英介[イナゲエイスケ]
1981年生まれ。新潟大学医学部卒業。順天堂大学大学院医学研究科卒業。2017‐19年にかけて、上原記念生命科学財団等の海外留学助成金を得て、米国コロラド州コロラド小児病院に粘膜免疫のメカニズム研究のため研究留学。2020年4月より順天堂大学医学部小児科特任助教。順天堂医院小児科アレルギー外来を担当(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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ちり
1
この病は発生した初期から社会的な関心が高く、「アレルギー」という用語の指し示す意味や対象に時代的・社会的な変遷が大きかったにも関わらず、これまでアレルギーに関する歴史は医者の視点で、学問上の発見に基づいた実証主義的で直線的なものとして記述されてきた、というところに不十分さを感じた著者が、社会文化的な面、商業面なども含めた歴史を綴った本。2021/04/01
Go Extreme
1
学説史:現代病 文明病 アアレルギーの国 奇妙な反応:特異体質と過敏症 クレメンス・フォン・ピルケとアレルギーの誕生 メカニズムと意味 アレルギーによる死 診察室でのアレルギー:予防的接種療法と臨床アレルギー学の起源 臨床アレルギー学の拡大 黄金の子牛 アレルギーの規模 グローバル経済とアレルギー:有病率と死亡率の世界的動向 世界的ネットワーク アレルギーに付け込む 文明と疾病:リスク社会 ライフスタイルと病気 文明の噴火口 近代性への抵抗 未来:自然回帰 満たされない欲求 意味とメタファー・隠喩2021/03/21