出版社内容情報
(1999年『小型・薄型・携帯パソコンの総合技術』普及版)
【は じ め に】
20年後にもっとも売れている携帯機器は,携帯電話型のパーソナル・ディジタル・アシスタント(PDA)である。なぜならば,老若男女を問わず全世界の人々の頭脳的アシスタントとしての能力,すなわち,自然な言語で会話ができる能力を持っているからである。当然この中には現在より優れたパソコンの機能から,電話・メール,キャッシングシステム,TV・ゲームなどあらゆる機器の機能をも備えている。これがないと人間らしい生活ができないという極端なことになっているかもしれない。その核になる機器が,現在の携帯パソコンと携帯電話である。なぜならば,前者は機能,後者は形を持ち合わせていて,機能をいかに小さくするかという手法のヒントになるためである。ここでは実装技術という観点から,この携帯パソコンとそれを小型にする工夫の現状と未来像に焦点を当ててみた。実は実装技術こそ,未来を切り開く中心的存在なのである。従来の同様な企画にはない内容が,随所に盛り込まれている。じっくりと読んでいただければ幸いである。
1999年9月 明星大学 教授 大塚寛治
【執筆者一覧(執筆順)】
大塚 寛治 明星大学 情報学部
塚田 裕 日本アイ・ビー・エム(株) 野洲研究所
(現) 京セラSLCテクノロジー(株) 先端パッケージング研究所
宍戸 周夫 (株)テラメディア 代表取締役
石川 智久 カシオ計算機(株) コンシューマ事業本部
井藤 忠男 天馬マグテック(株) 常務取締役
杉野 守彦 (株)神戸製鋼所 電子・情報事業本部
(現) 富士(有) 高機能金属製品部
塚田 憲一 シプレイ・ファーイースト(株) PWB/INT事業本部
(現) ティオゥテック コンサルタント
渡辺 好弘 CBCイングス(株) 取締役
野村 恭司 神東塗料(株) IU事業本部
森山 浩明 日本電気(株) カラー液晶事業部
(現) NEC液晶テクノロジー(株) 技術本部 設計部
松下 明紀 鳥取三洋電機(株) LCD事業部
城石 芳博 (株)日立製作所 ストレージシステム事業部
(現) (株)日立グローバルストレージテクノロジーズ ヘッド・メディア本部
三戸 敏嗣 日本アイ・ビー・エム(株) ポータブルシステムズ
角井 和久 富士通(株) テクノロジ本部
前野 善信 富士通(株) テクノロジ本部
平野 由和 富士通(株) テクノロジ本部
入野 哲朗 日立化成工業(株) 電子基材事業部
(現) 日立化成工業(株) 配線板材料BU
石田 芳弘 長瀬産業(株) 電子・情報材料部
萩本 英二 日本電気(株) 半導体高密度実装技術本部
(現) (有)イーエイチクリエイト 知財部門
(執筆者の所属は,注記以外は1999年当時のものです。)
【構成および内容】
第I編 総論 パソコンの小型・薄型・軽量化の現状と展望
1章 小型・薄型・軽量化のためのシステム設計 大塚寛治
1.パソコンの小型・薄型・軽量化の現状と展望
1.1 パソコンとシステム・オン・チップ
1.2 戦略的実装技術の提案
2.実装技術のモデルとしての人間の神経系
3.小型・薄型・軽量化のためのシステム設計
3.1 多ピン,高速信号伝送
3.2 実装設計の基本とワイアボンディング
3.3 チップの発熱と高速信号伝送
4.高速信号伝送用配線
4.1 高速信号配線の概念
4.2 伝送線路の損失と対策
2章 小型・薄型・軽量化のための高密度実装技術 塚田 裕
1.はじめに
2.半導体チップの動向
3.電気特性
4.樹脂封止フリップチップ実装
5.ビルドアップ配線板
6.BGA実装
7.チップの品質
8.今後の展開
第II編 ノート型・モバイル型パソコンの小型・薄型・軽量化技術
1章 ノート型・モバイル型パソコンの小型・薄型・軽量化の動向 宍戸周夫
1.はじめに
2.小型・携帯パソコンの最新動向
2.1 多彩な小型・携帯パソコン
2.2 激化する薄型パソコン競争
2.3 モバイル・コンピューティングの浸透
2.4 液晶デスクトップ・パソコン
3.小型・携帯パソコン開発の経緯と現状
3.1 1980年代前半に出現した小型・携帯パソコン
3.2 現実のものとなった「ダイナブック」
4.要素技術
4.1 表示装置
4.2 外部記憶装置
5.究極の小型・軽量化を目指して
5.1 身につけるパソコン
5.2 最先端技術が実現
2章 「カシオペア」の小型・薄型・軽量化技術 石川智久
1.はじめに
2.製品仕様
3.回路構成
4.製品形状
5.実装の実際とその技術
5.1 主な構成モジュール
5.2 電子部品の高密度実装技術の実際
6.高密度実装技術のポイント
7.軽量化について
7.1 E-10の軽量化について実施した対策
7.2 今後の軽量化
8.今後の課題と方向性
9.「カシオペア」の新製品とその小型化技術
9.1 「E-55」
9.2 「E-500」
10.おわりに
第III編 構成部品・部材の小型・薄型・軽量化技術
1章 ハウジングの軽量化と材料開発・薄肉成形法
1.マグネシウム合金 井藤忠男
1.1 はじめに
1.2 マグネシウム合金の特性
1.3 マグネシウムの成形法
1.4 ノートパソコンハウジングへの適合性
1.5 構造体としてのマグネシウム合金と地球環境(リサイクル性)
1.6 おわりに
2.PC/ABS樹脂 杉野守彦
-ノンブロム系難燃アロイ「バイブレンドK」-
2.1 はじめに
2.2 ノートパソコンキャビネットケース成形材料の動向
2.3 新しく開発した薄肉成形用PC-ABSアロイ
2.4 ノートパソコン薄肉キャビネットケース用材料に要求される性能
2.5 成形品開発期間の最短化
2.6 まとめ
3.PC/GF(ガラス繊維強化ポリカーボネート樹脂) 杉野守彦
3.1 はじめに
3.2 薄肉ハウジング材料に求められる各種特性
3.3 塗装レス薄肉ハウジングの成形
2章 ハウジングの電磁波シールド
1.シールドメッキ 塚田憲一
1.1 プラスチック難燃剤の規制の動向とハウジングのEMIシールドメッキ
1.2 片面シールドメッキの工法種類と特徴
1.3 銅メッキ膜厚と片面シールドメッキ
1.4 片面シールドメッキと外装塗装
1.5 片面シールドメッキの製造
1.6 片面シールドメッキの今後の課題
1.7 高剛性の薄肉メッキ
1.8 電子部品のシールドメッキとセンシルシールドプロセス
1.9 繊維,フィルムのシールドメッキ
1.10 シールドメッキの種類と品質
1.11 無電解メッキの環境への対応
1.12 おわりに
2.高周波イオンプレーティング 渡辺好弘
2.1 はじめに
2.2 パソコンのEMIシールド対策
2.3 真空蒸着から高周波イオンプレーティングへ
2.4 高周波イオンプレーティングのプロセスと特長
2.5 マグネシウム/プラスチック筺体の組合せ
3.導電性塗料 野村恭司
3.1 はじめに
3.2 電磁波シールド塗料の種類
3.3 導電性塗料による電磁波シールド技法の特徴
3.4 組成と特徴
3.5 性能
3.6 UL認証制度について
3.7 導電性塗料の今後
4 導電性ハウジング(炭素繊維強化樹脂) 杉野守彦
4.1 はじめに
4.2 CFRPの分類
4.3 製造上の留意点
4.4 CFRPの物性
4.5 CFRPの用途
4.6 おわりに
3章 液晶ディスプレイの高性能・薄型・軽量化と材料
1 TFT-LCD 森山浩明
1.1 はじめに
1.2 全体構成
1.3 薄型化・軽量化技術
1.4 将来動向
2.STN-LCD 松下明紀
2.1 はじめに
2.2 STNパネルとノートPC
2.3 CFL(冷陰極管)と高輝度化
2.4 多出力TCPドライバーとカラー化
2.5 ノートPC対応のカラーSTN
2.6 軽薄短小化,低消費電力化
2.7 高解像度・大画面対応と駆動方法の見直し
2.8 応答時間の高速化
2.9 STN液晶モジュールの現状
2.10 STN液晶のメリット・デメリットと課題
4章 ハードディスク装置の小型・軽量・高密度化と材料 城石芳博
1.はじめに
2.HDDの位置付け
2.1 構成と動作原理
2.2 HDDの動作原理
3.高密度化技術
3.1 磁気記録媒体技術
3.2 磁気ヘッド技術
4.小型・軽量・高耐衝撃性・低消費電力化技術
4.1 小型・軽量化と材料
4.2 高耐衝撃性・低消費電力化と材料
4.3 さらなる小型化に向けて
5.今後の磁気記録技術動向
5章 バッテリーの小型・軽量・長寿命化と材料 三戸敏嗣
1.はじめに
2.ノートパソコンにおける2次電池
2.1 新電池開発の要求
2.2 ノートパソコンにおける電池の設計
3.ノートパソコン用2次電池開発の経緯
3.1 NiMH電池からLi-Ion電池へ
3.2 Li-Ion電池の容量アップの経緯と展望
3.3 電極以外の部分の改良による軽量化
4.おわりに
6章 主回路基板(PCB)の小型・薄型・軽量化と材料 角井和久,前野善信,平野由和
1.はじめに
2.ノートPCの軽量化
3.小型化への取組み
3.1 使用部品(パッケージ)の小型化による軽量化
3.2 プリント板への要求
4.ノートPCにおけるプリント板テクノロジー
5.プリント板ユニット搭載部品の検討
6.冷却技術による小型・軽量化
7.まとめ
第IV編 最先端高密度実装技術と関連材料
1章 ビルドアップ配線板の開発と絶縁材料 入野哲朗
1.はじめに
2.ビルドアップ配線板の要求背景
3.高密度配線,小径化とIVH形成法
4.ビルドアップ配線板用絶縁材料
5.材料の位置付け
6.フォトビア用絶縁材料
6.1 感光性樹脂に要求される諸特性
6.2 フォトビア製造プロセス(フィルムタイプ適用)
7.レーザビア用絶縁材料(銅箔付き接着フィルム)
7.1 MCF-6000Eの開発コンセプト
7.2 MCF-6000E使用ビルドアップ配線板の特性
8.今後の課題
2章 CSPの開発とパッケージ材料 石田芳弘
1.CSPの構造と特徴
2.CSPの開発
2.1 高密度配線基盤の開発
2.2 パッケージデザイン
2.3 パッケージ製造プロセス
2.4 CSP用材料
3章 CSP実装の方法と実装材料 萩本英二
1.はじめに
2.実装方法と実装条件
2.1 温度設定
2.2 温度プロファイル
2.3 予備はんだ
2.4 CSPの基板上のレイアウト
2.5 修理
3.実装材料
3.1 はんだ材料
3.2 アンダーフィル材料
4.実装基板
5.まとめ
4章 マルチチップモジュール(MCM)と材料 角井和久
1.はじめに
2.MCM技術
2.1 ソルダーレスフリップチップ実装技術
2.2 フリップチップ実装技術の必要性
2.3 フリップチップ実装における課題
2.4 フリップチップ実装
3.MCMの製品化
4.信頼性評価
4.1 接合部における電気特性
4.2 信頼性評価結果
5.まとめ
目次
第1編 総論 パソコンの小型・薄型・軽量化の現状と展望(小型・薄型・軽量化のためのシステム設計;小型・薄型・軽量化のための高密度実装技術)
第2編 ノート型・モバイル型パソコンの小型・薄型・軽量化技術(ノート型・モバイル型パソコンの小型・薄型・軽量化の動向;「カシオペア」の小型・薄型・軽量化技術)
第3編 構成部品・部材の小型・薄型・軽量化技術(ハウジングの軽量化と材料開発・薄肉成形法;ハウジングの電磁波シールド ほか)
第4編 最先端高密度実装技術と関連材料(ビルドアップ配線板の開発と絶縁材料;CSPの開発とパッケージ材料 ほか)
著者等紹介
大塚寛治[オオツカカンジ]
明星大学情報学部教授
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。