出版社内容情報
(1999年『動物忌避剤の開発と応用』普及版)
【刊行にあたって】
動物忌避剤は古くて新しいテーマである。その開発と応用は蚊よけ,虫よけ,ゴキブリよけ,生ごみの鳥,駅舎や神社仏閣の鳩,農作物の被害などを防ぐための鳥よけ,山林田畑を被害から護るための猪,狸,狐,猿,鹿よけ,ゴルフ場モグラ被害防止など,長年に渉って研究開発が行われているが未だに解決されていない。
一方で犬よけ剤と盲導犬の問題,駆虫剤の人間に対する影響なども大きなテーマで,第二次世界大戦中に開発されたDDTは殺虫剤として著効を示したが人間に被害を与えたことや,農作物の生産に効果をあげた農薬が食物に好ましくない影響を示した例などもよく知られている。
動物忌避剤は人間と動物が共存する地球上で過去現在未来に渉る大きなテーマであり,最近は電子機器に対する動物被害が問題になっており,農作物の育成には酸素の少ない水を用いて虫害を防止する実験なども行われている。
1999年に出版された『動物忌避剤の開発と応用』は広範なテーマを古くからある伝承を考え,新しい応用開発を紹介し,人間の生活に都合の悪い動物を排除するのみではなく,人間と動物が共存していく考えを基本として纏めたもので,良い評価を得ている。普及版が動物忌避剤を考えられる方々のご参考になることを期待している。
2004年12月 赤 松 清
【執筆者一覧(執筆順)】
赤松 清 日本産業開発(株) 技術顧問
藤井 昭治 福井工業大学 工学部 教授/農学博士
(現) ソイル微研(株) 技術顧問/京都府立大学名誉教授
林 晃史 (元) 千葉県衛生研究所 次長
東京医科歯科大学 医学部 非常勤講師/農学博士/医学博士
冨岡 敏一 松下電器産業(株) 生活環境システム開発センター/工学博士
(現) 松下電器産業(株) くらし環境開発センター 主幹技師
渡邉 弘司 大阪化成(株) 開発センター 開発センター長/理事
(現) 大阪化成(株) 技術顧問
藤原 有仁 大日本インキ化学工業(株) バイオ技術本部
藤井 卓 大日本インキ化学工業(株) バイオ技術本部 主席研究員
増井 正明 大日本インキ化学工業(株) バイオ技術本部 本部長
林 陽 関西脂質研究所 所長/近畿大学名誉教授
谷川 力 イカリ消毒(株) 技術研究所 所長/獣医学博士
白井 英男 イカリ消毒(株) 薬品事業本部 係長
江藤 諮 イカリ消毒(株) CLT研究所 所長
(現) イカリ消毒(株) 技術統括部 部長
南手 良裕 大日本除虫菊(株) 技術管理室 室長
藤井 直 日本産業開発(株) 代表取締役社長
結城 太郎 日本化薬(株) 化学品事業本部 精密化学部品事業部 主事
中根 史雄 (株)エス・ディー・エス バイオテック 営業本部 特品部
(執筆者の所属は,注記以外は1999年当時のものです。)
【構成および内容】
第1章 総 論 赤松 清
1.はじめに
2.動植物の自衛と共生
3.忌避剤
4.忌避剤の担体および加工
5.忌避剤使用の影響
6.動物の忌避システム
7.動物忌避行動の伝承
第2章 植物の防御反応とそれに対応する動物の反応 藤井昭治
1.はじめに
1.1 化学構造について
1.2 引用文献について
1.3 定義について
2.植物の生体防御のための化学物質
2.1 植物表層における高分子化学物質による侵襲抵抗(量的防御)
2.2 植物中における化学物質の存在・偏差
2.3 低分子毒性物質の動物に対する作用の違い(質的防御)
3.植物の生体防御のための高分子物質
3.1 プロティナーゼインヒビター
3.2 チオニン
3.3 毒性蛋白質
3.4 アミラーゼインヒビター
4.植物の生体防御のための動的防御機構
4.1 Elicitorについて
4.2 エリシターにより誘導されるファイトアレキシンについて
4.3 エリシターによる生体防御関連遺伝子の発現制御
5.植物の防御反応に対する動物側の適応
5.1 物理的防御手段(1)に対する対抗
5.2 化学的防御手段(2)に対する対抗
(2)-1 植物表層の酵素分解
(2)-2 毒性物質に対する動物側の対応
(2)-2-1 毒性物質の無害化(脱メチル)
(2)-2-2 毒性物質の回避方式
(2)-3-1 ファイトアレキシン生成を阻害するサプレッサー方式
(2)-2-3 毒性物質の分解能力強化(積極的対応)
(2)-2-4 グリシン方式
(2)-2-5 その他の方式
(2)-2-6 毒性物質転用方式
(2)-2-7 ステロイド骨格利用方式
(2)-3-2 ファイトアレキシン生成を物理的に阻害する方式
6.植物間の情報伝達
7.植物の誘引
8.おわりに
第3章 忌避剤,侵入防御システム 林 晃史
1.忌避剤の歴史
2.忌避剤とは何か
3.化学的忌避剤
4.天然忌避剤
4.1 期待される香油植物
4.2 樹木の精油成分の生理活性
5.合成忌避剤
6.合成忌避剤の混合剤
7.忌避剤DET製剤の効果
8.忌避剤の作用機構
9.4忌避剤の製剤と使用場面
第4章 動物侵入防御システム
1.害虫忌避処理技術
-家電製品への接触型忌避剤の応用- 冨岡敏一
1.1 はじめに
1.2 虫の侵入によるトラブル原因解析
1.2.1 機器の小型化による放熱構造の変化
1.2.2 機器内温度の最適化による虫の営巣化
1.2.3 機器の高性能化と害虫の影響
1.2.4 その他の現象
1.3 家電製品から見た防虫対策への要求項目
1.4 接触型忌避技術の開発
1.4.1 各種忌避技術
1.4.2 忌避剤と殺虫剤
1.4.3 忌避剤を用いた防虫
1.5 応用技術確立例
1.5.1 防虫塗料
1.5.2 防虫テープ
1.5.3 防虫回路基板
1.6 今後の課題
2.繊維への防ダニ加工 渡邉弘司
2.1 はじめに
2.2 繊維加工用防ダニ剤ニーズの背景
2.3 ダニとアレルギー
2.4 ダニアレルゲンの性状
2.5 屋内に生息するダニ
2.6 チリダニ類2種のプロフィール
2.7 繊維加工用防ダニ剤
2.8 繊維加工用防ダニ剤のダニに対する効力評価方法
2.9 殺ダニ試験と忌避試験について
2.10 殺ダニ効力と忌避効力について
2.11 ヤケヒョウヒダニに対する忌避性と誘引性について
2.12 繊維加工用防ダニ剤
2.13 繊維加工用防ダニ剤各論
2.14 防ダニ加工製品と加工方法
2.14.1 寝装寝具類
2.14.2 カーペット
2.15 防ダニ加工製品に関する業界の自主基準について
3.線虫の新防除システム 藤原有仁,藤井 卓,増井正明
3.1 はじめに
3.2 脱酸素水と既存殺線虫剤の比較
3.3 脱酸素水の大量調整と灌水
3.3.1 脱酸素水製造装置
3.3.2 脱酸素水の灌水
3.4 農業分野への応用例
3.4.1 サツマイモネコブセンチュウに対する脱酸素水の影響
3.4.2 線虫寄生の抑制(抑制栽培キュウリでの試験)
3.4.3 線虫害からの回復-1(抑制栽培キュウリでの試験)
3.4.4 線虫害からの回復-2(促成栽培キュウリでの試験)
3.4.5 脱酸素水処理が収穫物の品質に及ぼす影響(半促成メロン)
3.4.6 まとめ
3.5 おわりに
第5章 忌避剤に関する最近の特許公開公報 赤松 清
第6章 文献に見る動物忌避剤の開発と研究 林 陽
1.はじめに
2.脊椎動物
2.1 ほ乳類
2.2 鳥類
2.3 魚類
3.節足動物
3.1 ダニ類
3.2 昆虫類
4.軟体動物と扁形動物
5.忌避剤の安全性と毒性について
6.軍隊における忌避剤の使用について
第7章 市販されている忌避剤商品
1.各動物に対する防除方法と忌避剤 谷川 力,白井英男,江藤 諮
1.1 はじめに
1.2 防除方法の基本的考え方
1.3 忌避剤使用の注意点
1.4 ネズミ
1.5 ネコ
1.6 ハト
1.7 カラス
1.8 モグラ
1.9 コウモリ
1.10 その他
2.昆虫の忌避システム,殺虫剤 南手良裕
2.1 忌避剤と殺虫剤
(1)忌避剤
(2)殺虫剤
2.2 忌避剤と昆虫の忌避システム
(1)忌避剤の有効成分
(2)蚊の生態と忌避システム
2.3 殺虫剤とその忌避作用
(1)殺虫剤の有効成分
(2)ピレスロイド
(3)殺虫剤の忌避作用
2.4 殺虫・忌避剤の開発
3.天然の動物忌避剤を用いた無公害の動物防御 藤井 直
3.1 はじめに
3.2 天然忌避剤
(1)薄荷
(2)樟脳
(3)柿渋
(4)唐辛子
(5)カラシ
(6)ワサビ
(7)木酢
(8)ユーカリ油
(9)除虫菊
3.3 忌避剤,吸着剤,担体
3.4 動物への実用とその効果
3.5 猪による農産物被害防御の忌避剤
3.6 鹿による森林被害防御の忌避剤
3.7 もぐら,穴熊用の忌避剤
3.8 鳥用の忌避剤
3.9 猫,犬の忌避剤
3.10 おわりに
4.ネズミの忌避剤<R-731> 結城太郎
4.1 はじめに
4.2 動物忌避剤R-731の特徴
(1)(R-731)の概要
(2)(R-731)の忌避効力
(3)(R-731)の安全性
4.3 R-731の電線への応用
(1)電線でのR-731の効力
(2)R-731の加工安定性
(3)R-731の長期安定性
(4)R-731関連製品
4.4 おわりに
5.徐放性マイクロカプセル化防虫剤<ディートMC> 中根史雄
5.1 はじめに
5.2 徐放性ディートMCの目的
5.3 ディートMCの特徴
5.4 ディートMCの忌避効果と安全性
5.5 ディートMCの利用と今後の展開
目次
第1章 総論
第2章 植物の防御反応とそれに対応する動物の反応
第3章 忌避剤、侵入防御システム
第4章 動物侵入防御システム
第5章 忌避剤に関する最近の特許公開公報
第6章 文献に見る動物忌避剤の開発と研究
第7章 市販されている忌避剤商品
著者等紹介
赤松清[アカマツキヨシ]
日本産業開発(株)技術顧問
藤井昭治[フジイアキハル]
福井工業大学工学部教授/農学博士。(現)ソイル微研(株)技術顧問/京都府立大学名誉教授
林陽[ハヤシアキラ]
関西脂質研究所所長/近畿大学名誉教授
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
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