出版社内容情報
(1999年『ディジタルハードコピー技術と材料-最新の電子写真技術とその材料』普及版)
【刊行にあたって】
電気信号に変換された情報が「ディジタル化」されることは普遍的情報となることを意味する。すなわち音,画像,映像,文字,パターンなど全ての情報が,電気信号となりディジタル化されると同一次元のデータとなり,これら全てのデータ(メディアといってもよい)が1枚のCD-ROMに入ってしまう。このようにディジタル化により情報は,ボーダレス化し,時間と場所の制約がなくなり,誰でもこの情報に接することが可能になったことを意味する。
この情報のディジタル化とハードコピー技術が結びついたものがディジタルハードコピー技術でありその全体像は,DTPまたはプリプレスの概念で示されるディジタル情報作成分野と印刷を含めた全てのハードコピー出力技術が,ディジタルデータで結ばれた形になっている。出力されるハードコピーのほとんどは,グーテンベルグ以来の粘性インキによる印刷技術と粉体インキを用いる電子写真技術と水性インクを用いるインクジェット技術で現在まかなわれている。この中でパーソナル分野からオフィス/ビジネス分野,産業/生産分野まで幅広く使われている技術は,レーザプリンタに代表される電子写真技術であり,発明以来約65年がたち成熟技術となっている。しかし,粉体インキングシステム特有の現像・転写に起因する画像の不安定性などシステムの安定性,信頼性については,依然として問題が残っている。21世紀も広い分野で電子写真技術が使われていくためには,コスト,信頼性,画質,速度,環境負荷などの面での新しい形での対応が必須であり,多くのやるべきことがまったなしとなっている。カールソンシステムでのブレークスルーを含めて,これらの問題解決のキイテクノロジーは,新しい機能・性能を持った材料および材料技術である。
1999年に刊行された初版『ディジタルハードコピー技術と材料-最新の電子写真技術とその材料』はそのような意味から企画はタイムリーなものであった。当時の最新の情報が盛り込まれており現在もその有益性,位置付けは変わっていない。今回の普及版はオンデマンド印刷として印刷分野への進展が著しい電子写真技術を材料を含めて理解するには手頃な本でありプリンタ分野,印刷分野などの研究開発者はもとより利用者,営業関係の人々にも有益な情報を提供する出版物になっていると考えている。
2004年12月 監修者を代表して 東海大学名誉教授 髙橋 恭 介
【執筆者一覧(執筆順)】
髙橋 恭介 東海大学 工学部 光学工学科 教授
(現) 東海大学名誉教授
北村 孝司 千葉大学 工学部 情報画像工学科 教授
片岡 慶二 日立工機(株) 勝田研究所 主任研究員
(現) 日立プリンティングソリューションズ(株) 開発センタ 主管研究員
中村 幸夫 沖電気工業(株) 研究開発本部 半導体技術研究所
(現) (株)沖デジタルイメージング 技術第1部 部長
臨 護 三菱化学(株) 横浜総合研究所 光電研究所 主任研究員
中山 喜萬 大阪府立大学 大学院工学研究科 教授
中山 隆雄 富士写真フイルム(株) 吉田南工場 研究部 主任研究員
(現) 東海大学 理学部化学科 教授
中村 馨 (株)リコー 化成品事業本部 RS事業部 第2生産技術部 部長
(現) リコーエンジニアリング(株) 沼津事業部 常務取締役
渡邉 眞 静岡県技術アドバイザー
小口 寿彦 東芝ケミカル(株) 成形材料技術部 主幹
辻 伸行 キャボット・スペシャルティ・ケミカルズ・インク トナービジネス・ユニット テクニカルマネージャー
丸田 將幸 花王(株) 化学品研究所 第5研究室 室長
(現) 花王(株) 情報材料事業部 技術部長
大谷 伸二 保土谷化学工業(株) 筑波研究所 研究・開発第3グループ チームリーダー
(現) (株)リコー 画像技術開発本部 NT-PG
佐藤 祐二 パウダーテック(株) 技術部 次長
(現) パウダーテック(株) キャリア事業部 製造部 部長
板谷 正彦 (株)リコー 画像技術開発本部 V-TF サブプロデューサー
加藤 勝 王子製紙(株) 情報用紙開発研究所 上級研究員
青木 尚三 住友スリーエム(株) 技術本部 開発部 室長
鵜家 邦良 グンゼ(株) 研究開発部 第二研究室 室長
山下恵太郎 日立金属機工(株) ES部長
石川 陽一 日東工業(株) 技術統括部 技術開発センター 主任研究員
(現) 日東工業(株) 名古屋営業所 課長
加藤 猛 日東工業(株) 技術統括部 技術開発センター
(現) 日東工業(株) 技術開発センター 主任研究員
(執筆者の所属は,注記以外は1999年当時のものです。)
【構成および内容】
第1章 総 論
1.ディジタルハードコピー 高橋恭介
1.1 「ディジタル」のインパクト
1.2 「ディジタル化」とハードコピー技術
1.3 ハードコピー技術と市場ニーズ
1.4 インキングシステムから見た各技術のポテンシャル
1.5 今後の課題
2.最近の電子写真技術のトピックス 北村孝司
2.1 はじめに
2.2 有機感光体
2.3 現像剤
2.4 ディジタルカラー複写機およびデスクトップカラープリンター
2.5 オンデマンド/ショートランカラー印刷
2.6 まとめ
第2章 書き込み光源とその使い方
1.レーザ書き込み光源 片岡慶二
1.1 プリンタ仕様と光学系仕様
1.2 ガウスビームの特性
1.3 レーザ光源
(1)気体レーザ
(2)半導体レーザ
1.4 マルチビーム走査光学系
(1)走査方法
(2)マルチビーム素子
2.LED書込み光源 中村幸夫
2.1 はじめに
2.2 LEDヘッド構造
2.3 高密度化技術
2.4 高発光効率化技術
2.5 まとめ
第3章 感光体=フォトレセプタ
1.OPC感光体 北村孝司
1.1 はじめに
1.2 感光体の特徴
1.3 感光体の光電物性
1.4 感光体の研究動向
2.OPC感光体用ケミカルス 臨 護
2.1 CGM (Carrier Generation Material)
2.1.1 アゾ顔料
2.1.2 フタロシアニン顔料
2.1.3 その他のCGM
2.2 CTM (Carrier Transport Material)
2.2.1 ヒドラゾン系CTM
2.2.2 アリールアミン系CTM
2.2.3 スチルベン,ブタジエン系CTM
2.3 バインダポリマー
3.無機感光体~セレン系感光体およびシリコン感光体~ 中山喜萬
3.1 はじめに
3.2 セレン系感光体
3.3 シリコン感光体
3.3.1 アモルファスシリコンの感光体としての物性
3.3.2 アモルファスシリコンのバンドギャップ制御
3.3.3 シリコン感光体の製作
3.3.4 シリコン感光体の構造
3.3.5 シリコン感光体の安定性
3.4 まとめ
4.ZnO感光体etc. 中山隆雄
4.1 はじめに
4.2 ZnOオフセット印刷用感光体
4.3 電子社員製版とZnO
4.4 CTPシステム
5.感光体用基体と加工法 中村 馨
5.1 はじめに
5.2 有機感光体用基体材料特性
(1)電気的特性
(2)光学的特性
(3)その他考慮する点
5.3 感光体ベルトの加工法
(1)ニッケルベルトの加工法
(2)ニッケルベルトの品質管理
6.観光ドラム素管の加工法 渡邉 眞
6.1 素管加工法の概要
6.1.1 素管加工法の沿革
6.1.2 素管特性と加工法
6.2 引抜管-切削法の事例
6.2.1 工程概要
6.2.2 引抜管-切削法の留意点
6.3 電縫管-絞り・しごき法の事例
6.3.1 工程概要
6.3.2 ERW-DI法の留意点
第4章 トナーおよび現像剤
1.トナー技術の動向 小口寿彦
1.1 はじめに
1.2 電子写真プロセスの改良に対応したトナー技術動向
1.2.1 現象プロセス
1.2.2 転写プロセス
1.2.3 定着プロセス
1.2.4 クリーニングプロセス
1.3 諸特性改良のためのトナー技術・トナー材料の動向
1.3.1 帯電特性
1.3.2 トナーの付着力
1.3.3 定着特性
1.3.4 クリーニング特性
1.3.5 トナーの耐久性
1.3.6 高精細特性
1.3.7 カラートナー
1.3.8 トナーの消費特性
1.4 液体現像剤
1.5 新規デジタルプリンター用トナー
1.6 まとめ
2.カーボンブラック 辻 伸行
2.1 はじめに
2.2 カーボンブラックの構造と製造方法
2.2.1 カーボンブラックの構造
2.2.2 カーボンブラックの製造方法
2.3 トナー用着色剤としての必要特性
2.3.1 着色性
2.3.2 電気特性
2.3.3 分散性
2.3.4 生体に対する安全性
2.4 最近の動向
2.5 おわりに
3.色材 丸田將幸
3.1 電子写真の色再現
3.2 カラートナー用色材の技術動向
4.バインダー 丸田將幸
4.1 バインダー樹脂の構造と特徴
4.2 樹脂への要求特性とその設計
4.2.1 樹脂の設計とトナーの定着性
4.2.2 樹脂の設計とトナーの保存性
4.2.3 樹脂の設計とトナーの帯電性
4.2.4 樹脂の設計とトナーの耐久性
4.3 カラートナー用樹脂
4.4 まとめ
5.電荷制御剤(Charge Control Agent) 大谷伸二
5.1 はじめに
5.2 機能とその応用
5.2.1 CCAの機能
5.2.2 トナーにおける電荷制御剤の応用
5.3 CCA特性評価
5.3.1 帯電評価法
5.3.2 物性評価法
5.4 化学構造からみた帯電制御剤
5.4.1 最近の特許からみたCCA研究開発動向
5.4.2 代表的な市販CCAの構造
5.5 電荷制御材の開発状況
5.5.1 CCAの市場動向
5.5.2 CCAの開発動向
6.外添剤とその機能 小口寿彦
6.1 はじめに
6.2 外添剤および物理・化学的特性
6.2.1 外添剤の帯電性
6.2.2 外添剤の表面改質
6.3 トナー付着力への影響
6.4 トナー流動性への影響
6.5 トナー帯電性への影響
7.キャリア 佐藤祐二
7.1 はじめに
7.2 キャリアの変遷
7.3 磁性キャリアの種類と製造フローシート
7.3.1 鉄粉系キャリア
7.3.2 フェライト系キャリア
7.3.3 マグネタイトキャリア
7.3.4 複合系キャリア
7.3.5 樹脂コートキャリア
7.4 各種キャリアの基本特性と画像の関係
7.5 キャリアの現状と問題点
7.6 キャリアの今後の方向性
7.7 おわりに
8.液体現像プロセスと液体現像剤 板谷正彦
8.1 はじめに
8.2 液体現像法の概要
8.2.1 液体現像プロセスの概要
8.2.2 液体現像剤の構成
8.2.3 液体現像剤の物理的側面
8.2.4 液体現像剤の物性に関する測定
8.3 液体現像プロセスの概要
8.3.1 液体現像のメカニズム
8.3.2 液体現像のための装置
8.3.3 液体現像剤を用いた新しいプリントシステム
8.4 今後の液体現像プロセス
8.5 おわりに
第5章 トナー転写媒体
1.転写用紙 加藤 勝
1.1 はじめに
1.2 転写用紙への要求品質
1.3 転写用紙の基本物性
1.4 構成材料
1.5 要求品質と用紙物性,材料
1.5.1 画像特性
1.5.2 トナー転写性
1.5.3 トナー定着性
1.5.4 用紙カール
1.5.5 用紙保存性
1.6 まとめ
2.OHP用フィルム 青木尚三
2.1 緒言-OHPフィルムをめぐる状況
2.1.2 市場状況
2.1.2 基本的フィルム特性
2.1.3 サプライチャンネル
2.2 カラー電子写真用OHPフィルム設計の基礎
2.2.1 OHPフィルムの要求特性
2.2.2 色透過性-トナーの埋め込み
2.2.3 色透過性-密着/レンズ理論
2.2.4 色透明性の評価方法
2.2.5 トナー/受像層界面
2.2.6 トナー表面
2.2.7 他の不透明要素
2.3 色透明性以外の要求項目
2.3.1 バックグラウンドヘ ーズ
2.3.2 通紙性と粒子
2.3.3 PET厚
2.3.4 表面電気抵抗
2.3.5 バックコーティング
2.3.6 ブロッキング
2.3.7 環境,リサイクル
2.3.8 両面コート
2.3.9 オイル対策
2.4 今後の動向
2.4.1 ニュートナー動向と対策
2.4.2 高速定着
2.5 終言
3.中間転写媒体 鵜家邦良
3.1 はじめに
3.2 中間転写の機構とメカニズム
3.3 中間転写媒体用プラスチック素材について
3.4 各種ベルトの製法概要
3.5 押出法ベルト
3.5.1 ポリカーボネート樹脂製ベルト
3.5.2 フッ素系樹脂ベルト(ETFE樹脂ベルトを中心に)
3.6 熱硬化樹脂ベルト(PI系樹脂ベルト)
3.7 今後の技術動向
第6章 ブレード,ローラ類
1.マグネットロール 山下恵太郎
1.1 はじめに
1.2 マグルットロールの構造と役割
1.3 磁性現像剤との関わり
1.4 高速化と現像性の確保
1.4.1 現像剤の搬送速度を増加すること
1.4.2 現像ニップ幅を広げること
1.4.3 現像剤装置 薄くすること
1.5 スリーブの高性能化
1.5.1 耐摩耗性の向上
1.5.2 現像剤との適切な摩擦力の確保
1.5.3 電気的機能への配慮
1.6 磁力パターンの設計
1.7 今後の展望
2.カラー用ベルト定着装置技術 石川陽一,加藤 猛
2.1 はじめに
2.2 従来のローラ定着装置の使用と問題点
2.3 メルト定着の説明
2.3.1 メルト定着装置の概要と特徴
2.3.2 構成部品と使用
2.3.3 問題点
2.3.4 改善案
2.3.5 メルト定着装置の改良
2.4 メルト定着装置試験
2.4.1 通紙時の温度特性
2.4.2 定着性評価
2.4.3 ガイド板位置設定
2.5 オイル湿布
2.5.1 多孔質オイル湿布ローラの紹介
2.5.2 オイル湿布データ
2.6 今後の課題と展開
目次
第1章 総論
第2章 書き込み光源とその使い方
第3章 感光体
第4章 トナーおよび現像剤
第5章 トナー転写媒体
第6章 ブレード、ローラ類
著者等紹介
高橋恭介[タカハシヤススケ]
東海大学工学部光学工学科教授。(現)東海大学名誉教授
北村孝司[キタムラタカシ]
千葉大学工学部情報画像工学科教授
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。