出版社内容情報
（1998年『石油製品添加剤の開発と最新技術』普及版）
【刊行にあたって】
石油製品は石油の分留で得られ，ガソリン，ナフサ，灯油，軽油，重油などからなる。しかし社会の変遷や発達につれて製品は多様化し，その需要量も暫時変化し続けている。これを満足させるために，また価格を安価に保つべく石油自体を有効に活用する目的で，石油留分の相互転化が一般に行われている。一方で製品をより安定化し，機能化するために，添加剤が開発され，使用されている。
従来石油製品の添加剤といえば，潤滑油や燃料油の一部などに使用されているが，内燃機関用潤滑油のようにその交換を今以上に長らえかつ製品の劣化現象を徐々に進行させて潤滑油交換の目安を確実なものとしたり，また製品の相互転化の結果として得られる，例えばオレフィンをかなり含む石油製品を安定化させる必要もあり，これを完全に満足させる添加剤系が開発されているわけではない。一方で添加剤による大気汚染の防止などの環境問題が取りざたされるようになり，例えば無金属添加剤の開発など新しい課題が生じてきた。まだまだ添加剤の新規開発や改良を押しすすめなければならない。
この点に関し，1998年３月に発行された『石油製品添加剤の開発と最新技術』は未来を見据えた内容が盛り込まれており，本普及版ではその内容が改訂されているわけではないが，その多くは現在においても通用する内容となっている。この普及版の発刊により，多くの研究者が石油製品添加剤の歴史的流れや基礎を把握し，さらにはその後の技術的進歩を確認する目的で座右の書として活用していただけるものと思っている。
工学院大学 工学部 大勝靖一
【執筆者一覧（執筆順）】
岡部平八郎 東京工業大学 名誉教授
大勝 靖一 （現）工学院大学 工学部 応用化学科 教授
五十嵐仁一 日本石油（株） 中央技術研究所
（現）新日本石油（株） 潤滑油研究所
尾山 宏次 日本石油（株） 中央技術研究所
（現）新日本石油（株） 中央技術研究所
廣富 登 オロナイト ジャパン（株） テクノロジーセンター
友田 好昭 オロナイト ジャパン（株） テクノロジーセンター 燃料研究室
八並 憲治 エチル・ジャパン（株）
広中清一郎 東京工業大学 工学部
（現）東京都立科学技術大学 工学部 機械システム工学科 教授
渡邉 治道 日本石油（株） 中央技術研究所
（現）新日石テクノロジー（株） 常務取締役／工学博士
南 一郎 高知工科大学 物質・環境システム工学科
（現）岩手大学 工学部 応用化学科 助教授
益子 正文 東京工業大学 工学部 化学工学科
（現）東京工業大学 大学院理工学研究科 化学工学専攻 教授
松尾 浩平 （株）ジャパンエナジー 商品開発研究所
（現）住鉱潤滑剤（株） 三重工場 技師長
大野 信義 （現）佐賀大学 理工学部 機械システム工学科 教授
三浦 太裕 ダウコーニングアジア（株） 化成品事業部 技術課
（現）ダウコーニングアジア（株） 機能性材料事業部 PICA・消泡剤技術グループ
主席研究員／マネージャー
渡辺 誠一 (社)潤滑油協会 潤滑油中央技術研究所
（執筆者の所属は，注記以外は1998年当時のものです。）
【構成および内容】
I 技 術 編
１． 石油製品と添加剤 岡部平八郎
１．１ はじめに
１．２ 石油製品の高級化（付加価値化）と添加剤技術
１．３ 石油製品添加剤の使用目的（１）：流動性向上
１．４ 石油製品添加剤の使用目的（２）：劣化防止
１．５ 石油製品添加剤の使用目的（３）：界面活性と吸着膜効果
１．６ 添加剤開発の技術的問題点
２． 酸化防止剤
２．１ フェノール系酸化防止剤 大勝靖一
（１）はじめに
（２）劣化と自働酸化
（３）フェノール系酸化防止剤の機能の既述
（４）フェノール系酸化防止剤の評価方法
（５）フェノール系酸化防止剤の反応
（６）フェノール系酸化防止剤の考え方
（７）おわりに
２．２ 硫黄系酸化防止剤 五十嵐仁一
（１）はじめに
（２）スルフィド型硫黄系酸化防止剤
（３）ジアルキルジチオリン酸亜鉛
（４）ジアルキルジチオリン酸亜鉛添加油の最適芳香族性
（５）おわりに
３．オクタン価向上剤 尾山宏次
３．１ はじめに
３．２ ノッキング現象と自己着火
３．３ オクタン価向上剤
（１）アルキル鉛
（２）MMT（Methylcyclopentadienyl Manganese Tricarbonyl）
（３）含酸素化合物
３．４ おわりに
４．清浄剤
４．１ 燃料油清浄剤 廣富 登，友田好昭
（１）はじめに
（２）歴史
（３）洗浄剤の種類と化学構造
（４）性能評価
（５）DC添加剤による有害排出ガスの悪化防止
（６）おわりに
４．２ 清浄分散剤 八並憲治
（１）はじめに
（２）洗浄分散剤の種類および化学構造
（３）洗浄分散剤の実用性能
（４）おわりに
５．金属不活性化剤 広中清一郎
５．１ 金属不活性化剤とは
５．２ 金属の触媒作用による油の酸化促進
５．３ 金属表面の不活性化
５．４ 金属の腐食防止
５．５ 金属不活性化剤の分類
５．６ おわりに
６．さび止め添加剤 渡邉治道
６．１ さび止め添加剤の分類
６．２ 燃料・潤滑油用さび止め添加剤
６．３ さび止め剤用さび止め添加剤
（１）造膜剤
（２）さび止め添加剤
７．粘度指数向上剤－オレフィンコポリマー－ 南 一郎
７．１ 液体の粘度と粘度指数
７．２ 粘度指数向上剤
（１）粘度指数向上剤の背景
（２）粘度指数向上剤の適応例
（３）粘度指数向上剤の評価
（４）粘度指数向上剤の種類
（５）粘度指数向上剤の機構
７．３ オレフィンコポリマー
（１）分子構造
（２）オレフィンコポリマーの特徴
（３）多機能粘度指数向上剤
７．４ 新しい粘度指数向上剤の設計
（１）材料設計の方向性
（２）添加剤の設計
８．極圧剤
８．１ モリブデン系 益子正文
（１）はじめに
（２）油溶性モリブデン化合物摩擦低減作用
（３）油溶性モリブデン化合物摩擦低減機構
（４）油溶性モリブデン化合物生成される表面被膜
（５）油溶性モリブデン化合物他の添加剤との共存の影響
（６）MoDTP，MoDTC以外の油溶性モリブデン化合物
８．２ 硫黄系およびりん系 松尾浩平
（１）境界潤滑と極圧添加剤との関係
（２）極圧添加剤の反応性と耐荷重性および耐摩耗性との関係
（３）硫黄系極圧添加剤
（４）りん系極圧添加剤
（５）硫黄－りん（複合）極圧添加剤
９．流動点降下剤 大野信義
９．１ はじめに
９．２ 低温および高圧下の固化現象の観測装置
（１）低温下の観測方法
（２）高圧下の観測方法
９．３ n-パラフィンの固化現象
９．４ ナフテン系鉱油の固化現象
９．５ パラフィン系鉱油の固化現象
９．６ 流動点降下剤の種類と化学構造
９．７ 光弾性法による流動点降下剤の作用機構の可視化
（１）試料油
（２）可視化
９．８ おわりに
１０． 消泡剤 三浦太裕
１０．１ はじめに
１０．２ 泡の安定性
（１）表面粘性
（２）表面弾性
（３）ガス拡散
１０．３ 消泡の機構とシリコーン
（１）非極性溶媒での消泡
（２）シリコーン消泡剤の力価の向上
（３）シリコーン消泡剤の分散と消泡性
（４）軽油用消泡剤
（５）極性溶媒や水系での消泡
１０．４ おわりに
１１． 添加剤評価法 渡辺誠一
１１．１ はじめに
１１．２ 一般性状に対する効果の評価法
１１．３ 実用性能に対する効果の評価法
１１．４ 添加剤の安全性・環境適合性の評価法
（１）化審法に対する対応
（２）生分解性の評価法
（３）分配係数（生体蓄積性）の評価法
（４）生体毒性の評価法
（５）有害性の評価法
（６）変異原性の評価法
（７）その他の法規制に対する対応
II 製品編 シーエムシー編集部
１．添加剤の種類及びその機能
１．１ 潤滑油添加剤
（１）洗浄分散剤
（２）酸化防止剤
（３）粘度指数向上剤・流動点降下剤
（４）油性向上剤・極圧添加剤（EP剤）
（５）摩耗防止剤
（６）防錆・防食剤（さび止め剤）
１．２ グリース添加剤
（１）構造安定剤（改良剤）
（２）充填剤
１．３ 燃料油添加剤
内容説明
多くの研究者が石油製品添加剤の歴史的流れや基礎を把握し、さらにはその後の技術的進歩を確認する目的で座右の書。
目次
１ 技術編（石油製品と添加剤；酸化防止剤；オクタン価向上剤；清浄剤；金属不活性化剤；さび止め添加剤；粘度指数向上剤―オレフィンコポリマー ほか）
２ 製品編（添加剤の種類およびその機能）
著者等紹介
岡部平八郎［オカベヘイハチロウ］
東京工業大学名誉教授。故人
大勝靖一［オオカツヤスカズ］
現、工学院大学工学部応用化学科教授
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
