出版社内容情報
★食資源,医薬資源として注目される「きのこ」に関して,その機能性研究の最新動向を網羅!!
★現在商品化されているきのこ21種について,成分,生理作用,生産技術,安全性等を詳述!!
★第一線で活躍する産学官の研究者23名による分担執筆!!
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きのこは地球上に14万種あるという説がある。しかしながら,名前の付いているきのこは1万数千種に過ぎない。つまり,9割のきのこは名前もないのである。名前の付いているきのこでもその機能性研究が行われているものは数パーセントに過ぎない。従って,もし本当に14万種あるとしたら,研究されているものはきのこ全体の1パーセントにも満たない。すなわち,きのこは未開拓な食資源・医薬資源と言えるのである。そのような状況下で,きのこの機能性研究は確実に進んでいる。
現在,多くのきのこ由来の様々な形体の製品が,いわゆる「健康食品」として市場に出回っている。きのこ関連食品の販売総額は数百億円と言われる。しかし,残念なことに,科学的根拠も示さず,あるいは極めて曖昧な根拠で,あたかも万能の霊薬のごとく,販売されている例を新聞紙上の広告等で見受けられる。きのこの機能性を長年研究している私としては憂える現状に思われる。そして,正確な情報を発信することの必要性を痛感した。従って,本書は,いわゆる「健康食品」として実際に市場に出回っているきのこを網羅し,その生理活性,機能性の最新の研究を正確に紹介することに努めた。
第1編基礎編では,きのこ全般を様々な面から概観し,第2編素材編では,各々のきのこの生理活性・機能性を,実際にそのきのこの研究に携わっている研究者の方々にまとめていただいた。研究者だけではなく,きのこに携わっている多くの方々に読んでいただければ幸いである。
2005年10月 河岸洋和
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関谷敦 (独)森林総合研究所 きのこ・微生物研究領域 微生物工学研究室 室長
江口文陽 高崎健康福祉大学 健康福祉学部 教授
河岸洋和 静岡大学 農学部応用生物化学科 教授
石原光朗 (独)森林総合研究所 きのこ・微生物研究領域 研究領域長
福田正樹 信州大学 農学部 応用生命科学科 教授
宍戸和夫 東京工業大学大学院 生命理工学研究科 分子生命科学専攻 教授
中村友幸 (株)アイ・ビー・アイ 応用キノコ研究所 専務取締役 所長
松澤恒友 (社)長野県農村工業研究所 常務理事
稲冨聡 ホクト(株) きのこ総合研究所 開発研究室 室長
杉山公男 静岡大学 農学部 応用生物化学科 教授
水野雅史 神戸大学 農学部 教授
菅原冬樹 秋田県森林技術センター 資源利用部 きのこ担当 主任研究員
西井孝文 三重県科学技術振興センター 林業研究部 研究グループ 主任研究員
木村隆 ユニチカ(株) 中央研究所 グループ長
鈍宝宗彦 ユニチカ(株) 中央研究所 理事 プロジェクトリーダー
久保利之 (株)ツムラ 中央研究所 生薬・資源研究部 主査
奥山聡 University of Saskatchewan College of Pharmacy and Nutrition,postdoctoral fellow
横越英彦 静岡県立大学 食品栄養科学部 教授
庄邨 マイタケプロダクツ社 研究開発部 部長
松永謙一 呉羽化学工業(株) 生物医学研究所 副所長
野中裕司 サントリー(株) 健康科学研究所
増野和彦 長野県林業総合センター 特産部 主任研究員
金城典子 東京医科歯科大学 教養部 生物学教室
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目次
第1編 基礎編
第1章 きのこの種類と利用状況 (関谷敦)
1. きのことは
1.1 分類学上のきのこの位置づけ
1.2 生態系からのきのこの分類
2. きのこの利用方法
2.1 食用
2.2 薬用
2.3 健康食品
2.4 その他の利用方法
3. きのこの菌糸体培養,子実体生産技術
3.1 菌糸体と子実体の成分の違い
3.2 菌糸体培養
3.3 子実体生産
3.4 子実体収穫後の成分の変化
第2章 きのこの持つ機能(江口文陽)
1. はじめに
2. 興味深いきのこの機能性
3. 抗腫瘍活性
4. 血圧降下作用
5. 抗糖尿病効果
6. 抗高脂血効果
7. 認知症改善作用
8. その他疾患改善効果
9. 機能性成分を安定供給する栽培技術
10. きのこの適正利用とその機能
11. 機能効果を考慮した摂食量と調理に関する要点
第3章 きのこの安全性(毒きのこ)(河岸洋和)
1. はじめに
2. カキシメジの胃腸毒
3. ホテイシメジの悪酔い毒
4. スギヒラタケの致死性毒
第4章 きのこの可能性
1. 生理活性物質の生産(江口文陽)
1.1 生理活性物質としてきのこを正しく選択するための基礎知識
1.2 きのこは疾病の『予防と治療』に貢献できるのか
1.3 きのこの薬効成分の本体は何か
1.4 ベッドサイド医療へのきのこ生理活性成分の活用
1.5 生理活性物質の生産を行うための栽培ポイント
1.6 生産法と生理活性機能との関係
2. バイオマス変換技術(石原光朗)
2.1 はじめに
2.2 粗飼料化
2.3 きのこ栽培廃培地のセルロース,ヘミセルロースのエタノールへの変換
2.4 担子菌のリグニン分解酵素の利用技術の開発
第5章 新しい育種技術の動向
1. 遺伝資源と育種技術(福田正樹)
1.1 きのこの遺伝資源
1.1.1 遺伝資源の評価
1.1.2 遺伝資源の分布と変異
1.1.3 同一の自然腐朽木内に存在する野生株間の遺伝的関係
1.2 育種技術
1.2.1 育種目標
1.2.2 導入育種
1.2.3 交雑育種
1.2.4 突然変異育種
1.2.5 プロトプラストの利用
1.2.6 連鎖地図
1.2.7 細胞質の影響を考慮した育種
2. 遺伝子工学(宍戸和夫)
2.1 はじめに
2.2 未利用植物バイオマス資源の再利用
2.2.1 リグニン高分解性ネナガノヒトヨタケの作出
2.2.2 キシラン高分解性ネナガノヒトヨタケの作出
2.2.3 リグニンおよびキシラン高分解性ネナガノヒトヨタケによる稲ワラからの効率的セルロースの分取
2.3 リグニン分解酵素高生産性およびラット由来シトクロムP450,CYP1A1生産性アラゲカワラタケの作出とそれらによる芳香族有害塩素化合物の分解・無毒化
2.3.1 リグニン分解酵素高生産性アラゲカワラタケの作出とそれらによる芳香族有害塩素化合物の分解・無毒化
2.3.2 ラット由来シトクロムP450,CYP1A1生産性アラゲカワラタケの作出とそれらによるダイオキシンの分解・無毒化
2.4 おわりに
第6章 効能評価技術の動向 (江口文陽)
1. はじめに
2. 体験談として伝えられる評価法の問題点
3. 成分の安全性の判定
4. 成分の生体調節に関する評価(in vitro試験)
5. ヒトと類似した疾患モデル動物試験(in vivo試験)での機能性きのこの効能解析
6. ヒトによる機能解析
7. 機能性成分の生体組織への移行解析
第2編 素材編
第1章 カワリハラタケ(ヒメマツタケ,アガリクスブラゼイ,アガリクス) (中村友幸,河岸洋和)
1. はじめに
2. カワリハラタケとは
3. 子実体と菌糸体の一般成分
4. 抗アレルギー作用(ヒスタミン遊離抑制)に関して
5. 抗腫瘍活性に関して
6. 今後の方向性(菌糸体の利用を目指して)
7. おわりに
第2章 エノキタケ(松澤恒友)
1. はじめに
2. 子実体の抗腫瘍活性
2.1 熱水抽出物の抗腫瘍作用
2.2 抗腫瘍活性多糖体と作用機序
3. 菌糸体の抗腫瘍活性
4. 疫学研究
4.1 エノキタケ食とがん死亡に関する疫学調査
4.2 長野県の低がん死亡率と農作物(きのこ)との関連についての疫学研究
5. 臨床での実証
5.1 症例1:FEH-G単独経口投与
5.2 症例2:凍結手術とFEH-G経口投与の併用
6. おわりに
第3章 エリンギ(稲冨聡)
1. はじめに
2. エリンギの特徴
3. エリンギの成分
4. エリンギの機能性
4.1 抗高脂血症効果,肝障害予防効果,動脈硬化予防効果
4.2 便秘改善効果
4.3 IgA産生促進作用
4.4 ストレスによる皮膚機能低下改善効果
4.5 その他の機能性
5. おわりに
第4章 カバノアナタケ(中村友幸)
1. はじめに
2. カバノアナタケとは
3. 菌核と菌糸体の化学成分および安全性に関して
4. 抗HIV活性(HIV-1プロテアーゼ抑制作用)に関して
5. 抗酸化活性に関して
6. 抗腫瘍活性に関して
7. 今後の展望(菌糸体の培養法を中心に)
8. おわりに
第5章 シイタケ
1. エリタデニン(杉山公男)
1.1 エリタデニンとは?
1.2 エリタデニンの分布
1.3 血漿コレステロール低下作用
1.4 エリタデニンと脂肪肝
1.5 エリタデニンとリン脂質代謝
1.6 エリタデニンと脂肪酸代謝
1.7 血漿コレステロール低下作用の推定機構
1.8 エリタデニンのその他の生理作用
1.9 おわりに
2. レンチナン(水野雅史)
2.1 化学構造と性質
2.2 生理活性
2.3 腸管免疫
2.4 その他の生理活性
2.5 貯蔵条件とレンチナン含量
2.5.1 貯蔵温度
2.5.2 CA貯蔵
第6章 ブナシメジ(松澤恒友)
1. はじめに
2. 抗腫瘍作用
2.1 制がん作用
2.2 発がん予防作用
2.3 発がんプロモーション抑制効果
3. 抗酸化作用
3.1 ブナシメジ摂取マウス血漿の抗酸化活性
3.2 ブナシメジ摂取担がんマウス血漿の抗酸化活性
4. 抗アレルギー作用
5. 血流改善作用
6. おわりに
第7章 チョレイマイタケ(菅原冬樹)
1. はじめに
2. 主成分
3. 特性・機能
3.1 抗腫瘍活性
3.2 免疫増強効果
3.3 慢性疾患予防効果
3.4 肝炎改善効果
3.5 毛髪再生
3.6 抗菌活性
4. 安全性
5. 製造技術
5.1 日本での栽培技術
5.2 中国での栽培技術
6. 応用
第8章 ニンギョウタケ(杉山公男)
1. ニンギョウタケとは?
2. ニンギョウタケのコレステロール低下作用
3. ニンギョウタケに含まれる活性物質
4. グリフォリンの作用機構
5. グリフォリンとネオグリフォリンのその他の生理作用
第9章 ハタケシメジ(西井孝文)
1. はじめに
2. 主成分
3. 特性・機能
3.1 血圧降下作用
3.2 コレステロール低下作用
3.3 抗腫瘍効果
3.4 その他の効果
4. 安全性
5. 製造技術
5.1 空調ビン栽培
5.2 菌床埋め込みによる簡易栽培
5.3 菌床袋栽培
5.4 野外栽培
6. 応用
第10章 ハナビラタケ(木村隆,鈍宝宗彦)
1. はじめに
2. 主成分
3. 特性・機能
3.1 腫瘍増殖抑制作用
3.2 アレルギー症状改善作用
3.3 ヒトNK(Natural killer)細胞活性化作用
3.4 コラーゲン産生促進作用
3.5 美白作用
3.6 血糖値上昇抑制作用
3.7 血中コレステロール上昇抑制作用
3.8 血圧上昇抑制作用
3.9 抗酸化活性
4. 安全性
5. 栽培技術
6. 応用
第11章 ヒラタケ(河岸洋和)
1. はじめに
2. 摂食抑制物質
3. 抗腫瘍性多糖
4. コレステロール低下作用
5. その他の機能性
第12章 ブクリョウ(久保利之)
1. はじめに
2. 菌学的な特性
2.1 学名について
2.2 子実体の形成
2.3 菌糸の特徴
2.4 野生菌核の産出状態
2.5 木材腐朽菌の分類
3. 栽培方法および生産技術
4. 交配および育種
5. 茯苓の化学成分
5.1 多糖類
5.2 トリテルペノイド類
5.3 その他の成分
6. 茯苓の薬理作用(活性)
6.1 抗腫瘍作用
6.2 抗炎症作用
6.3 腎障害改善作用
6.4 ホルモンに対する作用
6.5 神経系に対する作用
6.6 消化器系への作用
6.7 その他の作用
第13章 ブナハリタケ(奥山聡,横越英彦)
1. ブナハリタケについて
2. ブナハリタケの持つ生理作用
2.1 脳機能に及ぼす作用
2.2 血圧降下作用
2.3 血糖降下作用
2.4 発がんプロセス抑制作用
3. まとめ
第14章 マイタケ(庄邨)
1. 緒言
2. 基本栄養成分
3. 主な薬理作用及び活性成分
4. 活性成分の実用化
4.1 プロテオグルカン
4.2 グリコプロテイン
5. 安全性
6. おわりに
第15章 マツタケ(松永謙一)
1. はじめに
2. 性状・成分
2.1 性状
2.2 成分
3. 特性・機能
3.1 抗がん活性
3.2 ストレス負荷個体における免疫能改善作用
3.3 経口投与後の体内動態と作用部位
4. 安全性
5. 製造,量産化技術
6. 応用
7. おわりに
第16章 メシマコブ (中村友幸,河岸洋和)
1. はじめに
2. メシマコブとは
3. 遺伝子解析と優良菌株の選定に関して
4. 子実体と菌糸体の化学成分および安全性に関して
5. 抗酸化活性に関して
6. 抗アレルギー活性に関して
7. 抗腫瘍活性(in vivo,in vitro)に関して
8. おわりに
第17章 ヤマブシタケ(河岸洋和)
1. はじめに
2. 神経成長因子合成促進物質と臨床試験
3. その他の活性物質
第18章 霊芝 (庄邨,河岸洋和)
1. はじめに
2. 霊芝の薬用歴史
3. 霊芝の研究
3.1 多糖類
3.2 トリテルペノイド類
4. 安全性
5. おわりに
第19章 鹿角霊芝(野中裕司)
1. はじめに
2. 鹿角霊芝の抗腫瘍効果
2.1 鹿角霊芝の産地の違いによる抗腫瘍効果の違い
2.2 鹿角霊芝による担癌マウスの延命効果
2.3 鹿角霊芝と制癌化学療法剤の併用効果
3. 鹿角霊芝による制癌化学療法剤の副作用軽減効果
3.1 CY投与による体重減少に対する鹿角霊芝の効果
3.2 CY投与による免疫担当細胞の減少および免疫機能低下に対する鹿角霊芝の効果
4. おわりに
第20章 ナメコ(増野和彦)
1. はじめに
2. 主成分
3. 特性・機能
3.1 血液流動性改善効果
4. 安全性
5. 製造技術
5.1 菌床栽培
5.2 原木栽培
6. 応用
第21章 冬虫夏草(金城典子)
1. 冬虫夏草とは
2. 冬虫夏草の生体への作用
2.1 血球中の2,3-diphosphoglycerate(2,3-DPG)増強作用
2.2 ATP増加作用
2.3 運動能力増強作用
2.3.1 マウスの強制遊泳試験
2.3.2 ヒトにおける運動負荷試験
2.4 脳機能改善・肝機能作用
2.4.1 空間作業記憶・集中力増強作用
2.4.2 肝機能増強作用
2.4.3 SOD活性作用
2.5 メラトニン
2.5.1 抗ストレス作用
3. ハナヤスリタケ
内容説明
本書は、いわゆる「健康食品」として実際に市場に出回っているきのこを網羅し、その生理活性、機能性の最新の研究を正確に紹介する。第1編基礎編では、きのこ全般を様々な面から概観し、第2編素材編では、各々のきのこの生理活性・機能性をまとめた。
目次
第1編 基礎編(きのこの種類と利用状況;きのこの持つ機能;きのこの安全性(毒きのこ)
きのこの可能性
新しい育種技術の動向
効能評価技術の動向)
第2編 素材編(カワリハラタケ(ヒメマツタケ、アガリクスブラゼイ、アガリクス)
エノキタケ
エリンギ
カバノアナタケ
シイタケ
ブナシメジ
チョレイマイタケ
ニンギョウタケ
ハタケシメジ
ハナビラタケ
ヒラタケ
ブクリョウ
ブナハリタケ
マイタケ
マツタケ
メシマコブ
ヤマブシタケ
霊芝
鹿角霊芝
ナメコ
冬虫夏草)
著者等紹介
河岸洋和[カワギシヒロカズ]
静岡大学農学部応用生物化学科教授(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。