出版社内容情報
★有機ELなど有機電子デバイス研究者、必携のデータベース!
★有機薄膜のエネルギーレベルを徹底解明!
★ホール輸送材料、発光材料、電子輸送材料に大分類し、
有機太陽電池材料、金属、金属酸化物についても言及!
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【はじめに】
本書は大気中光電子分光(Photo-Electron Spectroscopy in Air ; PESA)により測定した有機・金属・金属酸化物薄膜の仕事関数(WF)及びHOMO(最高被占有軌道)レベルについてまとめたものである。PESAは、宇田応之先生が発明した大気中で電子を計数できるオープンカウンターをデイテクターに用いているので、HOMOレベルやWFを容易に測定することができる。また、AC-1やAC-2という名称で理研計器㈱で製品化されていて、特に、有機電子デバイスの研究開発の現場において、多くの研究者が、有機薄膜のHOMOレベルの見積もりに活用している。従来、有機材料のHOMOレベルの決定にはCV法による酸化電位が簡便には用いられてきたが、有機固体薄膜の状態を必ずしも反映しているとは言えず、PESAによるHOMOレベルの見積もりが、より有機薄膜の電子状態を反映していることが、これまでの多くの研究結果から理解されている。さらに、詳細な電子状態の解明には状態密度の測定と解析が必要ではあるが、短時間で終了するHOMOレベルの測定は、特に、材料のスクリーニングに適した計測方法である。
本書では,これまで我々が測定した有機薄膜のHOMOレベルを有機EL(OLED)のカテゴリーの観点から,ホーム輸送材料,発光材料,電子輸送材料に大分類した。また有機太陽電池材料,金属,金属酸化物についてまとめた。
著者の中島は1995年に理化学研究所固体化学研究室(宇田応之先生)にてオープンカウンターの応用研究として,大気中における金属薄膜の仕事関数を計測していた。また,安達もほぼ同じ時期に理化学研究所生体高分子物理研究室(雀部博之先生)にて有機エレクトロニクスの研究をスタートさせていた。当時,二人は理研の別々の研究室で研究生活を送っていたのであるが一度も顔を合わせたことは、無かった。その後,中島らによって開発されたAC-1を用いて有機薄膜のHOMOレベルの測定を安達,小山田らが薬10年間に渡って行い,今回,本書を共著で出版することができ,非常にうれしく思う。
PESAが有機薄膜のエネルギーレベルの解明に果たした役割は非常に大きい。今後、さらにデータベースを充実させ、21世紀の有機エレクトロニクスへの貢献が果たせれば幸いである。
最後に本書の出版に際して,根気よくデータを整理して頂いた安達研究室・斉藤正美嬢に感謝致します。また,材料をご提供頂いた皆様にこの場を借りて感謝致します。
2004年4月 安達千波矢
【構成および内容】
第1章 大気中光電子分光 中島嘉之
1.大気中光電子分光の概要 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・1
大気中光電子分光(Photo-Electron Spectroscopy in Air ; PESA)とは,物質に光を照射した時に放出される光電子を,オープンカウンター1~3)で計数し,大気中に置かれた物質表面の電子常態,つまり,仕事関数,イオン化ポテンシャル,フェルミ準位近傍の電子状態密度などを測定する方法である。またこの方法では,試料表面オングストローム(0.1nm)オーダーの極薄膜の厚さを,大気中で簡単に測定する事もできる。図1に,PESA装置の概略図を示す。重水素ランプから放射される紫外線を,分光器で単色化し,試料表面に照射する。この際,照射光のエネルギーは,3.40~6.20eV(200~365nm)の範囲でステッップ状に大きくしていく。この照射光のエネルギーが試料の仕事関数を超えると,試料表面から光電子が大気中に放出される。この光電子をオープンカウンターで直接計数し,その計数率と照射紫外線のエネルギーとの関係をパーソナルコンピューター上に表示する。
オープンカウンターは世界で唯一,大気中(利用厚さnm以上)で動作する電子計数管である。そのため,光電子分光は真空中のみで行われていた。しかし,工業材料の大部分は大気中で使用され,その表面状態も真空中のそれとは異なっている。また,真空を用いる測定装置は大型で,高価で,操作も難しい。オープンカウンターの登場で,大気中でも光電子分光が可能となり,工業材料表面の電子状態をありのまま観察できるようになった。また,機器分析に不慣れな合成化学者や材料科学者でも,簡単に,正確に,かつ高精度で試料の電子状態を測定できるようになった。
1頁、図1(PDF)
2.オープンカウンターの動作原理 ・・・・・・・・・・・・・・・・・2
3.測定結果の解析方法 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・4
4.まとめ ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・9
第2章 有機EL用材料の解説 小山田崇人,安達千波矢
1.はじめに ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・10
有機EL素子の進展は,有機機能性色素材料が発光性半導体として優れた性能を有していることを明らかにした。特に,室温において強いリン光発光を有する有機金属発光中心に用いることにより,従来の常識を覆す内部発光量子効率が100%に迫る有機EL素子も実現された1~3)(図1)。このように,有機半導体材料は次世代の光電子機能材料として大きな可能性を秘めている。有機EL素子における有機半導体材料は,ポリアセチレンに代表される導電性高分子や有機超伝導体に代表される有機電荷移動錯体の研究分野とは大きく異なる。本章では,有機EL素子の動作原理,発光機構と基本特性や素子構造について紹介し,素子構造を概観しながらホール輸送材料,発光材料,電子輸送材料,電極材料の解説を行う。
10頁、図1(PDF)
2.有機EL素子の動作原理 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・11
3.発光機構と基本特性(再結合、励起1重項と3重項、EL効率の限界) ・・・12
4.素子構造 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・14
5.有機EL用材料の高純度化 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・16
6.ホール輸送材料 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・17
7.電子輸送材料 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・19
8.発光層用材料 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・21
9.電極材料 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・26
<データ>
内容見本(PDF) Ⅰ Ⅱ Ⅳ
掲載品目数 掲載頁
Ⅰ. Hole Transport Materials 81 ・・・・・・・・・・・・・・33
Ⅱ. Hole Transport Materials 95 ・・・・・・・・・・・・・・45
Ⅲ. Electron Transport Materials 79 ・・・・・・・・・・・・・・61
Ⅳ. Organic Solar Cell Materials 5 ・・・・・・・・・・・・・・73
Ⅴ. Metals 24 ・・・・・・・・・・・・・・77
Ⅵ. Metal Oxides 6 ・・・・・・・・・・・・・・81
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