出版社内容情報
★従来ガラスとは異なる新しい原理に基づく新機能性ガラス=ナノガラスの全て!
★高輝度発光ガラス、高強度ガラス、三次元光回路、大容量光メモリシステムなど実用化に向けて進む応用開発を詳述!
【刊行のねらい】
現在、情報通信、建築、輸送機材、医療機器など多種多様な製品にガラス材料が用いられているが、今後、高強度、軽量、高耐熱性など従来の材料物性からの飛躍的な向上と、また、21世紀の基幹産業の一つとして期待されている光通信産業の発展を支えるキーマテリアルとしての新たな基盤技術の開発が求められている。
これらの実現に向けて、ガラス中にイオンや微粒子を分散させる、超短波レーザーを照射する、超微細加工を施すといったナノテクノロジーを駆使した、ガラスとナノテクノロジーの融合、すなわち「ナノガラス技術」の開発が進められている。
本書は、平成13年度から5ヵ年計画予定のNEDO「ナノガラス技術プロジェクト」のこれまでの研究成果をまとめたものである。日本におけるナノガラス研究の中心であり、日本の総力を結集したプロジェクトの研究成果を、特に「デバイス・モジュール」に焦点をあて最新動向を第一線でご活躍の研究者の方々にご執筆頂いた。ナノガラス技術確立により、様々な産業の新たな発展の一助となること願うものである。
【執筆者一覧(執筆順)】
平尾一之 京都大学大学院 工学研究科 材料化学専攻 教授
田中修平 (社)ニューガラスフォーラム ナノガラス研究本部 ナノガラスつくば研究室 ナノガラス大阪研究室 室長
西井準治 産業技術総合研究所 光技術研究部門 ガラス材料技術グループ グループリーダー
永金知浩 (社)ニューガラスフォーラム ナノガラス研究本部 ナノガラス大阪研究室 研究員
村瀬至生 産業技術総合研究所 光技術研究部門 主任研究員
中澤達洋 (社)ニューガラスフォーラム ナノガラス研究本部 ナノガラス大阪研究室 研究員
山下 勝 産業技術総合研究所 生活環境系特別研究体 主任研究員
菊川 敬 (社)ニューガラスフォーラム ナノガラス研究本部 ナノガラス大阪研究室 研究員
川部和広 (社)ニューガラスフォーラム ナノガラス研究本部 ナノガラス大阪研究室 研究員
蔵岡孝治 神戸大学 海事科学部 海上輸送システム学課程 助教授;
産業技術総合研究所 生活環境系特別研究体 客員研究員
矢澤哲夫 姫路工業大学 工学研究科 物質系工学専攻 応用化学部門 教授;
産業技術総合研究所 生活環境系特別研究体 客員研究員
北村直之 産業技術総合研究所 光技術研究部門 ガラス材料技術グループ 主任研究員
福味幸平 産業技術総合研究所 光技術研究部門 ガラス材料技術グループ 主任研究員
岩野隆史 (社)ニューガラスフォーラム ナノガラス研究本部 ナノガラスつくば研究室 研究員
井本克之 (社)ニューガラスフォーラム ナノガラス研究本部 ナノガラスつくば研究室 部長研究員
黒岩 裕 (社)ニューガラスフォーラム ナノガラス研究本部 ナノガラスつくば研究室 主任研究員
武島延仁 (社)ニューガラスフォーラム ナノガラス研究本部 ナノガラスつくば研究室 研究員
成田善廣 (社)ニューガラスフォーラム ナノガラス研究本部 ナノガラスつくば研究室 研究員
山本浩貴 (株)日立製作所 日立研究所 電子材料研究部 機能性ガラス・分析ユニット 研究員
【はじめに】
近年,情報技術(IT),環境,バイオ工学など様々な工学分野でナノテクノロジーがキーワ-ドとなり,幅広い分野に波及する技術として種々の研究が行われている。さらに,最近では産学官を巻き込んだ大規模プロジェクトの始動が世界的に進行しており,大きな期待が寄せられている。「ナノ」という言葉が一気に注目されるようになったのは先のクリントン米国大統領が2000年1月にカリフォルニア工科大学において21世紀科学研究費として過去50年間で最大の約5億ドル(前年比84%増)を発表したことに端を発した。米国は重点研究目的として,「鉄の10倍の強度をもつ新素材」,「国会図書館の情報がすべて角砂糖大の大きさに入る記録素子」などのナノテクノロジーの開発を挙げたからである。一方,わが国においては,総合科学技術会議で次期科学技術基本計画として,ライフサイエンス,地球環境および情報の3分野に加え,ナノ融合物質・材料を含む物質・材料分野についても重点化を図り,戦略的に推進すべきことが示された。
このような提言を受けて日本では,2001年の9月から5ヶ年計画で経済産業省(旧通産省)のNEDO技術開発機構公募「材料ナノテクノロジープログラム」がスタートしたのを始め,各種ナノテクノロジー関連の国家プロジェクトや民間プロジェクトが次々と始まった。
「材料ナノテクノロジープログラム」の組織は,①ナノガラス,②精密高分子,③ナノメタル,④ナノカーボン,⑤ナノ粒子,⑥ナノコーティング,⑦ナノ機能合成,⑧ナノ計測と言った8つの技術開発プロジェクトで構成されている。これ以外にも全体の体系化のために,⑨知識の構造化プロジェクトと称して,ナノ材料共通の特性に関する評価技術・構造解析技術を開発することも行っている。つまり,各プロジェクトが全体として機能するように意図的にプログラム化されているといえよう。
本書は,これらのプログラムのうちの『ナノガラス技術』プロジェクトで,5カ年計画の前半に得られた成果を纏めたもので,情報産業他広範囲な分野でナノガラス技術が如何に重要で,ナノガラス技術によりどのような新しい機能が発揮され,それらの組み合わせと組織化によりどのようなデバイス・モジュールが出来ているのか,出来そうか,さらに今後どのような展開が期待されているのかを記した。本書が新しい産業展開の一助になればと願っています。
本書で記載した研究開発の成果の一部は,NEDO技術開発機構(独立行政法人 新エネルギー・産業技術総合開発機構)の委託による「材料ナノテクノロジープログラム」の一部である「ナノガラス技術プロジェクト」の一環として実施したものである。
2003年 12月 京都大学大学院 工学研究科 材料化学専攻 教授 平尾 一之
【構成および内容】
序章 ナノガラスについて 田中修平
1.はじめに ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・1
2.日本におけるナノテクノロジープログラムと諸外国でのナノテクノロジーの取り組み ・・・2
3.ナノテクノロジー技術とは ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・3
3.1 ナノテクノロジーとは
3.2 ナノガラス技術とは
4.ナノガラス技術の開発状況と応用展開および実用化研究 ・・・・6
4.1 ナノガラス技術の開発状況
4.2 ナノガラス技術の応用展開
4.2.1 室温で作製できる高強度ガラス
4.2.2 大容量・小型で安価な三次元光回路
4.2.3 大容量光メモリシステム
4.3 ナノガラス技術の実用化研究
4.3.1 ディスプレイ用高強度ナノガラスプロジェクト
4.3.2 デバイス用高機能化ナノガラスプロジェクト
5.おわりに ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・9
第1編 ナノ粒子分散・析出技術
第1章 ナノ粒子分散・析出技術について 西井準治
(1) 異質相の析出技術 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・13
(2) 異質相の分散技術 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・13
第2章 アサーマル・ナノガラス 永金知浩
1.材料のアサーマル化 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・15
2.アサーマル化の手法 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・16
3.Li2O-Al2O3-SiO2系ガラスの高圧結晶化 ・・・・17
4.有機-無機複合材料 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・23
5.おわりに ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・25
第3章 ナノ粒子蛍光体 村瀬至生
1.はじめに ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・27
2.ナノ粒子の特性 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・27
2.1 物理的側面
2.2 化学的側面
2.3 ドープしたナノ粒子について
3.単一ナノ粒子からの発光の分光と応用 ・・・・・・・・31
4.ガラス中でのナノ粒子の合成 ・・・・・・・・・・・・・・・36
5.溶液中でのナノ粒子の合成とメカニズム ・・・・・・・38
6.水溶液中での合成の具体例 ・・・・・・・・・・・・・・・・41
6.1 テルル化カドミウム
6.2 セレン化亜鉛
7.ガラス中への保持 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・43
7.1 バルクガラスの場合
7.2 粉体ガラスの場合
8.発光の量子収率 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・47
9.応用 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・48
10.おわりに ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・48
第2編 ナノ構造形成技術
第4章 ナノ構造形成技術について 西井準治
(1) 微細周期構造形成技術 ・・・・・・・・・・・・・・・・・53
(2) 有機-無機ハイブリッド技術 ・・・・・・・・・・・・・・53
(3) 外部場操作技術 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・54
第5章 高次構造化ナノガラス 中澤達洋
1.はじめに ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・55
2.周期構造体における光機能 ・・・・・・・・・・・・・・・・56
3.周期構造体の作製技術 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・57
3.1 シリカ系ガラス薄膜の微細加工
3.2 光学多層膜の微細加工
4.今後の展開 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・62
第6章 有機-無機ハイブリッド・ナノガラス 山下勝,菊川敬,川部和広,蔵岡孝治,矢澤哲夫
1.はじめに ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・63
2.気孔配向膜 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・64
3.多孔質ガラスの表面改質による導電体 ・・・・・・・70
4.ゾルゲル法による有機-無機ハイブリッド導電体 ・・・76
5.おわりに ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・80
第7章 外部場操作ナノガラス 北村直之,福味幸平,西井準治
1.はじめに ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・82
2.ガラスのナノレベル構造 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・84
3.外部要因によるナノレベルの構造変化 ・・・・・・・・86
3.1 急激な温度変化による高温ナノレベル構造の凝固
3.2 圧力印加による短距離―中距離秩序の変化
3.3 高密度ガラス構造の熱緩和現象
4.外部場操作による微細構造制御による光学素子形成 ・・・100
4.1 局所加熱による熱拡散
4.1.1 Schmidtの図解法
4.1.2 高密度化シリカガラスにおける局所レーザー加熱による熱拡散と密度緩和のモデル計算
4.2 局所レーザー加熱による微小素子形成
5.おわりに ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・109
第3編 高強度化ナノガラス技術
第8章 高強度化ナノガラス技術について 田中修平
1.はじめに ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・113
2.室温で作製できる高強度ガラス(ナノガラスの応用展開) ・・・114
3.ディスプレイ用高強度ナノガラスプロジェクト(ナノガラスの実用化研究)・・・115
第9章 高強度化ナノガラス技術 岩野隆史
1.はじめに ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・116
2.フェムト秒超短パルスレーザー光を用いたガラスの高強度化手法・・・118
3.ガラス内部への異質相の形成方法 ・・・・・・・・・119
4.フェムト秒レーザー照射サンプルの外観および異質相 ・・・121
5.強度評価 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・124
6.破壊試験後の破断面の観察 ・・・・・・・・・・・・・・128
7.おわりに ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・130
第4編 光回路用ナノガラス技術
第10章 光回路用ナノガラスについて 田中修平
1.はじめに ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・135
2.ガラス中に光回路を作製する技術(ナノガラスの応用展開:大容量・小型で安価な三次元光回路)・・・136
3.デバイス用高機能化ナノガラスプロジェクト(ナノガラスの実用化研究) ・・・136
第11章 二次元ナノガラス光回路 井本克之
1.はじめに ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・138
2.導波路の超高Δ化に伴うメリットと課題およびその対策案 ・・・139
3.提案したP-CVD法によるスラブ導波路の製造方法・・・・145
4.超高Δスラブ導波路の損失特性 ・・・・・・・・・・・・145
4.1 スラブ導波路の損失のパーテイクル数依存性
4.2 超高Δスラブ導波路のプロセス依存による低損失化特性
5.埋め込み型導波路およびそれを用いた光部品の特性 ・・・・・・・156
6.次世代二次元ナノガラス光回路用導波路 ・・・・・158
6.1 導波路構造
6.2 ガラス材料
6.3 導波路の製造方法
7.おわりに ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・172
第12章 三次元ナノガラス光回路 黒岩裕,武島延仁,成田善廣
1.はじめに ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・175
1.1 研究の背景
1.2 三次元光回路と超短パルスレーザーによるガラス内部への三次元加工
1.3 三次元光回路実現の試み
2.機能性材料のガラス内部での合成 ・・・・・・・・・・177
2.1 ガラス中へのⅡ-Ⅵ族(CdSxSe1-x)半導体微粒子の形成
2.2 ガラス中への金属(Ag)微粒子の形成
2.3 ガラス中への微細空孔の形成
2.4 合成した機能性材料の屈折率
3.機能性材料の構造化による機能発現 ・・・・・・・・190
3.1 回折を利用した微小光学素子の作製
3.2 SiO2ガラス導波路の形成とその評価
3.2.1 導波路形成と出射モード観察による構造パラメタ評価
3.2.2 導波路の損失評価
3.3 CdSxSe1-x分散ガラス導波路の形成とその評価
3.3.1 導波路の形成と伝搬特性評価
4.おわりに ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・198
第5編 光メモリ用ナノガラス技術
第13章 光メモリディスク用ナノガラスについて 田中修平
1.はじめに ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・203
2.大容量光メモリシステム(ナノガラスの応用展開)・・・204
3.デバイス用高機能化ナノガラスプロジェクト(ナノガラスの実用化研究)・・・204
第14章 光メモリディスク用集光機能ナノガラス 山本浩貴
1.光ディスクの市場・技術動向 ・・・・・・・・・・・・・・・・206
2.コバルト酸化物薄膜のナノ構造 ・・・・・・・・・・・・・213
3.コバルト酸化物薄膜の光学的性質 ・・・・・・・・・・・215
4.屈折率変化のメカニズム究明 ・・・・・・・・・・・・・・・219
5.光ディスクへの応用 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・223
6.今後の展開 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・226
第15章 光メモリヘッド用ナノガラス
-微細構造形成技術を用いた波長分離素子- 中澤達洋
1.はじめに ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・228
2.「埋め込み回折格子」の作製と光学特性 ・・・・・・・228
3.「埋め込み回折格子」を応用した分波素子の作製と分波特性 ・・・231
4.今後の展開 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・237
内容説明
本書は、「材料ナノテクノロジープログラム」のうちの『ナノガラス技術』プロジェクトで、5カ年計画の前半に得られた成果を纏めたもので、情報産業他広範囲な分野でナノガラス技術が如何に重要で、ナノガラス技術によりどのような新しい機能が発揮され、それらの組み合わせと組織化によりどのようなデバイス・モジュールが出来ているのか、出来そうか、さらに今後どのような展開が期待されているのかを記した。
目次
ナノガラスについて
第1編 ナノ粒子分散・析出技術(ナノ粒子分散・析出技術について;アサーマル・ナノガラス ほか)
第2編 ナノ構造形成技術(ナノ構造形成技術について;高次構造化ナノガラス ほか)
第3編 高強度化ナノガラス技術(高強度化ナノガラス技術について;高強度化ナノガラス技術)
第4編 光回路用ナノガラス技術(光回路用ナノガラスについて;二次元ナノガラス光回路 ほか)
第5編 光メモリ用ナノガラス技術(光メモリディスク用ナノガラスについて;光メモリディスク用集光機能ナノガラス ほか)
著者等紹介
平尾一之[ヒラオカズユキ]
京都大学大学院工学研究科材料化学専攻教授
田中修平[タナカシュウヘイ]
(社)ニューガラスフォーラムナノガラス研究本部ナノガラスつくば研究室ナノガラス大阪研究室室長
西井準治[ニシイジュンジ]
産業技術総合研究所光技術研究部門ガラス材料技術グループグループリーダー
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。