出版社内容情報
☆静電気障害対策を材料面からサポートするための最新技術情報!
☆各種帯電防止剤(材)の原理、特徴、応用例を紹介!
☆適切な材料選択に必要不可欠な評価技術も充実!
☆市販されている帯電防止製品例の一覧表付録付き!
【はじめに】
静電気障害は第二次世界大戦後のナイロンの製造開始と共に生産技術の重要なキーワードになった。しかしそれ以前にも,古くから繊維産業や印刷関係で静電気障害があったことは,除電器の特許が明治時代に出願されていたことからもわかる。このように長い歴史を持つ静電気障害については当然ながら古くから研究され,また防止用の各種材料や静電気除去装置の製造販売も長い歴史がある。しかしそれにもかかわらず,静電気障害は減少するどころかますます増加し,昔よりずっと広い範囲の人々に知られ恐れられる存在になって来ている。その理由としては,原理的に静電気の発生を防止できないことが根本的原因としてあげられるが,そのほかにこれまでの静電気障害の研究とこの問題への対応が必ずしも十分でなかったことも関係している。
これまでの歴史を見ると,静電気障害の発生に伴ってこれに対する対策は真剣に行われるが,その結果として何とかこの障害を押さえ込むことが出来ると,ほとんどの場合,対策への積極的な動きがストップしてしまうことがあげられる。そのため,生産プロセスの速度や材料の変化が起こるとまた許容レベル以上の静電気の影響が現れて対策に追われることになる。さらに新しい産業が生まれ,新しい製造プロセスが開発されると,そこにまた新しい静電気障害が発生する。
静電気障害は生半可な対応ではこれに対処することができないことが多い、現状では簡単に出来る静電気障害への対策は,すでに多くの生産技術に関わるエンジニアの知るところとなっている。対策の難しい障害が残され,これが随所でその影響力を発揮している。
この度発行する『帯電防止材料の応用と評価』は,静電気障害対策を材料面からサポートするための最新情報を提供する。材料を適切に選択できれば,正に根本的な解決につながることになる。「読者に必要な情報を提供すること」を目的としているため,本書は技術的情報を提供する本文と,商品情報を提供する付録からなる。
この分野も最近は様々な新製品が現れている。取り上げた題材は,広く使用され長年改良が加えられて来た材料から最新の材料まで,できるだけ網羅できるように努めた積もりであるが,筆者の時間的条件などの都合によって,重要ではあるが掲載できなかったものもある。しかしこれについても,付録の製品情報である程度の補いが出来たと考えている。
本書が静電気による障害対策のお役に立つことを期待します。
2003年7月 東京理科大学 工学部 電気電子情報工学科 村田雄司
【執筆者一覧(執筆順)】
村田 雄司 東京理科大学 理工学部 電気電子情報工学科 教授
後藤 伸也 花王(株) 化学品研究所 主任研究員
細川 泰徳 花王(株) 化学品研究所 室長
小林 芳照 松本製薬工業(株) 研究グループ グループマネージャー
上原 正治 (株)ボロンインターナショナル 開発部 取締役開発部長
相根 弘 ダイセルポリマー(株) 堺開発センター 技術開発グループ グループリーダー
篠原 敏郎 三菱伸銅(株) 開発部 主任研究員
千種 康男 ナガセケムテックス(株) プロジェクト開発部 研究員
国武 典彦 ニッタ(株) ならやま研究所 開発本部 副本部長
海老原 彰 カネボウ合繊(株) ナイロン営業部 部長
平本 健 日本蚕毛染色(株) 営業部 理事
沼口 敏一 住友スリーエム(株) 電気・電子製品事業部 技術部 次長
飯沢 吉弘 池袋琺瑯工業(株) 取締役 製造部長
河島 崇 池袋琺瑯工業(株) 技術部 研究開発室
川村 智紀 ミドリ安全(株) クリーン静電部
中西 智明 日本フッ素工業(株) 開発部 部長
向井 清和 日本フッ素工業(株) 開発部 副部長
山崎 健一 ケースレーインスツルメンツ(株) エンジニアリング部 アプリケーション・エンジニア
上原 利夫 トレック・ジャパン(株) 代表取締役社長
和泉 健吉 シシド静電気(株) 横浜工場 工場長
前野 恭 (独)通信総合研究所 電磁波計測部門 ライダーグループ 主任研究員
殿谷 保雄 東京都立産業技術研究所 生産技術部 電気応用技術グループ 主任研究員
【構成および内容】
第1章 帯電防止材料総論 村田雄司
1.帯電防止の基礎 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・1
1.1 電荷の発生
(1)接触帯電
(2)摩擦帯電
(3)繰返し接触・摩擦帯電
(4)材料と接触摩擦帯電
1.2 表面電位と静電容量
1.3 電荷の漏洩
1.4 静電気障害の起こりやすさ
2.静電気障害防止技術の概要 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・6
2.1 接触摩擦帯電の抑制
2.2 帯電防止剤および帯電防止材料の要求される性能
2.3 除電装置とその使用
3.おわりに ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・8
第2章 帯電防止処理剤(低分子系)
1.界面活性剤系帯電防止剤 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・9 後藤伸也、細川泰徳
1.1 はじめに
1.2 界面活性剤の帯電防止機能と種類
1.3 主な界面活性剤型帯電防止剤
1.4 帯電防止剤の設計
1.5 複合型帯電防止剤設計の例
(1)帯電防止効果の持続性向上
(2)帯電防止効果の早期発見
1.6 樹脂構造と帯電防止剤のブリードアウト
(1)プラスチックとの相溶性
(2)環境温度と効果発現
(3)結晶化温度と効果発現
(4)成形方法と効果発現
(5)表面処理と帯電防止効果
1.7 花王帯電防止剤の製品例
2.シリコン系帯電防止剤 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・22 小林芳照
2.1 はじめに
2.2 シリコン系帯電防止剤
(1)帯電防止離型剤
(2)毛髪用化粧料
2.3 帯電防止離型剤の開発
(1)シリコン型帯電防止剤:SIC-7000
(2)単層型帯電防止離型剤
2.4 おわりに
3.有機ホウ素帯電防止剤 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・32 上原正治
3.1 はじめに
3.2 有機ホウ素系化合物
3.2.1 内部練り込み型帯電防止剤
3.2.2 外部塗布型帯電防止剤
3.3 帯電防止作用機構
3.4 おわりに
第3章 高分子系持続性帯電防止剤
-高分子系帯電防止剤とその作用および帯電防止樹脂への応用- 相根 弘
1.はじめに ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・40
2.高分子型持続性帯電防止剤とその作用機構 ・・・・・・・・・41
3.持続性帯電防止樹脂の材料設計 ・・・・・・・・・・・・・・・・・43
3.1 帯電防止効果の発現
3.2 耐衝撃性の改良
3.3 機能性の付与
4.帯電防止効果の持続性 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・46
5.おわりに ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・46
第4章 帯電防止ポリマー材料
1.金属薄膜形成帯電防止フィルム ・・・・・・・・・・・・・・・・・・48 篠原敏郎
1.1 はじめに
1.2 導電性材料
1.3 金属薄膜
1.3.1 薄膜の形成方法
1.3.2 金属薄膜の物性
1.4 金属薄膜の帯電防止への応用
(1)帯電防止製品の紹介
(2)電子部品搬送用キャリヤーテープの構成
(3)静電気トラブルの内容
(4)要求品質および製品仕様
(5)特性評価
1.5 おわりに
2.透明帯電防止材料 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・60 千種康男
2.1 はじめに
2.2 表面抵抗率と性能・用途との関係
2.3 透明帯電防止材料の種類と表面抵抗率
2.4 各種透明帯電防止材料の得失
2.5 ポリチオフェン系導電性ポリマーの特性
2.6 透明帯電防止材料<デナトロン>の特性
2.6.1 コーティング液の物性
2.6.2 卓越した透明性と導電性
2.6.3 湿度依存性のない導電性
2.6.4 優れた加工性
2.6.5 <デナトロン>P-502Sの特長
2.6.6 <デナトロン>P-502RGの特長
2.7 おわりに
3.導電・帯電防止ゴム ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・68 国武典彦
3.1 はじめに
3.2 帯電防止・導電性ゴムの種類と用途
3.2.1 静電気放出及び帯電防止分野
3.2.2 導電性ゴム分野
3.2.3 電磁波シールド分野
3.3 帯電防止用ゴム製品
3.4 ゴムの導電化付与法
3.5 導電性ゴムの製造方法
3.5.1 導電性フィラー
3.5.2 複合導電性ゴムの導電機構
3.5.3 導電性ゴムの加工技術
3.6 最近のトピックスより
3.7 おわりに
第5章 帯電防止繊維
1.導電材料混入型 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・89 海老原 彰
1.1 はじめに
1.2 導電材料混入型のはじまり
1.3 導電材料混入型の色について
1.4 導電材料混入型のベース樹脂について
1.5 導電性繊維の帯電防止原理
1.6 導電材料混入型の帯電防止性能測定法について
1.7 導電材料混入型の帯電防止性能について
1.8 導電材料混入型の今後の展開について
2.金属化合物型 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・106 平本 健
2.1 はじめに
2.2 サンダーロン繊維の機構
2.3 各種導電性繊維との放電性能の比較
2.4 静電抵抗におけるサンダーロン繊維の優位性
2.5 除電テープブラシへの応用―自己放電型除電器サンダーロンカクタス―
第6章 用途別帯電防止材料
1.半導体デバイス製造用の静電気対策フロアリングと静電気対策包装材料・・・113 沼口敏一
1.1 半導体製造用および電子部品製造用静電気対策フロアリングおよびワークサーフェース
1.1.1 静電気対策靴と静電気対策フロアリング
1.1.2 静電気対策フロアリング
1.1.3 ワークサーフェース(作業台表面)
1.2 静電気対策包装材料(静電気に鋭敏な部品の輸送と保管)
1.2.1 静電気シールド、静電気シールドバッグ
1.2.2 静電気対策包装材料の試験規格について
1.2.3 帯電防止バッグと静電気シールドバッグの性能比較
2.帯電防止グラスライニング ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・127 飯沢吉弘、河島 崇
2.1 はじめに
2.2 静電気の発生と帯電
2.3 従来のGL機器の静電気対策
2.4 帯電防止GLの構造
2.5 帯電防止GLの諸特性
2.6 コロナ荷電試験評価
2.7 撹拌帯電試験評価
2.8 おわりに
3.帯電防止衣料 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・137 川村智紀
3.1 はじめに
3.2 帯電防止衣料に用いられる素材
3.3 帯電防止衣料
3.3.1 可燃性物体への着火防止
3.3.2 電子デバイスの破壊防止
3.3.3 コンタミネーション防止
3.3.4 着心地(衣服のまつわり付きによる不快防止)
3.4 おわりに
4.剥離帯電防止コーティング ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・144 中西智明、向井清和
4.1 はじめに
4.2 剥離帯電防止コーティング
4.2.1 対策の現状
4.2.2 アノダイジングの寿命
4.3 剥離帯電防止コーティングについて
4.3.1 特徴
4.3.2 印可電圧と抵抗値の関係
4.3.3 パーティクル
4.3.4 温度分布
4.3.5 経時変化
4.3.6 コーティング環境
4.3.7 実機への適用事例
4.4 フッ素樹脂の帯電防止コーティング
4.4.1 フッ素樹脂とは
4.4.2 帯電防止の考え方
4.4.3 性能の測定方法と確認
4.4.4 実機への適用事例
第7章 帯電防止材料の評価技術
1.エレクトロメータを用いた導電性の測定 ・・・・・・・・・・・・・・159 山崎健一
1.1 導電性の測定方法
1.1.1 電荷測定
1.1.2 抵抗率測定
(1)表面抵抗率測定
(2)固体の体積抵抗率測定
(3)液体の体積抵抗率測定
1.2 抵抗率測定における誤差要因
(1)誘電吸収
(2)電気化学効果
(3)試料周辺のシャトン抵抗
(4)電圧降下
2.帯電量・帯電電位の測定技術 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・166 上原利夫
2.1 はじめに
2.2 帯電量測定
(1)測定原理
(2)Q/m帯電量測定器の具体例
2.3 帯電電位測定
(1)測定原理
(2)測定条件
(3)測定器一例
2.4 おわりに
3.電荷減衰測定による帯電防止性の評価 ・・・・・・・・・・・・・173 和泉健吉
3.1 電荷減衰測定の概要
3.2 電荷減衰測定の原理
3.3 JIS規格における電荷減衰測定方法
3.4 米国連邦政府試験規格における電荷減衰測定方法
3.5 IEC規格における電荷減衰測定方法
3.6 電荷減衰測定と抵抗測定の比較
4.空間電荷分布の計測と評価法 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・182 前野 恭
4.1 高分子と空間電荷
4.2 パルス静電応力法の原理
4.3 空間電荷分布測定装置と測定限界
4.4 ポリマー型帯電防止樹脂中の空間電荷分布
4.5 3次元の空間電荷分布測定
5.帯電防止床・床材の試験方法と評価 ・・・・・・・・・・・・・・・・191 殿谷保雄
5.1 はじめに
5.2 帯電防止床・床材の試験方法と評価
5.2.1 床素材についての試験方法
5.2.2 床材についての試験方法
5.2.3 施工床についての試験方法
5.3 新規格制定の動向
第8章 帯電防止材料の評価基準 和泉健吉
1.帯電防止材料の機能と評価方法 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・199
2.静電気対策用の接地 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・199
3.帯電防止材料を評価するための規格概要 ・・・・・・・・・・・200
4.各種帯電防止材料に関する評価基準 ・・・・・・・・・・・・・・202
4.1 床,作業表面,保管棚に関する評価基準
4.2 椅子に関する評価基準
4.3 衣服に関する評価基準
4.4 包装に関する評価基準
4.5 リストストラップ,履物,手袋,指サック,工具に関する評価基準
4.6 平板状材料の電荷減衰測定による評価基準
5.今後の規格の動向 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・211
付録:帯電防止製品例一覧(メーカーのアンケート回答による) ・・・・・・・213
内容説明
本書は、静電気障害対策を材料面からサポートするための最新情報を提供する。材料を適切に選択できれば、正に根本的な解決につながることになる。「読者に必要な情報を提供すること」を目的としているため、本書は技術的情報を提供する本文と、商品情報を提供する付録かる成る。
目次
第1章 総論
第2章 帯電防止処理剤(低分子系)
第3章 高分子系持続性帯電防止剤―高分子系帯電防止剤とその作用および帯電防止樹脂への応用
第4章 帯電防止ポリマー材料
第5章 帯電防止繊維
第6章 用途別帯電防止材料
第7章 帯電防止材料の評価技術
第8章 帯電防止材料の評価基準
著者等紹介
村田雄司[ムラタユウジ]
東京理科大学理工学部電気電子情報工学科教授
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。