出版社内容情報
☆ＤＤＳの基礎，ＤＤＳ各手法（コントロールドリリース，生体膜透過促進，ターゲッティング）の方法論を詳述。
☆実用化されたＤＤＳ製剤の設計，製造法，臨床応用の実際。
☆ｏｎ－ｏｆｆ制御，タンパク質医薬品，遺伝子医薬品，トランスポーター利用など新らしいＤＤＳ製剤の研究開発動向。
刊行のねらい
ドラッグデリバリーシステムは，確実な治療効果の発揮，適用疾患の拡大，副作用の低減，使用性の向上などをもたらす薬物治療の新しい概念として，1980年代以降，(1)生体中での薬物放出の制御（コントロールドリリース），(2)生体の薬物吸収の改善（生体膜透過促進），(3)生体内での薬物の標的指向（ターゲッティング）の３つの分野で，着実に発展をとげてきた。
本書では，前書の全面的な改訂版として，DDSの基礎としての薬物動態からDDS各手法の方法論，実用化されたDDS製剤の設計，製造法，臨床応用の実際，新たなDDS製剤の研究開発動向まで，最新の動向を各分野の第一線で活躍中の方々に分担執筆いただいた。
また，日本DDS学会のご厚意により，同学会がまとめた『DDS製剤審査のガイドライン案』を資料として巻末に附した。
製剤開発・新薬開発に携わっておられる方はもとより，DDS分野に興味を持たれるすべての方々に広くご購読をおすすめする。
執筆者一覧（執筆順）
永井 恒司 星薬科大学 名誉教授
高山 幸三 星薬科大学 薬剤学教室 教授
山本 昌 京都薬科大学 薬剤学教室 教授
杉林 堅次 城西大学 薬学部 臨床薬物動態学教室 教授
五十嵐理慧 聖マリアンナ医科大学 難病治療研究センター 助教授
東海林洋子 Higher Dimension Research Inc. USA
元・聖マリアンナ医科大学 微生物学
関 裕充 第一製薬（株） ヘルスケア研究センター センター長
村上 敏男 第一製薬（株） ヘルスケア研究センター 主任研究員
町田 良治 星薬科大学 医療薬学研究室 教授
奈良 武志 トーアエイヨー（株）
小川 泰亮 元・武田薬品工業（株）
前田 浩 熊本大学 医学部 微生物学教室 教授
澤 智裕 熊本大学 医学部 微生物学教室 助手
小田切優樹 熊本大学 薬学部 教授
今井 輝子 熊本大学 薬学部 教授
星 恵子 聖マリアンナ医科大学 難病治療研究センター 助教授
菊池 寛 第一製薬（株） 創剤研究所 主任研究員
片岡 一則 東京大学 大学院 工学系研究科 材料学専攻 教授
高倉 喜信 京都大学 大学院 薬学研究科 教授
岡野 光夫 東京女子医科大学 医用工学研究施設 教授
青柳 隆夫 東京女子医科大学 医用工学研究施設 講師
金尾 義治 福山大学 薬学部 薬物動態学研究室 教授
中川 晋作 大阪大学 大学院 薬学研究科 助教授
真弓 忠範 大阪大学 大学院 薬学研究科 教授
玉井 郁巳 金沢大学 薬学部 助教授
辻 彰 金沢大学 薬学部 教授
構成および内容
第１章総論：薬物送達システム（ＤＤＳ）の現状と展望 永井恒司
１．新薬開発－薬物の選択性の追求－創薬と創剤
２．薬物送達システム（ＤＤＳ）－生物学的利用能の理解とその制御
３．薬効発現速度調節のための薬物送達の精密な制御技術
３．１ 主薬の化学修飾
３．２ 主薬とそれをとりまく成分との相互作用の利用
４．ＤＤＳの分類
４．１ 直接的（局所的）ＤＤＳ
４．１．１ 膜による薬物移行の制御
４．１．２ デバイスによる薬物放出の制御
４．１．３ 粘膜付着性製剤
４．１．４ 経皮吸収治療システム（Transdermal herapeutic system,TTS）
４．２ 全身的ＤＤＳ
４．２．１ １次的ターゲッティング
４．２．２ ２次的ターゲッティング
５．わが国におけるＤＤＳ開発の始まり－ビタミンＢ１誘導体
６．新規添加剤による新薬開発－シクロデキストリンを用いたプロスタグランジンの実用化
７．ＤＤＳによる新薬の開発に対する欧米と日本の従来の意識の違い
８．わが国におけるＤＤＳ開発の現状と一般的評価
９．生物学的利用能に関しextent,rateのみならずtopo-delivery,chrono-deliveryの制御並びに個体差との闘い
10．ＤＤＳ－２１世紀の３Ｈの科学技術
第２章ドラッグデリバリーシステムの方法論
１．放出制御（コントロールドリリース） 高山幸三
１．１ 放出制御の基礎理論
１．１．１ マトリックスによる制御
１．１．２ 高分子被膜による制御
１．２ 放出制御の実際
１．３ 放出制御の新しい試み
２．吸収改善
２．１ 薬物の経粘膜吸収改善 山本 昌
２．１．１ 製剤添加物の利用
２．１．２ 薬物の新規投与経路の開発
２．１．３ 薬物の分子構造修飾
２．１．４ 薬物の剤形修飾
２．１．５ おわりに
２．２ 皮膚からの吸収改善 杉林堅次
２．２．１ はじめに
２．２．２ 経皮吸収改善の理論
２．２．３ 駆動力の付与による吸収改善
２．２．４ 吸収ルートの拡大，作成による吸収促進
２．２．５ 促進法の併用による吸収改善
２．２．６ 新規方法
２．２．７ おわりに
３．標的指向化（ターゲッティング）
３．１ 臓器・組織へのターゲッティング 五十嵐理慧
３．１．１ はじめに
３．１．２ 臓器・組織に指向性を持った物質を結合する
３．１．３ 高分子化ターゲッティング製剤
３．１．４ プロドラッグ型ターゲッティング製剤
３．１．５ 局所投与型ターゲッティング製剤
３．１．６ 封入型ターゲッティング製剤
３．２ 細胞特異的ターゲティング 東海林洋子
３．２．１ はじめに
３．２．２ 細胞特異的ターゲティングを要する薬剤
３．２．３ 第１のバリアー（細胞膜）
３．２．４ 膜透過性を高めるためのＤＤＳ
３．２．５ 第２のバリアー（細胞内小器官）
３．２．６ 細胞内シグナル伝達系
３．２．７ 第３のバリアー（核内作用物質）
３．２．８ ウイルスベクターと非ウイルスベクター
３．２．９ in vivo におけるターゲティング
３．２．10 将来の細胞特異的ターゲティング
第３章ドラッグデリバリーシステムの開発
１．コントロールリリースド製剤
１．１ 経口投与型速溶製剤 関 裕充，村上敏男
１．１．１ はじめに
１．１．２ 速溶錠とは
１．１．３ 速溶錠の利点と欠点
１．１．４ 製造方法
１．１．５ 速溶錠の関連技術
１．１．６ 商品化例
１．１．７ おわりに
１．２ 粘膜適用製剤 町田良治
１．２．１ 粘膜への薬物適用
１．２．２ 粘膜の特徴
１．２．３ 粘膜投与と剤形
１．２．４ 粘膜付着製剤
１．２．５ 付着機構と付着力
１．２．６ 粘膜付着ＤＤＳの実例
１．２．７ おわりに
１．３ 経皮吸収型狭心症治療薬 奈良武志
１．３．１ はじめに
１．３．２ 経皮吸収薬の開発経緯
１．３．３ 経皮吸収型製剤の構造と特徴
１．３．４ 硝酸薬の種類と特徴
１．３．５ 市販のニトログリセリン及び硝酸イソソルビド経皮吸収型製剤
１．３．６ 経皮吸収型製剤開発における主な問題点
１．３．７ 最近の経皮吸収型狭心症治療薬の経皮吸収と皮膚刺激
１．３．８ 物理的要因による皮膚刺激の軽減
１．３．９ おわりに
１．４ 黄体形成ホルモン放出誘導体の注射または埋め込み型製剤 小川泰亮
１．４．１ はじめに
１．４．２ 実用化されたコントロールドリリースシステム
１．４．３ ポリ乳酸・グリコール酸（ＰＬＧＡ）の生体内分解性
１．４．４ モノリシックマイクロカプセルの調整法
１．４．５ コントロールドリリースシステムからの薬物放出挙動
１．４．６ 溶媒除去法によるマイクロカプセルの内部構造と薬物放出挙動
１．４．７ ＧｎＲＨアンタゴニストへの適用
１．４．８ おわりに
１．５ 動脈注射型高分子化抗癌剤 前田 浩，澤 智裕
１．５．１ はじめに
１．５．２ 高分子制癌剤の低分子制癌剤に比べた有用性
１．５．３ 高分子制癌剤スマンクス：その分子レベルでの特長
１．５．４ 動注法による癌治療の実際
１．５．５ 油性製剤の除放性
１．５．６ 高分子制癌剤の腫瘍へのデリバリーの増強法
１．５．７ Ｆｏｌｌｏｗ ｕｐ
１．５．８ スマンクス／リピオドール動注の副作用
１．５．９ おわりに
２．プロドラッグ 小田切優樹，今井輝子
２．１ プロドラッグとは
２．２ プロドラッグの設計
２．３ プロドラッグの血中濃度
２．４ プロドラッグの生体内変換に関与する酸素
２．５ プロドラッグの実例
２．５．１ 吸収性改善を目的としたプロドラッグ
２．５．２ 作用の持続化を目的としたプロドラッグ
２．５．３ 酸素の局在を利用したプロドラッグ
２．５．４ 副作用軽減を目的としたプロドラッグ
２．６ アンテドラッグ，ソフトドラッグ
２．７ おわりに
３．ターゲッティング製剤
３．１ リピッドマイクロスフェアー製剤 星 恵子
３．１．１ はじめに
３．１．２ リピッドマイクロスフェアとその生体内分布
３．１．３ リポ抗炎症薬
３．１．４ リポプロスタグランジン
３．１．５ リポＰＧＥ１，およびリポＰＧＩ２
３．１．６ おわりに
３．２ リポソーム製剤 菊池 寛
３．２．１ はじめに
３．２．２ リポソームの特徴
３．２．３ リポソームの調整方法と安定性
３．２．４ リポソームの応用例（その１）
３．２．５ リポソームの応用例（その２）
３．２．６ リポソームの応用例（その３）
３．２．７ リポソーム製剤の新たな展開
３．２．８ おわりに
３．３ 高分子ミセル化医薬の構造設計と機能開発 片岡一則
３．３．１ ＤＤＳによる標的治療
３．３．２ 高分子ミセル型制ガン剤
３．３．３ 静電相互作用に基づく高分子ミセル形成
３．３．４ 酸素を内包する高分子ミセル
３．３．５ 遺伝子ベクターとしての高分子ミセル
３．４ 能動的ターゲティング製剤 高倉喜信
3.4.1能動的ターゲティングとは
3.4.2抗体を利用した能動的ターゲティング製剤
3.4.3レセプター介在性エンドサートーシス機構を利用した能動的ターゲティング製剤
3.4.4外部誘導型能動的ターゲティング製剤
第４章ドラッグデリバリーシステムの新展開
１．ｏｎ－ｏｆｆ放出制御システム 岡野光夫，青柳隆夫
１．１ はじめに
１．２ 温度変化に応答するシステム
１．２．１ 温度応答性高分子の利用
１．２．２ 結晶－非晶の相転移の利用
１．２．３ 界面活性剤のゲル液晶相転移
１．３ ｐＨ変化に応答したシステム
１．４ 光に応答したシステム
１．５ 電気に応答したシステム
１．６ 特定の化学物質に応答したシステム
１．７ おわりに
２．タンパク質医薬品のドラッグデリバリーシステム 金尾義治
２．１ はじめに
２．２ タンパク質医薬品の最新ＤＤＳ製剤
２．２．１ スマンクス（ジノスタチンスチマラマー）
２．２．２ リュープリン（酢酸リュープロレリン）
２．２．３ アシアロシンチ（ガラクトシル人血清アルブミンジエチレントリアミン五酢酸テクネチウム（９９ｍＴｃ））
２．２．４ セレザイム（イミグルセラーゼ）
２．２．５ ＡＤＡＧＥＮ（pegademase bovine）
２．３ タンパク質医薬品の遺伝子組換え技術による新展開
２．４ タンパク質医薬品のＤＤＳ研究開発動向
２．４．１ 経皮投与
２．４．２ 経肺投与
２．４．３ 経粘膜投与
２．４．４ 経口投与
２．４．５ 注射
３．遺伝子医薬品のドラッグデリバリーシステム 中川晋作，真弓忠範
３．１ はじめに
３．２ 遺伝子導入ベクター
３．２．１ ウイルスベクター
３．２．２ 非ウイルスベクター
３．３ 細胞内動態
３．４ 導入遺伝子の発現制御
３．５ おわりに
４．トランスポーターとドラッグデリバリーシステム
４．１ はじめに
４．２ 栄養物トランスポーターを利用した消化管吸収
４．３ 腫瘍へのデリバリー
４．４ 排出型トランスポーター機能回避による組織移行性改善
４．５ おわりに
