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出版社内容情報
ディアス・デ・メーロの出身地ピコ島を舞台に、捕鯨産業と移住といった厳しい環境をテーマにした、ミクロ世界から出発するアソーレスのネオ・レアリズムを開発した作品。
海と捕鯨をテーマにした〈アソーレス文学〉を確立した作家のひとり、ディアス・デ・メーロ(1925-)。出身地ピコ島の捕鯨産業と移住をテーマにミクロ世界から出発するアソーレスのネオ・レアリズムを開発した。本作品は大西洋の真ん中に浮かぶポルトガル・アソーレス諸島ピコ島を舞台に、一人の男性の人生の格闘を静かに追った中編小説。
内容説明
海に取り囲まれた貧しい島から脱出して、アメリカの捕鯨船に乗り込んだ少年。世界の海を航行したアメリカ帰りの「成功者」として帰島するも、彼を待っていたのは、「島」の厳しい現実だった…。
著者等紹介
メーロ,ディアス・デ[メーロ,ディアスデ][Melo,Dias de]
1925年4月8日アソーレス諸島ピコ島生まれ。1900年初頭のファイアル島オルタ市を中心とした短編小説家たちの影響を受けつつも、海と捕鯨をテーマにしたアソーレスのネオ・リアリズムを確立した。マリオ・ソアレス・ポルトガル前大統領からエンリッケ王子勲章を受章
浜岡究[ハマオカキワム]
1965年京都府生まれ。京都外国語大学、中央大学法学部卒。京都外国語大学大学院修士課程修了。拓殖大学言語文化研究所、武蔵大学人文学部講師ほか
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感想・レビュー
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sagatak
1
大西洋ただ中の絶海のアソーレス諸島。元々ポルトガルのインド航路開拓などをきっかけに人が住み始めたところ。厳しい自然環境の中逃げ場もなく生活していた人々がいる。新大陸発見後アメリカが建国され発展するに伴い状況が変わってくる。近代化がこの島々も巻き込んでいくのだ。そんな時代の流れを諸島のひとつピコ島出身の青年の人生に重ねて物語りは進む。人間の欲がそこここにちらつき、近代化、経済の中に埋もれる多数の人々。心を持った人もいるのだが、主人公に限ってはそれが裏目に出た...とも言えない。少しもの悲しい物語だ。2011/02/07
tokis
1
アソーレス群島ピコ島に生まれた主人公の冒険成長譚。ポルトガル文化圏らしく哀愁(サウダーデ)に暮れるトーンが通底するのだが、生活の厳しさにも関わらずスタイル抜群の恋人が処女のまま十数年も主人公の帰還を待つなど、後半の展開は海難事故にでも遭った主人公の夢ではないかとすら思わせる非現実感が漂う。そのため終盤の銀行関連の騒動などが、描写の意図はよく伝わるが物語的には浮いてみえてしまう。大洋に孤立した群島に生まれたことの獏とした行き場のなさがよく描かれている一品。2010/04/12