出版社内容情報
ケルト以前のアイルランドから現在まで――。アイルランド人によって書かれた入門書。厳しい自然風土と“英国の裏庭”として特異な歴史を刻まざるを得なかったアイルランド。“妖精の国”に秘められた反逆の精神とロマンをめぐるアイルランド人の本音、立場を理解するのに最適の書。「アイルランドの歴史の大半は比較的孤立していた。古代ローマ帝国の一部になったことはなかったし、中世の時代においては、英国の王権の周辺にあって、自立していた地域だった。16世紀から18世紀にかけて、英国の植民地になった。19世紀には、英連合王国の不可欠な一部分として吸収され、20世紀には大半は独立を確保し、現在はヨーロッパ共同体の構成国の一つである。だが、アイルランド島の北東部は未だに英連合王国にとどまることを選び、忠誠心が分裂している。北アイルランド問題に対する解答の少なくとも一部を提供することを、わたしは希望する」(「はじめに」より)
内容説明
「民族についての意識は強いが、国家についての意識は弱かった」。厳しい自然風土と“英国の裏庭”として特異な歴史を刻まざるを得なかったアイルランド。“妖精の国”に秘められた反逆の精神とロマンをめぐるアイルランド人の本音、立場を理解するのに最適の入門書。
目次
ケルト以前のアイルランド
ケルト族
キリスト教
ヴァイキング
アングロ・ノルマン
中世のアイルランド
フィツジェラルド家のアイルランド
チューダー王朝期のアイルランド
九年間の戦争
アルスター地方への入植〔ほか〕
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
白玉あずき
9
訳者の思想感情が補注によってこの本の著者を乗り越えてしまうという、翻訳ならぬ共著と言うべき変わった本。でもそれも良し。「アイルランドの歴史には二つの時期しか無い。」ヴァイキングの侵攻から1916年の復活祭蜂起までは征服者英国の歴史であると書いちゃったのも、偏頗ながら訳者の「アイルランド」愛の言わせること。遅れた部族国家が中央集権国家に征服されてから、不完全ながら独立を果たすまでの、苦難と英雄の殉死に彩られた歴史を手早く読めます。「5ポンド以上の馬」のエピソードが、英国の圧政と暴虐の例として印象的でした。2014/04/27
viola
7
アイルランドのどこの観光地の店でも売っている小冊子なので、観光客相手の土産らしい本の翻訳です。アイルランド人によって書かれたアイルランド側の本は珍しいらしく、訳者は絶賛しているけど・・・・・そんなに良いとは思えず、むしろ退屈に感じました。補注が多くて、著者よりもずっと訳者の書いたところのほうが分かりやすいし、もう著者はいいから、訳者の本を読んでみようかなと思えてしまいました・・・・・。 入門書というかそういう扱いだと読んでから知ったので、仕方ないなと思いつつも物足りなさは否めませんでした。2011/01/28
p.p.
6
アイルランドという地が歩んできた得意な歴史を簡潔にまとめた一冊。原書の性質(70ページそこらの小冊子)ゆえに文体が非常にコンパクト、すなわち読みづらい。だがそこさえクリアできれば、訳者の位置づけ通り、豊富な絵画や写真の資料もあるので、入門書としてはうってつけの内容であろう。個人的な感想を言うと、イングランドという国がこの地に加えてきた悪辣な仕打ちに怒りを覚えたことと、歴史的に積み重なった恨みつらみは、決して容易には解消できないということだ。特にじゃがいも飢饉の時の英政府の態度には、思わず声が出たほどだ。2017/02/15
mabel
5
知っているようで知らなかったアイルランド。アイルランド人が自ら語る歴史と、イギリスの一部分として語られている歴史は違う。当然ながら。とっても勉強になりました!2014/08/24
hiro
3
参加している読書会で、僕がイェイツの「ケルトの薄明」を発表することになり、アイルランドの歴史、それも社会史的なものを読んでえおく必要もあるなと、図書館で一冊それらしき本を借りたのがこの上と下。しかし予想に反してこの本はアイルランドのジャーナリストが書いたアイルランドの階級闘争史だった。返そうかと思ったがとりあえず読んで見ると初期のケルト社会の共産制に近い土地共有の制度とか、きっちり定められた階級制度と法制度などとても詳細に書かれていて興味深く読んだ。17世紀のクロムウェルの残虐行為も詳細を究めていた。 2021/09/16