内容説明
女悪漢(ピカラ)と感傷家(センチメンタリズム)。ロシアの百科全書派チュルコフ、夭折の詩人スシコフから18世紀の文豪カラムジンまで―知られざる文学の鉱脈を探る初の試み。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
qbmnk
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ロシア文学の源流に当たる短い恋愛小説が5篇集められている。解題(解説)も面白い。解説にもあるが、書かれた時代と場所どちらにも馴染みのない小説を読む楽しさは、当時の社会背景や読者、彼らの反応を想像することも含まれる。ファンタジーとは違い、過去において実在した舞台に立つので、時間による価値観の変化や歴史的背景を考えるのも楽しい。後の文学への影響の考察も面白い。2017/12/03
しまりんご
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18世紀にロシアで書かれた恋愛小説集。当時の倫理観や道徳的規範に抗って生きる女性の遍歴を綴った表題作や、ゴシック・ホラー的な雰囲気のある「ボルンホルム島」、貴族に恋した村娘の末路を描く「哀れなリーザ」など。表現や構成には若干未熟さが感じられるが、教会スラブ語やラテン語ではなく、ようやくロシア語で書かれ始めた黎明期の小説という点でとても興味深く、当時の風習や考え方を知ることができて面白かった。2012/03/26