内容説明
操り返し蔓延る恐怖、支配、そして狂気。第二次世界大戦後、破滅したドイツのある町で、ナチの悪夢がふたたび甦える。死に取り憑かれたホークスのヴィジョン。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ソングライン
16
敗戦後のドイツのある町で下宿屋を営む女主人ステラ・スノーとその妹ユッタ。下宿屋にはネオ・ナチの人々と連合軍に同胞を売り今も密告を目論む者が共生しています。物語は1914年の姉妹の別れと1945年のナチス・ドイツの復活を目指す異常な殺人が語られますが、難解な比喩の連続は物語の主題から私を遠ざけて行きます。ホークスを読み続けるのは辛いかもしれません。2022/10/16
春ドーナツ
15
訳者あとがきの一部を引きたい。「同じ技法(*時間の解体や、最初見えなかったものがやがて見えてくる)を『キャッチ=22』で用いたジョーゼフ・ヘラーは、それをフォークナーからではなく、ホークスから学んだようである」・・・あっ、えっ!(『キャッチ=22』の投稿文を訂正した方が良いかな。まあ、いいか)時系列で言うとフォークナーの『響きと怒り』(1929年)が「これ系」のオリジンみたいだ。・・・と書くと『響きと怒り』を読んだ時に、また、あっ、えっ!となりそう。「操り返し蔓延る恐怖、支配、そして狂気」(Amazon)2020/10/01
Ecriture
9
「作家好みの作家 (writer's writer)」としてヘラーやピンチョンらが崇拝したアメリカ・ポストモダニズム作家ジョン・ホークスのデビュー作。ピンチョンやデリーロから見て一つ上の世代で1998年73歳で死去。奇抜で多彩な表現力と混濁した時間の流れはフォークナーを思わせるが、執筆当時ホークスはフォークナーを読んだことがなかったらしい。1914年、1945年の二つの大戦下のドイツを行き来しつつ、戦火のうちに消尽した物質と精神の荒廃を暗澹たる筆致で描く。濃霧立ち込める小さな町に4つの殺人が輪郭を表す。2012/09/21
Mark.jr
4
アメリカのポストモダン文学の先駆者として知られるJohn Hawkes。本書はその著者の代表作になります。Thomas Pynchonへ影響を与えたことでも有名ですが、自分が思い浮かべたのはSteve Erickson。時空を超え紡がれる、パラノイアックな暗黒ノベルは、今でも異彩を放っています。まあ、全然読み安くはないですが…。2025/02/02
葛井 基
3
フォークナーが始めたとされる手法を、ジョン・ホークスはフォークナーを読まないで書いた、ということはフォークナーは読まなくても大丈夫ということか? キャッチ22も、ジョン・ホークスの影響を受けて書かれたようだ。 積んでた甲斐があった。ネオナチの話だが、現在のISにもつながる。その背後にあるのは暗い生だ。それを黒い絵の向こう側ににじませた怪作であると思う。2016/06/20
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- イヌの仇討 文春文庫