内容説明
もう夢など見ない―崩壊と荒廃の風景。クラシックレースに謎の出走馬…ギャング…誘拐…通俗ミステリのウラをかくホークスの挑戦状。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
NAO
70
ライム・トゥイッグとは、小鳥を捕まえるための鳥もちをつけたライムの枝で、イギリスでは、訳も分からずもがいている姿のたとえとしてよく使われるらしい(『ハムレット』にも出てくる)。馬を持ちたいという夢を持ったバンクスが、その夢ゆめにギャングたちに翻弄される姿が「鳥もちにかかった小鳥」にたとえられているのだが、事件は細切れに描かれ、全体像がなかなか見えてこない。霧、靄、蒸気、埃に包まれ全容が見えない話は、一種の恐怖小説のようだ。2019/02/26
ソングライン
14
大戦後のイギリス、戦火を免れたアポートを経営する若い夫婦、平穏に思われた彼らの生活ですが夫は競走馬を盗む一味に加わり、成功すると馬主となり大レースに臨むことに。夫はレース前夜にも関わらず一味の女たちと快楽にふけり、妻は監禁され鞭で虐待、そして何人もの人々に訪れる突然の死。作者が描く世界は悪夢のようで、決して心地よくはないのですが次第に引き込まれていきます。ジョン・ホークスもう一作読んでみます。2022/07/20
葛井 基
3
前作より読みやすい。暴力についての小説。暴力を描いた小説ではなく。悪夢を夢ではなく現実のものとして表現する壮絶な技術。こんな書き方がしたい。2016/06/30
Ecriture
3
デビュー作『人食い』との作風の違いに驚く。「現代人の深層心理の探求と、日常性から開放された言語による心象世界の構築を目指す作風」はそれまでと変わらないものの、スリルと緊張感のあるストーリーテリングがなされている。第二次世界大戦後イギリス、ギャングに囚われたバンクス夫妻は、ロック・キャッスルなる曰くつきの競走馬の馬主として登録され、レースの開始を待つが、その間に幾つかの殺人が起きて…。迫り来る死や愛を覆い隠すほどの強烈な欲望の罠(ライムトゥイッグ)をライムの成る地アメリカから描いている。とても気に入った。2012/09/22
h
1
読み終えても何が何だかわからない笑。「人が殺されても、誰に何のために殺されたのかなんて表記する必要はなく、雰囲気で隠してしまえばいい」という主張には同意。ただ、代わりに鳥の鳴き声や廊下の匂いを延々描写するのはやめてくれ笑2010/05/03