目次
1 人種と民族(“身体”の復権を求めて―バーナード・マラマッドの『修理屋』にみる闘い;踊る女たち/撃つ男たち―トニ・モリスン『パラダイス』の戦争と平和 ほか)
2 現代社会と人間(抑圧との闘いと“小説崩壊”の関係―トマス・ピンチョンの『重力の虹』;50年代インヴェージョン・ナラティヴの敵―ロバート・A・ハインラインの『人形使い』と『宇宙の戦士』 ほか)
3 ジェンダーの闘い(教授と女子学生の権力ゲーム―デイヴィッド・マメットの『オレアナ』を読む;男性性の証明というパラドックス―ウィリアム・フォークナーの『兵士の報酬』 ほか)
4 戦争と人間(アメリカ神話の復活―ノーマン・メイラーの『裸者と死者』;奴隷制の終焉と黒人の葛藤―ウィリアム・フォークナーの『征服されざる人びと』)
5 自然との闘い、その他(“自然と人間”の調和と闘い―スタインベック『知られざる神に』というネイチャーライティング;フォークナーの血をめぐる闘い―『響きと怒り』と『死の床に横たわりて』を中心に ほか)
感想・レビュー
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KA
3
2001年刊行の本だが、ここでいう「多文化主義のポリティクス」とは、「人種・ジェンダー・社会階層の文化間の差異」として使用されている。つまり実際の1990年代の多文化主義はほぼほぼ関係なく、アメリカン・スタディーズにおいて1990年代の「多文化主義」という語がいかに強かったかの証左だろう。ただ、「アメリカ文学」という枠組みが冷戦期イデオロギーの構築物であり、冷戦の崩壊とともにそのフレームが役割を終えた、というのは簡潔にしてただしい(同時代的な)認識だと思う。これを歴史化せねばならん。 2021/05/19